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韓国ドラマ「30だけど17です」(連載44)

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韓国ドラマ「30だけど17です」(連載44)


「30だけど17です」第5話(30歳の家出)④
☆主なキャスト&登場人物


○シン・ヘソン➡(ウ・ソリ)
○ヤン・セジョン➡(コン・ウジン)
○アン・ヒュソプ➡(ユ・チャン)
○イエ・ジウォン➡(ジェニファー(ファン・ミジョン)
○チョ・ヒョンシク➡(ハン・ドクス)
○イ・ドヒョン➡(トン・ヘボム)
○チョン・ユジン➡(カン・ヒス)
○ユン・ソヌ➡(キム・ヒョンテ)


★★★


 チャンはポン菓子を食べながら、ディコーナーでくつろいでいる。そこにソリたちが帰ってきた。
 チャンはポン菓子の大きな袋を傍らにおいて立ち上がる。
「おばさん、今日の授業はどうでした?」
 ソリは苦笑いする。
「出勤する前にクビになったんです」
「えっ? どういうこと」
 チャンはソリの前に立つ。
「なぜクビに?」
「ちょっとした事情で」
「…」
「そうだ。ネットでまた仕事を探さないと。めげてる場合じゃないから」
 ソリは二階に向かう。
「ひどい話だ」
 チャンはポン菓子の袋を持ってソリを追いかける。
「おばさん、待って」
 少し間をおいてウジンも二階に向かう。その時、窓から日差しを浴びている鉢植えに目が留まった。よく見ると葉っぱはきりっとして青かった。しかも若芽まで出てきている。
 ウジンは思わずつぶやいた。
「ほんとだ…すごく元気になった」
 感激の笑みを残して二階に向かう。


★★★


 トックがソリの膝に乗ってじゃれていると、ウジンがやってきた。
 ”定期検査に行こう”と言って、とっくに”おいでおいで”をする。手を叩いて呼ぶ。
 しかし、トックは嫌がってソリのそばを離れようとしない。
 ソリもとっくに話しかける。
「定期検査だっておじさんが言ってる。一緒に行っておいで」
 トックを抱き上げてウジンの前に差し出すが、床に足がつくとすぐソリの膝に戻る。
「トックダメだ、早く行こう。おいで」
 トックは嫌がって啼きだす。啼いてソリのそばから離れない。
 チャンが2階から降りてきた。
 ソリのそばにいるトックを見て言った。


「叔父さんはトックに振られたね。相手にされないみたいだ」
「バカなこと言うんじゃない」
 ウジンは真面目な顔で反発する。
 チャンは笑った。ソリに甘えているトックを眺めた。
「離れようとしないね。おばさんが好きみたいだ」
 ソリはバツが悪そうにする。
「何ならおばさんと一緒に連れて行けば?」
 ウジンはチャンを見た。それからソリの反応を窺う。
 ソリは声もなく目を落とした。




 チャンの裁定を受け入れ、2人はトックの定期検査に出向いた。
 検査を終え、帰りの車の中でソリはトックに話しかける。
「食欲も出て、もう大丈夫だ、って先生が言ってた。よかったね」
 トックの頭を撫でる。トックは嬉しそうにする。
 ソリはウジンを見て言った。
「これまでペンの…」
 と思わず口にして話すのを中断する。
「そうじゃなかった、トックの年齢を知らなかったのですか?」
 前方に目をやったままウジンは答える。
「おそらく15歳前後だろうとは見てたんだ…」
 その時、”ビーっ”と携帯が鳴った。
 ソリが気づいて言った。
「携帯が鳴ってます」
「悪い。カバンから出してもらえる?」
 言われた通りカバンから取り出す。見やすいようにかざしてあげる。
「OK、もういい。迷惑電話だ」
 迷惑電話? よくわからず、しまおうとしてソリは声を出す。カバンの中に見覚えのある菓子があったからだ。 
「これって…いつかの」
「ああ、それ…」
「この前、私に買ってくれた物ですか?」
 ウジンは困惑する。にわかには説明できなかった。
 菓子を買った後、ソリを見失ったのを思い起こす。そして見つけた時はすでに遠ざかっていた。
 そのまま返さねばと思い続けてきたもののソリが目の前に現れ、渡すタイミングを失ってしまったのだった。
 赤信号で止まった時、ウジンはソリの手からチョコ菓子を奪い取った。
「違うんだ。僕が食べたくて買ったんだ」
 そう言って包みを破き、菓子にかぶりつく。あまりの甘さに表情はどんどん苦くなる。
 ソリはウジンを見て言う。
「嫌いな物を無理に食べてるみたい…」
「誰が? この僕が? 好きなのにそんなことはない」
 ウジンは弁明してチョコ菓子をぐいと飲みこんだ。
 嫌そうなのが透けて見えてソリは笑った。


 
 信号待ちしてる時、ソリは通りの向こう側を歩く人混みから、見覚えのある人物に目を止めた。見覚えどころかそっくりだった。
「叔父さん…」

 突然、車のドアをあけて外に飛び出す。ソリの行動にウジンは驚く。
「ちょ、ちょっと…」
「叔父さ~ん」
 ソリは大きな声で叫び、見かけて人の後を追う。


 道路を横切ろうとするが、信号は青に変わったばかりで走り出した一台にあやうく撥ねられそうになる。
 運転手が急ブレーキで怒りをぶつける。
「危ないじゃないか!」
 それでもかまわずソリは道路を横切って走る。
 そんなソリを見ているうち、ウジンは忌まわしい記憶を触発された。バスが乗用車の上に乗り上げ、勢いよく横転する場面は昨日の出来事のようにくっきり覚えている。好きだった子の乗っていたバスだった。それも”次のバス停で降りた方がいい”と自分が薦めたばかりに彼女はその事故に遭遇してしまった…。
 まざまざと蘇ってくる記憶にウジンは両手を両耳にあてがった。彼女に言って言葉が蘇ってくる。


―この次のバス停で降りてください。


 ウジンは思わず目をつぶった。自分のせいで彼女は死んでしまった。差の事故で死んでしまった。
「叔父さ~ん!」
 ソリが飛び出して行ったためにトックも激しく吠えたてた。
 トックの吠えたてる声にウジンも記憶の深みにどんどんはまり込んでいった。
「”僕のせいで…彼女(ノ・スミ)は死んだんだ”」
 トックはしきりに吠えたて、後ろの車はウジンを急かしてクラクションを鳴らす。


 道路の真ん中に立ち、ソリは繰り返し叔父さんの名を呼び続けた。
 叔父を追おうとして叫び続けるソリの腕をウジンがつかむ。
「離して」
 ソリはウジンの手を振り切ろうとする。
 2人は向き合った。
「叔父さんを追いかけないと」
「動かないで!」
 放そうとしないウジンをソリは睨んだ。
「この手を放して。叔父さんがいたんです」
「行くな」
 ウジンは離さない。
 ソリの姿があの”ノ・スミ”と重なっているからだった。
 そんなウジンをソリはいぶかった。
 ウジンはもう一度言った。
「行かないで」
「…」

 交差点の真ん中で立ったまま、2人は自分の意志をぶつけ合った。
「行かせて!」
「行かないでくれ!」



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