須磨観光ハウス~花月と猫の物語

1937年(昭和12年)に神戸市迎賓館として誕生した須磨観光ハウス「花月」と猫ちゃんたちを応援するブログです。

花月のお料理(32)~鮑の柔らか煮と海老芋饅頭・中華風陶磁器の謎

2020-09-23 22:10:44 | 花月のお料理
鮑は「ステーキ」だ!と以前に書きましたが、こうまで風味や磯の香りを残したまま柔らかく煮た鮑が口に入ると、もう降参!!

海老芋は京芋と呼ばれ、前に紹介した大和芋ともまた違う風味があります。
大和芋は山芋系、海老芋(京芋)は里芋系です。読んで字のごとくとは、このことです。

海老芋といえばまず浮かぶのは、京都の「いもぼう」ですよね。
一度だけ行ったことがありますが、海老芋と棒鱈を煮たお料理はシンプルで海老芋の美味しさに驚きました。
今回はその海老芋を饅頭にしていただきました。海老芋の食感は里芋よりシャッキとしています。色も白いまま、あまり変色しないようです。
その海老芋饅頭、実は中にお楽しみの「餡」が入っていました。料理の説明になかったので「あれ?何?」と思っていたら、中から鮑の肝の煮付けが出てきてビックリ。



ここの仲居さんはとてもチャーミングな方で、毎回お会いするのが楽しみなのですが、「肝料理が嫌いな人も多いので内緒にしてました、どうでしたか?」と茶目っ気たっぷりに教えてくださいました。
肝の煮付けの濃いお味が海老芋を引き立てるのは「いもぼう」の棒鱈効果と同じです。また食材を無駄にしない料理長のお人柄にも触れることができました。

花月の食器には、伊万里焼など和風の食器はもとより、中国の水墨画風のものも多いので、マネちゃんに理由を尋ねてみました。
「私見ですが・・・」という前置きで「昭和初期の日本では、輸出用の良質な食器をたくさん制作販売していた。当時の海外向けの食器の流行は中国風の風流柄だったのでは・・・」ということ。
そういえば、ここの食器は中国風ではありますが韓国風でもあります。「青磁」も多いように思います。



青磁といえば古代中国発生ですが、お隣の韓国を問わず日本でも、またタイやベトナムなど、アジア全域の風流人に愛された焼き物です。
タイでは宋胡禄(すんころく)焼といって、茶器として日本にも輸入されたようです。
 韓国旅行で高麗青磁のぐい飲みを手に入れましたが、韓国では20世紀に入り技法が復活しました。青緑の発色がとても美しいです。

そういえば、映画「利休にたずねよ」で描かれた美学の重要なシンボルである「香合」、朝鮮から攫われてきた王朝貴族末裔の娘が持っていた「香合」も
「青磁」だったと記憶しています。

古来から文化的・芸術的にはアジア近隣諸国は相互に関わり、「良いものは良い」と受け入れて合っていたのかもしれません。
「質」は思想も国境をも越える。世界の「和食」人気の答えもそのあたりにあるのでしょう。質の高い和食を口にする至福はまさに、「文化を丸ごと食す」といえるのではないでしょうか。



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花月のお料理(31)~季節の天ぷら盛り合わせ

2020-09-23 22:00:48 | 花月のお料理
我が家では小さいときから食べ物の好き嫌いは許されませんでしたが、実は天ぷらがあまり好きではありません(もちろん食べますが)。

関西で天ぷらといえば「薩摩揚げ」や「揚げかまぼこ」というものを指すこともあり、「あの料理とこの料理が、なぜ同じ名前で呼ばれるのだろうか?」とはなはだ不思議でしたが、誰に聞いても答えはなく、双方ともに「天ぷら」と呼ばれていました。
そして、私の好きな天ぷらは江戸風でないほうでした。区別のため今では関西の天ぷらは「薩摩揚げ」と呼ばれることが多くなり、江戸風のものが「天ぷら」と呼ばれるようになりました。

蕎麦、寿司、天ぷらは「江戸の三味」といわれる江戸時代のファストフードですね。各地から江戸に伝わった料理が形を変え、極端に男性過多の人口比率だった江戸の町のファストフードとして定着したようです。

呼称の混同は蕎麦とうどんでもあって、関西には「キツネ蕎麦」と「タヌキうどん」はありません。
しばしば話題になりますが、関西では「キツネ」と言ったら油揚げの入った「うどん」、「タヌキ」と言ったら油揚げの入った「蕎麦」です。キツネとタヌキは同格です。
ちなみに天かす(揚げ玉)入りのものは「天かす蕎麦」「天かすうどん」と呼ばれますね。

以前関東の友人から「四国に『タヌキうどん』がない理由はタヌキの大親分「金長狸」(ジブリ:「平成狸合戦ぽんぽこ」のモデル)に関わることか?」と聞かれたことがありますが、道路や橋のない時代は、船ルートでの淡路島~四国が大阪と近かったので、大阪から伝わった名称だと思います。おっと、脱線、脱線・・・。

天ぷらという料理法の良さは素材の味が楽しめることだと思います。
季節に応じて鱧、松茸をはじめ旬の野菜が素材として味わえます。春には花月で「桜エビのかき揚げ茶漬け」をいただいたこともあります。そして以前紹介した「白扇揚げ」の美味しさには大いに感動しました。



しかし、ま、何故だか分かりませんが、天ぷらがあまり好きではありません。
油のないところで素材の味を楽しみたいのかもしれません。しかし、トリの唐揚げは好きですので、油のついた天ぷら衣が苦手なんでしょうね。味が単調になる気がするのかも。天ぷらうどんは好きですよ。衣に出し汁をいっぱい沁み込ませると美味しくいただけます。

花月の天ぷらは素晴らしいので、皆さのためにご紹介をさせていただきま~す。天ぷらファンの皆さま、ごめんなさいね~。



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花月のお料理(30)~鯛のおぼろ巻

2020-09-23 12:42:35 | 花月のお料理
八寸で注目の一品ですのでご紹介します。
まず口の中に「おぼろ昆布」自体のうま味が広がり、更におぼろ昆布と白身の鯛のマッチングがなんとも美味い!の一言につきます!!言えない!!!



最近は塩分のことを気にして味噌汁を飲まなくなったとか、味噌は発酵食品で人気復活とか、味噌汁はよく話題に上がりますね。
私の子供の頃は、味噌汁がなければ「とろろ汁」というのを作って飲んだものです。
とろろ昆布を汁椀に入れ、醤油をかけ、お湯を注ぐ・・・それだけですが、学校帰りの土曜日の昼食などに味噌汁の代用品として飲みました。
朝はご飯と味噌汁でしたので、朝の味噌汁にもよく入れました。

今ではあまり昆布を食べなくなったんでしょうね、昆布は出汁だけでなく、おやつとしてもよく食べていました。
スナック菓子も少なく、小魚や昆布がおやつになる時代でした。
「都こんぶ」だけでなく、普通の出汁昆布を切って咬んでいました。
思えばインスタントカップ麺もなかったので、「とろろ汁」はお手軽インスタント料理でもありました。
貧しいようですが、見栄えとは別に食材のうま味をインスタントにしたり、おやつにしたりする贅沢な時代だったのかもしれませんね。

私の中で「おぼろ昆布」は常に「とろろ昆布」より上位に位置していました。
おぼろ昆布は高価で美味しいので「インスタント的お醤油かけ汁」や毎日のおやつには使えません。昆布専門店で売っているものでした。

今度、おぼろ昆布で「醤油掛けおぼろ汁」を食べる贅沢をしてみましょう。
その時にはもちろん、お醤油もいいものを買います。
昆布のうま味だけを楽しむ・・・豊かな自然食材が枯渇していく未来では、最も贅沢なことになるかもしれません。

「昆布村 KONBUMURA」HPより



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花月のお料理(29)~柿豆腐・黄味噌酢かけ

2020-09-23 12:17:35 | 花月のお料理
9月22日、朝晩には秋を感じられます。

一品目の料理は柿豆腐です。柿豆腐は柿の果汁が入っているのでしょうか、色味もチャーミングな薄いオレンジ、昔流の柿色です。
黄味噌酢を軽くかけたものをいただきました。一口目はさっぱりしていました。二口目には柿の甘さがほんのりしてきました。黄味噌酢でちょっと味がしまっていて、甘味と酸味が絡み合い、何とも言えない味わいと舌触りです。



遠足の「あるある話」を思いだしました。遠足では外でお弁当とおやつを食べるのが至福の時間でした。遠足に持っていくお菓子代は学校によって決まっていましたね。

そこで「あるある話」。限られたお菓子代をいかに有効に使って甘いものを持って行けるか、子供にとっては真剣勝負です。
「バナナはおかずですか?おやつですか?」

柿豆腐は甘すぎないのに「お料理ですか?デザートですか?」と言いたくなる、二倍楽しいお料理でした!
紅葉をあしらった器もステキでしたよ。



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花月のお料理(28)~折詰弁当と仔猫の風景

2020-09-23 09:56:31 | 花月のお料理
4連休最終日の9月22日、愛猫の百か日法要、愛魚の四十九日法要の後、「花月」へ行きました。
百か日とは「泣くのを止めて前へ進むことを霊前に誓う日」、四十九日とは「亡くなったものが現生での形を49日目に終え、次の命へ向かう日」だそうで、新たな出発の一日なのでした。
余談ですが、最近ペットの長寿化もあってか、家族の一員である動物の火葬も珍しくはないようで、法要の後、お坊様が「ネットで調べたら金魚の火葬も結構ありました」とおっしゃいました。「一緒にいてくれる命」を互いに大事に思って生きていきたいですね。

花月でも次の命、新しい命が生まれていました。
涼しくなってきたせいか、赤ちゃんが生まれています。新米のお母さん達の中には、いつまでも子供気分が抜けなくて子育てを放棄しようとしたり、サボったりする母猫もいるようですが、マネちゃんと若女将が、母子の時間と場所を管理して、仔猫がお母さんのお乳を吸えるように、お母さんもストレスなく時々野外でくつろげるように気をつけていらっしゃいます。



ところで、私の母は来年「米寿」を迎えます。食欲は旺盛ですが足が悪いので疲れやすいのです。
ということで、母にはお寺の法要に参列した後、大事をとって先に帰ってもらいました。それだけでは可哀想なので会席の一部を折詰弁当にしていただきました。3,240円のお弁当です。見た目もきれいな二段重ねです。



母は自らを「欲っちょ」と称していますが、食べるところを見ていると「鮑の柔らか煮」を最後に食べました。
私はいつも美味しそうなものから先に食べます。TVでも「最初に食べる派 vs 最後に食べる派」は話題に上がっていて、良し悪しは別として、最初に食べる人より後から食べる人のほうが社会的であるように報じられていますがどうでしょうね。
何を人に合わせるのを良しとするかにもよるのだと思います。そういうところは、母とは正反対ですね、そういえば私の方が根っから「欲っちょ」かも。

いずれにせよ、生き物にとって最後まで残る喜びは、「食べること」だと思います。
観ること、聞くこと、話すこと、触れること、五感を使う喜びは命ある限り残りますが、中でも食べることは大きな喜びです。
「食」は「命の喜び」の根源です。仔猫達も私達も、乳を吸うところから始まり、命を終えるまでに多様な味覚を覚えて楽しみます。大いに楽しみたいものです。

花月のお料理、そのお味はお弁当にしても素晴らしいものですよ。



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