卒業間近の小学校の教室。
スポーツが得意で
活発なK子さんといっしょに
先生が窓枠から外してくださった大きな窓を
ふたりで支え合いながら磨いていた。
私は、K子さんのことが好きだったが
自分から話しかけたことは一度もなかった。
授業中、先生から指名されれば
答えのできる児童ではあったが。
私は、誰とも気軽なおしゃべりの
できない子どもだった。
父も母も祖父母もあれこれ
私に指示は出したけれど。
誰も私の気持ちや考えに
耳を傾けてくれる人はいなかった。
私は、快活なK子さんといっしょに
作業をすることに緊張していた。
突然K子さんがバランスを崩して
ふたりで支えていた窓が倒れそうになった。
K子さんが「ごめん」と謝った。
私は、こころの中で「いいよ」と言った。
その時、3年生の時からずっと担任だった男の先生が
「〇〇になんか謝る意味ないよ」とおっしゃった。
私は、一瞬、自分の耳を疑ったが。
卒業間近になっても
何の情愛も感じられない児童には、
意味がないとすぐに理解できた。
私は、こころの中でつぶやいた。
「先生、それを言っちゃ〜おしまいよ〜」