ありがたい話で、スダチが届くと普段は安ワインの赤を愛飲している身なのだが、この時ばかりは焼酎のロックにスダチを絞り入れて飲む。
こうすると実に不思議なのだが、焼酎そのものがまろやかになり、しかも何杯飲んでも悪酔いしないという信じられない効用をもたらす。
それゆえに飲み過ぎに注意しなければならないのだが、一升瓶は瞬く間に減っていくのである。
そして何より、スダチを絞り入れたグラスからはさわやかな秋の香りが立ち上ってきて、夕餉の食卓にいつもと変わらないものが並んだとしても、数倍美味しくなること請け合いなのだ。
2、3日前、温度が下がり冷たい雨にも降りこめられて寒冷アレルギーで鼻がぐずぐずしていた時には焼酎をお湯割りにして、そこにスダチを絞り入れたのだが、身体が暖まると同時に鼻腔に届くスダチの香りがアレルギーを抑えるのだろう、ピタリと収まってくれるから不思議なのもである。
鳴門金時に至っては鮮やかな黄色が特徴的で〝九里四里美味い十三里半〟どころか、十五里も二十里もはるかに美味しい。
出来ることならアルミホイルにくるんで焚火の火に放り込み、焼き芋にして食べたいのだが、情けないことに都会で焚火でもしようものなら白い目で見られてしまう。110番とか119番されかねない。
我が家ではしばらくするとカツラやヤマボウシ、ナンキンハゼの落ち葉が大量に出るから焚火にはおあつらえ向きなのだが、切ないことである。
こんな日本に誰がしたのさ!
怒りを鎮めるためにさらにスダチ入り焼酎の酒量が増えてしまうではないか。
気分を変えたい。変えなくては。
そこで連想ゲーム。
スダチ……焼酎……さわやか……秋……魚……秋と魚なら…秋刀魚!
そう、サンマなのだ。サンマ苦いかしょっぱいか…のサンマ。
そう思い浮かべていると玄関のチャイムがピンポーンと鳴る。
急いで出てみるとそこにはトロ箱を抱えた宅配便のお兄ちゃんがニコニコ顔で立っている。
おぉ、待ってたところよ秋刀魚ちゃん…ってなもんで、今度は岩手の友人からの心遣いが届いたのだ。
あの2人、決して示し合わせているという訳ではないのだろうが、毎年計ったように数日違いで「お見えいただいている賓客」なのである。
トロ箱を開けると体長30センチを超える丸々と太って脂の乗った特大サンマが十数本も!
あんな立派なサンマ、そんじょそこらのスーパーじゃついぞ見かけない。さすがは大船渡港直送便だけのことはある。
サンマはまず塩焼きだね、やっぱり。わが家では初サンマなのだからなおさらだ。
そこに大根おろしを添えて、熱々のサンマにスダチを絞るとジュッという音と共にあのさわやかな香りが立って、もう食欲の秋のまぎれもない代表選手である。
当然そのわきにはスダチ入りの焼酎が添えられる。
網元オススメの食べ方ってパンフレットもトロ箱に入っていて、油を敷かずにフライパンを熱したところに三枚におろした秋刀魚の皮の部分を下にして10秒から15秒焼き、すぐに冷水とって熱を取り、水気をとって皿にきれいに並べたところにネギや大場、ミョウガ、ショウガのみじん切りを大量に乗せ、冷凍庫に入れて10分ほど落ち着かせた後食べるのだが、これが絶品で1人で軽く2~3本は食べてしまうくらいおいしい。
これにもスダチ入り焼酎がよく合い、わが世の春じゃなくて、食欲の秋を堪能できるのという寸法なのである。
秋は好きな季節ではないが、実りの秋とか、味覚の秋、食欲の秋というのは許せる。
これも友人がいてこその贅沢なのだが、そういうことなら全国各地に親しい友人を作っておけばよかったなぁ…
まずは何と言っても塩焼きですナ
トロ箱にドッサリ
どれも30cm超の特大ばかり
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ひろ
heihoroku
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