言葉喫茶【Only Once】

旅の途中で休憩中。

『4711―フォー・セヴン・イレヴン―』

2020-08-21 21:13:08 | 言葉




今も
手首から首すじまで
その匂いが染み付いている

そんな気がしている

フォー・セヴン・イレヴンの
ひどく懐かしい香りが
こころに絡まって
とれない

【4711】

ラベルに印字されている
数字の読み方も知らなかった
あの頃から ずいぶん遠くまできた

甘くほろ苦い
シトラスの匂いに
顔をうずめあった
寒い さむい
十二月の午後は
すっかり色あせた

紫煙が絡まり
ほろ苦さを増した
フォー・セヴン・イレヴン
それは
真冬のコートにも
隠しきれなかった
幸せであり
寂しさであった


あの小瓶は
今でも机の上に
腰かけている

眠れぬ日には
こっそりと
シトラスをまとうのだ

あなたのいない
真夜中の森深くまで
ちゃんと たどり着けるように

あなたがいない
今 この世界の中を
迷わずに 歩いてゆけるように
















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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (saruru1791)
2020-08-22 13:09:27
ほのかな香りは 妖艶なものなのかなーー
冬の寒さの中でも―ー漂うのはーーー想像できませんがーー

暑いと言いながら 夜は 虫の声も―ーー聴かれますーー
午後は☔予報もーーつかの間の休みも すぐに終わりそうです
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Unknown (harapekoyuyu0718)
2020-08-22 16:19:39
@saruru1791 saruruさんへ。

こんにちは。
この時期の、季節の合間の雨が好きなわたしです。

北国、雪国育ちだからかもしれないのですが、
張りつめた寒さの中に漂う香りは、どこか糸のようだなと感じます。
途切れそうだけど確かにそこにあって、
風が吹けば持ち主からどこかへ揺らめくような…。

作中に登場する4711(正しくはポーチュガルのはず。おそらくかいだ事のある香りかと思います)は、結構強めの香りですから、
夏場よりも冬のような、雪の匂いしかしない時期に纏いたい香りです。

妖艶というよりも、爽やかな香りに入ると思いますが、
言われてみると(わたしの中では)妖艶、という部類になるかもしれません。

記憶は褪せても匂いは褪せないものですね。
昨夜は「香りもの」で二篇、書かせていただきました。
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