昔、私が若かったころ、日本の会社や公務員の賃金体系は、年功序列制度となっており、新採者は一番低い賃金から始まるのだった。毎年、皆が同じように少しずつ上がっていき、五十代になって給料の伸びが止まってしまう。私は安すぎると思ったものだが、歳を取れば上がっていくので、それを楽しみに若い時は我慢していた。若いころは苦労は自分から買ってでもしろというような話もよく聞かされた。
昔は若者の数が多く、年寄りの数が相対的に少なかった。その数の多い若者が歳を取った時、年配者の数が多くなる。その時、果たして高い給料は貰えるだろうかという疑問が私の頭の中にあったのだった。
若い時は給料が低く、年配になっても思ったほど高くならずに終わってしまうことになるのではないかと予想したのである。どうもその通りのトレンドが実行されてきている。若者の給料が上がっている代わりに年配者の給料が少ししか上がらず、六十歳を過ぎると、同じことをやっても三割も給料がダウンするという有様である。退職金も少なくなり、モチベーションが上がらない。若者も年配になっても給料が上がる見込みがないので、将来のために蓄えておく必要が生ずるようになると思えてならない。