マルクス剰余価値論批判序説 その6
4、ゲマインシャフト
一体性としてのゲマインシャフトを解体して、個別性としてのゲゼルシャフトが発生した。しかし、ゲゼルシャフトの個別性は、単なる個別性ではなく、個別化された個々体は直接に連関しておらず、物象を媒介として連関している。ゲゼルシャフトもゲマインシャフトと同様に、人間の連関の一形式ではあるが、全く異なった形式である。ところがマルクスは、時折この区別を抽象してしまうのである。
ゲゼルシャフトは、原生的なゲマインシャフトの解体であるとされる。(12)
以前にマルクスは、ゲマインシャフトはもの言わぬ一般性であるとして、それを否定した。しかし、ここでは、マルクスが否定したゲマインシャフトは原生的なゲマインシャフトであり、ゲマインシャフトそのものを否定するのではないという姿勢が見られる。
フォイエルバッハのゲマインシャフトをゲゼルシャフトの概念によって否定した(『経・哲草稿』)マルクスは、人間の本質が共同存在・共同制度(Gemeinwesen) であることをも否定して、人間の本質はゲゼルシャフト的な個々人の連関・交通にあると見ていた(「フォイエルバッハ・テーゼ」)。
ところが『経済学批判要綱』では、ゲマインシャフトやゲマインヴェーゼンが、ゲゼルシャフトと並んで復活している。
マルクスのこのような変化は、貨幣の研究においてなされたものである。
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