お墓参りに行きたいと山の神が言う。
実家のお墓は都下小金井市の多磨霊園にある。
このご時世、電車を乗り継いでいくくらいなら家から直接マイカーで乗り付ける方が他人との接触がない分、気が楽である。
それと緊急事態宣言が出された後では何となく外出はしずらくなる。
ましてや墓参りなんてのは不要不急とは言いかねる。
なら今のうちに出かけておいた方が…
出発に当たってナビでルートを確かめると、なんと圏央道で八王子に出て中央道経由のルートが示された。
頭に描いていたのは横浜新道から第三京浜、環八、甲州街道を経由する道筋で渋滞がなければ1時間半の道のりである。
それがはるばる八王子経由とは驚いた。
でも、直ぐになるほどな、新春ドライブにはいいかもなと思い直し、素直にナビに従って出発。
新湘南バイパスの高架に上がると目の前に富士山が浮かび、圏央道に入れば丹沢山塊がすぐ近くに寄りそう。
沿岸地域は薄雲が広がっているが、向かう先の東京方面とそのはるか奥の関東平野には青空が広がっているのが遠望できる。
普段見慣れない光景に、なるほど、ナビに従ったのも悪いことではないなと思う。
道はどこも空いていてストレスなし。
ほぼ1時間半で霊園に到着。
墓参りを済ませ、園内に張り巡らされた道路の脇に車を寄せ、車の中で持参の握り飯を食べて、ここでも無用の接触を避ける。
ただ唯一、いつも墓参りの際に水桶と柄杓を借り、花を買う行きつけの石屋も以前なら必ずお茶を勧めてくれるのだが、今回は湯茶の接待はナシというところに普段と違う緊張感が見て取れる。
何せ郊外地域とは言え感染者急増真っただ中の首都だから、こちらとしても恐々敵地に乗り込む気分なのだ。クワバラクワバラ…
実はこの石屋の女将は何と鎌倉のわが家の4、5軒隣の家の美人姉妹で知られた上のお嬢さんの嫁ぎ先なのである。
随分前のことだが、山の神とそのお嬢さんがバッタリ顔を合わせ、互いに「あらぁ~」と声を発したまま時間が止まってしまう場面があったのだ。
世の中ってのは実に狭い。
帰り道もナビに任せる。
すると今度は出がけに思い描いたルートの逆が現れ、所要時間も1時間半であるという。
実際走り出して見ると、なるほどスイスイと東京を抜け、あっという間に第三京浜、横浜新道を経て1時間半でわが家に到着した。
復路の走行距離は57km。
何だ昨年末の自転車の漕ぎ納めで走った距離と同じじゃん、往復114kmなんて往復できる距離じゃんと思う。やらないけれど…
往路は所要時間こそ同じ1時間半だったが、走行距離は約80km!
随分遠回りさせられたものだが、何せのんびりドライブのつもりだったから不満はない。
途中でコーヒーでも飲みながら休憩できる環境だったらよかったが、仕方のないことではある。
かくして目的を果たしてすぐに戻って来るだけの弾丸ツアーみたくなってしまった。
多磨霊園は春になると園路脇に植えられた枝垂れ桜が見事なので、できればその時期に行きたかったが、そううまくはいかないのが世の常である。
北鎌倉・浄智寺の布袋さん 参拝する人がお腹を撫でるものだから手垢が…