「曇り空の方がよく撮れるんです」と1眼レフを手に自分が育てたバラを撮りまくっていた河合伸志スーパーバイザーの話では見ごろは「今週から来週にかけて」だそうだ。
ボクが見たところ、大アーチのつるバラがまだ盛りの二歩くらい手前で、目につくのはまだ葉っぱの方が多い。
でも蕾は膨らんでいたから、確かに好天が続けば今週末辺りからむせ返るようなバラのトンネルが出現するはずである。
ただ、ボクが選定を手掛けた「ローラ・ダヴォー」と「ガーデニア」は生え際のちょっと上、人の腰の高さ暗いからよく花がついて、アーチのバラの中では一足早く旺盛な咲きっぷりを見せてくれていた。
正直言って、こいつのせん定には大いに手こずったのである。
成長がいいものだから、シュートが長く伸び、しかも本数がやたらと多かったのだ。双方ともに育ちが良いものだから、絡み合い方も尋常ではなかったんである。
つるバラのせん定作業は、まず、絡み合ったシュートを1本1本ばらばらにほどき、その上で葉をこそぎ落とした後、全体を俯瞰して古い枝は付け根からちょん切り、新しく伸びたシュートのうち育ち方の悪いものもちょん切ったうえで、どのシュートを使うかを決め、元気の良いものでも余分なシュートはためらわずちょん切るのである。
江戸時代、佐賀の鍋島藩に伝わった「葉隠」という書物に「武士道とは死ぬことと見つけたり」と書かれていることはあまりにも有名だが、つるバラのせん定に置き換えるなら「せん定とはちょん切ることと見つけたり」なのである。
切って切って切りまくる、ちょん切ってちょん切ってちょん切りまくるのが要諦なのだが、素人はこれができない。逡巡してしまうのである。
ボクは絡まったツルをほどくのに手こずったのだ。何せ根気がいる作業なのだ。
しかも、相手にはとげがあり、作業は身長より高い不安定な脚立の上に立って行うのだ。
高所作業の安全を考え、今回からヘルメットと命綱を身に付けての作業を義務付けることにしたのだが、これがかえって慎重な動きを求める結果となって、動きが少し鈍った気がしたものである。
心理的なブレーキになっていたのかもしれない。
ともあれ、これまでは5、6時間作業すれば1本のアーチの両側から伸びている株のせん定は終了するのだが、何と倍の2日間もかかってしまったのである。
情けないけれど、医者に体はあまり冷やさない方がいいですよと注意されていたこともあって、厚着して寒風下の作業に臨んだことも影響していたかもしれない。
妻からは「いくら期待されて頼まれたからと言って、怪我でもしたらスタッフの皆さんが気にしてしまいますからね。年寄りの冷や水では済まなくなりますよ」と半ば脅される始末だったのである。
そんなこんなで、小学生の孫娘が冬休みに入って遊びに来たこともあって、作業は3日しか手伝えなかったのだ。
でも、こうして思いのほかよく咲いてくれた姿を見ると、アーチの下で「わぁー、きれい」と歓声を上げる人たちに「ねぇねぇ、これを上手にせん定した人ってどんな人なんでしょうねぇ?」と話しかけたくなる気分である。
苦労のしがいはあったのである。
ここの良さは単にバラを眺めるだけではなく、バラ以外の植物とバラが絶妙なバランスをもって咲き競っているから、あたかも大自然の中に溶け込んで咲くバラを見るように、見た目が自然だということも一つの魅力なのである。
河合スーパーバイザーによると「今年は寒暖の差が大きくて、例年より1週間ほど開花が遅れています」とも言っていた。
おそらく週末辺りは混みあうことだろう。
以下はガーデンの点描
1番手前がボクが手掛けたアーチ
手掛けたアーチ部分を拡大すると、アーチ頂上付近で「ローラ・ダヴォォー」(左側ピンク)と「ガーデニア」が重なって咲き始めているのがよく分かる。今週末ころから見ごろになりそうだ
[追記] 昨日のブログに載せた花(下)の名は「ユキノシタ」で、わが家の裏にもあるそうだ。知らなかった。灯台下暗しってやつである。
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