地虫出て土につまづきおりにけり 上野章子
ボクももう何年か前に似たような発想の句を作ったが、これほどまでユーモアをかもせなかったし、とぼけた味わいも出せず、そもそも句全体に切れ味も無くて発想倒れに終わってしまった。
後年、この句に出会った時は思わず膝を打って「やられたぁ~! 作りたかったのはこういう句だったのに…」と脱帽した句である。
それにしても…
寝ぼけまなこではい出てくるヤツ、既に目を覚ましていてかっこよく颯爽と出てきたつもりのヤツ、おっかなびっくり辺りに気ばかり取られて足元がおぼつかなくなるヤツ…
はい出て来たばかりの様々な虫たちが様々な理由でけっ躓く光景は実に愉快というか、微笑ましいものがある。
奴らはけっ躓こうが何しようがそんなことはお構いなく前進を続けるのだ。
何やら人生訓みたいじゃないですか。
若者諸君、1度や2度の失敗でくよくよするんじゃないぞ♪…なんちゃって。
作者は高浜虚子の六女だそうだから、さすがは血の濃さというべきだろう。
それにしても子ども心にあふれた目線から生まれたような句でもあり、良寛さんなんかもこういう句を詠みそうな気がする。
畑違いだが、画家の熊谷守一もきっとはい出てくる虫たちがけっ躓く光景を自宅の庭で何度も目撃していることだろう。
今日3月5日は冬の間中土の中で眠っていた虫たちが這い出して来る「啓蟄」の候だそうだ。
最高気温は18℃まで上がるらしい。
いいぞいいぞ わくわくしてくる♪
葛原ヶ岡のカワヅザクラ