水無月、風は木々を揺らし、空は晴れ、どこかでカッコウ鳥が聞こえる麗しい季節になった。
さて、本日は朝から歯医者の日である。
歯のことで煩わされると精神衛生上よろしくないため、この20年ばかり、定期的に歯科へ通ってメンテナンスを怠らない。
今日は、「だいぶ時間が経ってるのでレントゲンを撮りましょう」と言われ、パノラマ写真のように歯列が一目で見渡せるX線写真を撮った。
先生が新旧二枚を見比べて歯や歯槽骨の状態を確認しているところで、つい見とれて(写真にですよ、先生にじゃない。)、思わず正直な感想として、「これさえあったら私も、身元不明で見つかっても大丈夫ですねぇ。」と口にしてしまった。
すると先生、「エーッ!やめてくださいよ。」とまじまじとこちらの顔を見る。
(アレ?なんかまずい事言っちゃったかな?)
思わぬ反応に慌てて付け加える。
「いや、わざわざそうなるつもりは無いんで…。い、いや、こないだ、ちょっと山で迷って、一瞬先生のところを思い出したんで…。」
「山は危ないですよ~。ホント。」
歯科の先生は、しみじみとおっしゃるのであった。