平方録

今度は1億総劣化社会 !?

昔馴染みの同業者で、今は北関東のテレビ局でニュースキャスターをしているMから強引に承諾させられてテレビに出るハメになってしまったことは以前書いた。
世界遺産の富岡製糸場と横浜との結びつきに焦点を当てた特集で、生糸貿易に絡む横浜の史跡をあちこち案内したのだが、29日に放送されたものがDVDに録画されて送られてきた。

このニュース番組の1000回記念だったそうで、光栄と言えば光栄だし、目出たいといえば目出たいのだが、やっぱり“電気紙芝居”は性に合わない。
第一、出演を承諾させられてから、たいがいの質問に答えられるよう、横浜を舞台にした生糸貿易にまつわるあれやこれやを、歴史をひも解きつつ、猛勉強の真似ごとまでして備えたのだが、5時間も拘束されてあちこち案内した挙句、肝心のしゃべりはほんの数十秒で、しかも番組の終わりに締めで言わされた発言も部分使用だけ。ちゃっかりしているよ。
これじゃあフルコースの料理を食べたにもかかわらず、単品料理を味わったのと同じで、それなら最初から単品をじっくり味わえば良かったというべきなんである。

そういう、ひとを小馬鹿にしたような所がテレビにはある。
それが番組なんだと勝手に思い込んでいる所がテレビにはある。
見る側の立場に立たない、作り手だけの都合でモノを作る一種の傲慢さがちらつく。
それにほとんど気づいていない思い上がりも鼻につく。
ちょっと言い過ぎかなぁ。

ま、この特性を生かして世論操作というか、世論誘導をしようとすれば、うまくいけば内閣を簡単に吹っ飛ばすようなことも十分可能だ。
かつて自民党が下野するきっかけとなったのも首相のテレビ出演で、番組でキャスターに迫られて解散を約束させられてしまったことが理由だったように記憶しているが、違ったっけ。
視聴者が見れば誰でも悪い印象を持つシーンを繰り返し繰り返し放送すれば、たちまちのうちに悪印象が沁み込んでしまうのと同様、テレビは時として恐ろしい力を発揮する。

それゆえ、何度も煮え湯を飲まされてきたんだろうけど、飲まされても仕方ない振舞いをしてきた自分の不始末は棚に上げておいて、テレビ局に圧力をかけて自分たちだけに都合の良い放送をさせようと、躍起になってあれやこれや仕掛けているのが現政権である。
露骨と言えばあまりに露骨。恥もなければツツシミもないそのなりふり構わぬ姿は呆れるばかりだが、放送法という法律に縛られているもののメディアの端くれのテレビ局が、こういう恫喝に恭順の意を表そうとしているところが情けない。
そういうところもテレビ嫌いにさせる要因の一つである。

八百屋で魚を買おうったって無理なように、テレビ局に権力監視のジャーナリズム魂を期待する方が、土台無理と言えば無理なようである。
無難に無難に、易き方へ易き方へと流されてゆくばかりである。
それでも一昔前までは硬骨のキャスターもいて、それなりの圧力はあったにせよ、そこを上手にかいくぐって主張すべきは主張し、会社もこれを守ったものだったが、権力側もジャーナリズムを標榜する側も、どこか劣化が進んでしまったようで、緊張感を持続できないようになってしまった。
持続できない緊張感ゆえの、自分たちの法(ノリ)を忘れたかのような姿が悲しい。

権力が露骨にメディアに介入する社会というのは独裁政権の専売特許じゃないの。
テレビ局を腐してしまったが、何もテレビ局一人が批判の対象でもない。無冠の帝王などとふんぞり返ってきた新聞にしたって、法律に縛られているわけでもないのに、どこか権力の顔色をうかがっているかのような所がちらつくのは噴飯ものなのである。

数日前に「1億総掟破り社会」と書いたばかりだが、キャッチフレーズには事欠かない。
ニッポンは今や「1億総劣化社会」という底なし沼に沈み込んでいっているんである。



わが家の東側の余り日当たりのよくないところに咲いていたスイセン。和スイセンによく似ているが中心部分の黄色が薄く、香りもそれなりだが、たくましさは際立つ。
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