私のおばあちゃんは、
明治31年生まれの戌年です。
話し好きのおばあちゃんで
いつも「たばこ盆」をそばに置いて
「ききょう」という名前の刻みたばこを
指先で上手に丸めてはキセルにつめて吸っておりました。
おばあちゃんの子ども時代の話しをしながら
吸い殻を捨てるのにキセルを
灰が入った陶器の入れ物の縁で
コンコンと叩いて落とす仕草やら
その一連の美しい動作に引き込まれました。
ある時
家の中に私一人だけになりました。
小学校の高学年だったと思います。
おばあちゃんの真似をしてみたくて
マッチをすってワクワクしながら
ひと口吸い込んでみますと
目がくるくると廻り出しました。
タバコの「威力」をはじめて知った瞬間です。
誰にも話したことのない
はじめての冒険のお話しです。
そして
後にも先にも
唯一の喫煙経験です。
毎年
桔梗の花が咲くと
おばあちゃんのことを思い出します。
