マルクス剰余価値論批判序説 その8
6、階級の抽象
マルクスは社会を、個人と個人との連関の様態として捉えた。それは、没個別性としてのゲマインシャフトからの、個人的人間の発生であった。さらにマルクスは、社会における個人が、階級に規定されて、階級的諸個人としてのみ存在していることを把握した(『哲学の貧困』)。
ところが『経済学批判要綱』以降のマルクスは、諸個人の階級的規定を、曖昧にするのである。それは、マルクスの階級規定そのものが、生産(労働)的規定であると共に政治的規定でもあるというところにある。マルクスは階級を、実在的土台において規定すると同時に、上部構造における行動(政治闘争)においても規定しようとするのである。だが、上部構造(社会の上部)においては、資本家も労働者も共に人間であり、対等で同等な人格である。
階級的観点が揺らぐと、社会は、階級に規定された諸個人の連関ではなく、単なる諸個人の連関とみなされる。
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