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韓国ドラマ「病院船」から(連載128)

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 韓国ドラマ「病院船」から(連載128




「病院船」第12話➡あなたを突き放す理由④




★★★


 キム・スグォンはキム・ドフンを訪ねた。
「先輩がどうしてここまで?」
「用のついでに寄った」
「…」
「お茶を飲む時間は?」
「もちろん、あります」
 キム・スグォンはウンジェが父親の手術を行うことになったのをキム・ドフンに伝えた。
「キム・ドフンが執刀すると?」
「他に方法がない」
「…」
「大丈夫か?」
「何がですか?」
「彼女に父親の手術をさせて君は大丈夫か?」
「質問の趣旨は?」
「私は今、大人になる機会を君に与えてるんだ」
「先輩」
「君は岐路に立ってる。独善的な”お子様”のまま終わるか。寛容さを持つ真の大人になるかだ」
「…」
「どちらを望む」
 キム・ドフンはキム・スグォンを見つめ返した。
 キム・スグォンが帰った後、キム・ドフンは思案に沈んだ。
 キム・スグォンを見送ってミョン・セジュンが戻ってくる。
「何か問題でも?」
 「いいえ。キム院長はソンの件でここに?」
「自分で父親の手術をするようだ」
「…」
「なぜ驚く? 想定内だろ」
「でも、さすがに」
 ミョン・セジュンはソファに腰をおろした。
「教授。ひと言言わせてもらいます。今回は負けてはどうですか?」
「いくらソンが憎くても教授が執刀すべきです」
「君も私を疑ってるのか? ソンが憎くて執刀しないと?」
「違うのですか?」
「怖くて手術できないと言ったら―私を見下すか?」
「と、とんでもない」
「どんな手術か知ってるか? 拡大肝右葉切除に膵頭十二指腸切除を伴う手術だ。有能な外科医でも成功率は30%未満だ」
「…」
「院長選挙が近い。他の病院で失敗するリスクは冒したくない」
「ですが…」
「ソン・ウンジェだ。肉親の手術でもやり遂げられる。彼女ならできる…」


★★★


 ウンジェは巨済病院医師たちの前で、父親の病状説明を行った。
「ソン・ジェジュン59歳、胆道に生じたガンが膵臓と肝臓に転移しています。拡大肝右葉切除と膵頭十二指腸切除を行います。手術時間は12時間です」
 手術の準備は着々と進んだ。ゴウンも申し出て手術のスタッフに加わった。
 手術に向かうカウントダウンが始まっている。
 押し寄せる不安を鎮めているウンジェのところへヒョンがやってきた。
 目が合うとヒョンが言った。



「どうぞ。カフェインを欲してる顔だ」
 ウンジェは黙って紙コップを受け取る。手に熱いコーヒーとヒョンの心のぬくもりが伝わってくる。
「それとも外で酒でも飲もうか? 一杯くらいなら…」
「2杯飲め」
 後ろで別の男の声がした。振り返るとウジェだった。
「そして寝ろ」
「いえ、けっこうよ」
「じゃない」とウジェ。ウンジェを叱咤する口調で言った。「体調も気持ちも前向きで手術に臨まなきゃ」
「ウジェの言う通りだ」とヒョン。
「責任を持って姉を寮まで送って」
 ヒョンに敬礼するウジェ。
 2人を無視して行こうとするウンジェをウジェが呼ぶ。
 ウンジェは振り返る。
「こっちだろ」
 そうだったと気づいたウンジェだが、またも無視して2人の前を横切っていく。
 ヒョンに歩み寄ってウジェは呆れる。
「自分の務める病院で迷うなんてどうかしてるな…」
 ウンジェの歩いた方角を見ながらヒョンは言う。
「でも、手術室は間違えないよ」
「庇ってるつもり? ほら、またUターンしてる」
 2人は笑いあった。




 寮の外で2人はビールを飲んだ。
「手術は明日だね」
「…」
「心配か?」
「いいえ…しないと決めてる」
「君は偉いな」
 ウンジェはヒョンを見た。
「私は先輩よ…言葉遣いがなってないわ」
 ヒョンは愉快そうに笑う。黙ってビールを飲む。
「以前、私にこう言ったでしょ。”なぜ僕を突き放す”、”お母さんを救えなかったせいか?”って」
「…恨まれて当然だ。僕が同じ立場だったら恨んだはずだ」
 ヒョンの話を聞くウンジェの表情はサバサバと明るい。
「家族だから…仕方なかった。突然、家族を失うと―恨みが先立ってしまう。相手があなたのような立派な医者でもね」
「…」
「カルテを見たわ。丁寧に診察してた。胃腸疾患から心臓疾患まで、可能性のある疾患を告知してくれた。母のことも親身になって診てくれたのよね」
「…」
「だから私の働く病院を避けてた母も…訊ねてくる勇気を持てた…それが理由よ」
 ヒョンはウンジェを見た。
「あなたを突き放すのは」
 ウンジェはヒョンを見つめ返した。
「あなたがとても立派な医者だからなの」
「…」
「こんなにいい医者を失いたくない。同僚なら末永く手を携えられるからよ」
 そう言ってウンジェはビールを美味しそうに飲んだ。
 ヒョンは複雑な気持ちでウンジェに何も言えなかった。




 そして手術の日がやってきた。
「ターミナルには絶えずバスが入ってきています」
 テレビは縁日の交通ラッシュを伝えている。
 テレビのニュースを見ながらジェジュンは言った。
「そういえば秋夕だな…秋夕後にでもできればいいが…」
「何を?」とウジェ。「手術?」
「ああ…法事だ。母さんの霊前に酒でも供えてやりたい」
「手術後に行っても母さんなら理解してくれる」
 ジェジュンはウジェに何か言いたそうにする。
「何?」
「いや…そうだな…そうしよう」
 そこへカン・ドンジュンが姿を見せた。
「ソンさん、準備はいいですか? 手術室に移動します」
 ストレッチャーが中に入ってくる。
 手術室の入り口ではウンジェが待っている。
「父さんを頼むよ」
 ウンジェは父に言う。
「行こう」
「父さん、ファイト! 頑張って。父さんなら大丈夫だ」
 ウジェの言葉に頷くジェジュン。
 手術室に消えていくジェジュンに向かってウジェは拳を突き上げる。
「父さん、ファイト」




 手術室の前でウンジェは父に訊ねる。
「怖い?」
「怖くない、と言ったら信じるか?」
「怖がらなくていい。私が、必ず成功させる」
 ジェジュンは黙って聞いている。
「目覚めた時には終わってる」
 頷くジェジュン。
 ウンジェはスタッフを促し手術室に入ろうとする。
 この時、ジェジュンはウンジェの腕を取った。ウンジェは一瞬凍り付く。父を振り返る。
「万が一、…例えばの話だ、ウンジェ。万が一、俺に何かあっても…
お前は悪くない。お前のせいじゃないからな」
 ウンジェは涙ぐむ。
「分かったか?」
 涙を見せたくないウンジェは顔を背ける。
「なぜ、答えない」
「…」
「返事しろ。早く」
 ウンジェは父を見た。
「カッコいいぞ。俺の娘」
 ジェジュンも涙ぐんでいた。
「母さんのおかげだ。お前を…、とても立派に育てた」
 ジェジュンは手を放した。
「行こう」

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