はな to つき

花鳥風月

世界旅行の世界(36)

2019-09-22 21:24:07 | 【世界旅行の世界】
「ねえ、先生?」
「ん?なあに?」
「ベネチアの地下はどうなっているの?」
「ベネチアの地下?」
「そう、地下。だって、どうやってもこの街は、水に浮いているように思えるの。地面の上につくられていないような気がするの」
「そういうことか。たしかに、水の上の街だよね」
「やっぱり、そうなの?」
「そうだね。厳密にいうと、潟の上の街だね」
「かた?」
「そう、干潟の『潟』」
「その『潟』か」
「ラグーナというのだけれど、その『潟』に何千、何万、いやそれでは足りないくらいの杭を打って、その上に建物を建てているんだよ」
「え?木の杭?」
「そう、木の杭」
「ベネチアの地下には、木がびっしり埋まっているということ?」
「そういうことになるね。潟に杭が埋まっていて、その上に海水があって、その上に建物があるということだね」
「その木は腐らないの?海水に浸かっているのに大丈夫なの?」
「不思議だよね。でも、木というのは、水に浸かっていても、空気に触れていなければ腐らないらしいんだ」
「へえ、そうなんだ」
「もちろん、絶対に腐らないということはないから、長い間もつ、というのが正解なのだけれどね。だから、古くなった杭を定期的に打ち替えて、この街はずっと存在しているんだよ」
「どうやって、打ち替えるの?そんなことができるの?」
「本当にすごいよね。高い壁を潟に打ち込んで水を堰き止めてから、その作業をするらしいよ?」
「すごい。見てみたい」
「そうだね、見てみたいね。運が良ければ、今もこの街のどこかで作業をしているかもしれないね」
「そうだといいな」
「不思議な街の、不思議な景色にたくさん出会えるといいね」
「うん。ひとつでも多くの不思議な景色を見てみたい」
「きっと、見られると思うよ」
「私も、そう思う。これまでも、先生にたくさんの不思議な景色を見せてもらって来たけれど、ここでもまたそれを感じられると思う」
「そうだね」
「ねえ、先生?」
「なあに?」
「この旅は、たくさんの色を感じさせてくれる旅ね」
「色、か。そうかもしれないね。気づけばるみちゃんは、その街をたくさんの色で表現していたよね?」
「そうかもしれない」
「そうすると、ベネチアは・・・」
「赤。透明なのに、深い赤」
「ああ、わたしも、そう感じたよ」

 赤と水の旅情。
 女の子と先生は、出会いの街、ベネチアに漂っています。
 今回の旅の色は、ふたりにどんな合図をつくってくれるのでしょう。

(つづく)

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