山形の友人から「トマトの脇芽をかいたものを送ってほしい」という、珍しくも初めての依頼を受けた。
はて、かいた脇芽をそのまま送ったって、しなびて使い物にならなくなるだけで、輸送代をドブに捨てるだけだ。
24時間後に届くとして、瑞々しいまま届け、直ぐに活着できるように保つにはどうすればいいか。
いろいろ考えた末、思いついたのは…
まず、カッターナイフの鋭利な刃をガスの仄で炙って消毒し、このカッターナイフを使って脇芽をかいた。
輸送中の蒸散作用を抑えるために葉を最低限に取り去り、茎と斜めに切り裂いた切り口に水をたっぷり含ませた脱脂綿を二重三重に巻き付けた。
そして、薄っぺらな箱を探し出してきてラップと新聞紙を敷いた上にかいた脇芽を重ならないように並べ、さらにその上からも新聞紙をかぶせて軽く抑えるようにして箱のふたを閉め、クロネコに託して発送したのだ。
午後1時半過ぎに脇芽をかき、3時の営業受付終了時間に間に合うように配送所までもっていった。
その後、友人宅に届いたのは翌日の午前11時ころだというから21時間ほどで先方に無事到着したことになる。
…で、かいた脇芽の状態や如何にと心配して問うボクに、友人は「うん、ピンとした状態で届いた。ありがとう。さっそくポットに植えたから後は苗の生命力次第」と、いたってクールな反応を返してよこした。
ボクにすればアイディアを凝らし、工夫を重ねたつもりだから気が気ではなかったのだが…
なぜ友人はこんなことを思いついてボクに持ち掛けたのか。
友人によると南関東の鎌倉と山形では季節がひと月違い、こちらではやっとトマトの苗を植え始めたばかりだが、そちらでは苗はぐんぐん育っていて、わき目もたくさん伸びているだろう。
どうせ脇芽をかいて捨てるならこちらに送ってくれれば土地はたっぷりあるから育ててるよ。
鎌倉生まれのトマトが山形で育つというのも楽しいじゃない、と言うことらしい。
まぁ、確かに苗を買えばそこそこの値段はするし、かいた脇芽を端から土に刺していって育てれば、苗代の節約にもなるし、効率としては申し分ない。
わざわざ遠隔地で脇芽をやり取りするという行為もまた新鮮に映る。
別の見方をすれば何とまぁ物好きな、と言うことでもあるのだろうが…
ボクもこういう突拍子のなさは好きなのだ ♪ すぐに乗れるんだなこれが。
わが家だってすでに10本近くの〝クローン苗〟が育っていて、もうこれ以上は必要ないのだ。第一、植える場所もないしね。
かくして盛夏になれば「うちんち」から送った苗で生ったトマトの実が里帰りしてくることだろう。
こちらから送った苗はミニトマトのブランド品「純あま」と同くミニトマトの人気のアイコをさらに甘く品種改良した「とってもアイコ」、JAさがみの藤沢の農家が育てたノーブランド品の3種類。
まぁ、転校生のようなものだから、友達と仲良くな。早くみんなと馴染んで楽しく過ごして健やかに成長してほしい。

見出し写真とこちらは江ノ島湘南港の防波堤の突端に立つ灯台。
化粧直しが始まっているのだが、五輪直前の、予め予定されていたスケジュールどおり作業がむなしいね

こちらも既存のヨットは1艇残らず他のヨットハーバーに移動を余儀なくされ、各国のヨットの受け入れ態勢を整えたヤードだが、ここに外国艇が並ぶことはおそらく来年もないだろうね

鎌倉・七里ヶ浜

同上

七里ヶ浜の東の外れの稲村ケ崎から東京五輪ヨット競技の拠点となるヨットハーバーがある江ノ島を望む