佐藤仁美が大手芸能プロダクションのオーディションでグランプリを受賞したのは一九九五年で、デビューしたばかりのまだ素人っぽさを残す水着姿に、僕はぜひ彼女を自慰用素材に用いたいと思ったが、結局その機会は一度もないまま今日に至っている。性的興奮を高められる存在でありながらも、それを汚そうとしなかったのは、当時の経済的事情とほかの素材に比べて優先順位が低かったからだ。
佐藤の写真集「Bless You…!」(近代映画社)が発売されたのは九六年八月で、その頃の僕は就職活動で忙しく、性欲に対して抑制的だった。二千円以上もする写真集どころか、お菓子系雑誌「クリーム」の八百円のムックすら買う金銭的余裕がなかった。しかも、当時は山田まりやがデビューしたばかりで、一作目の写真集を発表するという知らせにも触れたので、買うなら佐藤よりも彼女の作品だと決めていた。
同年九月に山田の写真集が発売され、僕はそれを池袋の東武百貨店内にある旭屋書店で購入し、すぐに男子トイレに駆け込んで自慰に耽ったことを四半世紀以上経った今でもはっきり覚えている。一冊の写真集を買うことはかなりぜいたくな経済行為だったゆえ、自室に戻ってゆっくり堪能する余裕がなかったのだろう。山田の写真集を選んだことで、佐藤のそれを買う機会は遠のいた。
それでも佐藤が気になる存在で、いつか「Bless You…!」を手に入れようと思ってはいたものの、僕の自慰用素材は九五年から九六年を境に「お菓子系」のそこらへんにいるような高校生世代の少女に傾倒していったことで、メジャーなアイドルタレントへの性的興味が急速に薄れていった。佐藤もそうだし、彼女の翌年にグランプリを受賞した深田恭子も二作目の写真集「COLORS」で水着姿を披露したが、僕はこれまで一度も素材として用いたことがない。
ヤフオク!に出品されている佐藤のデビュー当時の画像を見返すと、胸の立体感が露わで、高校生世代に特有の健康的なエロティシズムも醸し出されていて、今さらながら素材に用いる機会がなかったことを反省することしきりだ。ただ、佐藤よりもお菓子系アイドルや山田に性的興味がどうしても集中せざるを得なかったのは、彼女たちの性的アピールのほうが粗削りで横道に逸れていたからで、オーソドックスなエロティシズムに終始する佐藤の優先順位は下がってしまった。
自慰用素材としてはおろか、女優やバラエティとしての芸能活動についても何も綴れないが、僕の勤務先が名古屋だった九九年に、地下鉄駅のホームに掲出されている地元金融機関の広告に佐藤の見返り姿があったのを記憶している。それを目にして初めて佐藤が愛知県出身なのを知り、以来僕の中では地方銀行のイメージキャラクターは地元出身者だという思い込みを強くしている。
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