それから10日経った今では移植に失敗して枯れてしまったりダメになる苗は皆無で、おそらくこのまま順調に育ってくれることだろうとホッと胸をなでおろしている。
あとはたっぷり陽を浴びてもらって、10日に一遍か2週間に1度くらい薄い液肥を与えれば早いものは12月の半ば辺りから花を咲かせ始めるだろう。
まずはめでたしめでたしの順調な生育ぶりと言ってよい。
だがしかし、今回こうして改めて育苗について書いているのは心臓が止まりかけた瞬間があったためである。
異変を感じたのは移植の翌朝のことだった。
苗の具合を見回りに行ってしげしげと様子を眺めたところ、5ケース116本移植出来た苗の内1ケース半、数にして約40本近くの葉の先が白っぽく変色しているのに気付いたのだ。
瞬間的に何か細菌にでも感染してしまったのかと疑った。
というのも、この症状が出た株は皆同一種類で、一番最初に移植に手を染めた品種グループだったのだ。
しかも危惧したのは、移植に使用したポットは去年使ったもので、プランターや庭への定植が済んだ後は特別に消毒するわけでもなくただ重ねておいた古ポットなのである。
かつて同じように使い回した古ポットで細菌感染して苗を大量にダメにしてしまった苦い経験があるのだ。
慌てて殺菌消毒作用のある農薬を取り出してきて水で薄めて噴霧器に入れ、たっぷり散布してヤレヤレとほっと一息ついたのもつかの間、さらに別の懸念が鎌首をもたげる。
「ひょっとするとこっちが本命か? 」と直感するくらいのミスに気づいたのだ。
苗をポリポットに移し替える作業が済むと、乾いた用土にたっぷり給水させる必要がある。
ジョーロで上から水を撒くのでは移植したばかりの苗が倒れて痛んでしまうし、それをいちいち助け起こすのも面倒な作業になるので、ボクは水を張った容器にポットをつけてポットの底から給水させる方法をとっている。
こうすると苗は傷まないし、水の中にあらかじめ液体肥料を加えておけば肥料やりの手間も省け、用土にじわじわとたっぷり水と肥料がしみこむから一石数鳥なのだ。移植後4、5日は水やりが不要なくらいである。
これを底面給水法というのだが、あろうことかその吸わせる水に加えた液体肥料を多めに入れ過ぎたようなのだ。欲張ったのである。
あまりに〝濃い飲み物〟を与えられ、そのために生理障害を起こし、葉焼けを起こしてしまったのではないかという危惧である。
多目に入れれば早く育つ! そんなことがあるわけもなく、書かれている用法にきちんと沿ってやらなければ、むしろ肥料は植物にとって「毒」そのものなのだということを忘れていた。
さてどうしよう。どうしたら助けることが出来るのか…
もう一度水につけて底面給水させ、それで液体肥料を薄められないだろうか?
溺れる者は藁をもつかむ。
祈るような気持ちとはこのことで、実際ぶつぶつ「助かりますように」とか「頑張れぇ~」とかつぶやきながら作業を進めたのだ。
どれが効果があったのか、ひょっとするとどれも無駄な作業で、植物が持つ自然治癒力とか、原因はほかにあるのかもしれない。
しかし、また翌日点検したところ症状の進行は見られず、むしろ葉焼け部分が収まっているようにも見えたのである。
こうして虎口は脱し、今ではすっかり回復してきている。
あんな生まれたての小さな苗なのに、植物というものの案外のしぶとさと強さを垣間見たような気分なのである。
まだ葉焼けの跡が残っていたり、生育が遅れているものもあるが、とりあえず虎口は脱したのだ
左側のケースの健全な苗と比べれば右側のケースの苗の生育遅れは歴然としているが、これから追いついていくだろう
こちらは健康優良児
みんな頑張れ!
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ひろ
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高麗の犬
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MOMO
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