雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「青い海の伝説」第3話③




 



韓国ドラマ「青い海の伝説」第3話③
Korean Drama "Legend of the Blue Sea" Episode 3 ③



第3話②…

 頭をおさえた右手を見て腕輪に気付いた。
「何だこれは?」
 場面はしっかり蘇ってきても意識の流れとの整合性がまるで希薄だ。頭の中がよどんで感じられるのはそのせいなのか…?
 ジュンジェは身体を後ろに伸ばした。後ろにそった身体を両手で支え、空を見上げた。
 そんな彼のそばに真珠がひとつ落ちていた。
 ジュンジェは飛行機で帰国の途についた。

★★★

 眠い。アクビがしきりに出る。
 寝不足の気はしない。前夜はしっかり寝たし、その前の夜だってしっかり寝た。
 韓国から追いかけてきた連中から執拗に追い回されたせいなのか?
あんなにかっこ悪く逃げ回ったのはこれまでで初めての経験だった。いつもの自分ならもっとスマートに逃げおおせていたはずだった。
 連中から逃げ回りながらあんな場所で母親との思い出に浸り、追っ手に追いつめられるなんて自分らしくなかった。
 ジュンジェは窓から地中海の海を見下ろした。
 連中から逃げ回って気がついたら砂浜に打ち上げられていた。
 そして腕には高価そうな翡翠の腕輪だ…。
 まるでずっと夢が続いていたような…この混濁の思いはいったい何なのか? あそこで自分は何をしていたのか? 何のためにひとりほっつき歩いていたのか…?
 飲み物が運ばれてくる。それを手にする…。





 地中海の海から女(人魚)はこの地から飛び去っていく旅客機の姿を追った。
 自分の記憶は彼の中からすべて消し去った。
 悪いことをして生きてるようだけど、彼の心は昔のタムリョンそのままだった。
 果たしてタムリョンなのかそうでないのか…。
 もう一度、最初から始めて確かめるため、機影の後を追って彼女は泳ぎ出した。





 ソウルは日々の喧騒で忙しい時間が流れていた。
 ジュンジェはその地に降り立った。
 
 おりしも次のようなニュースが流れていた。
 
 ――速報です。殺人事件の容疑者が体調を崩し…治療を受けていた病院から逃走しました。容疑者の男は40代で名前はマ・デヨンです。

 ジュンジェの目にマ・デヨンの姿が飛び込む。何百年に渡る因縁の相手だが、今生では初見の相手である。お互い、気付きあうこともない。
 ジュンジェはマ・デヨンの乗ってきた車でなく、後ろに続いていたタクシーに乗り込んだ。
 運ちゃんにナムドゥのいる場所に向かわせた。

 ナムドゥは玄関先に立ったジュンジェを見て驚いた。
「生きてたのか?」
「ちょっと来い」
「…」
 ジュンジェは腹を立てていた。
「来いよ」
 怒鳴るジュンジェにナムドゥはこそこそ逃げ回る。
「無事に戻ると分かってたから電話に出なかったんだ」
「こいつが、何を言ってる」
 壁に押し付けられてナムドゥも居直る。
「俺の気持ちも考えろ」
 そういって逃れようとするのを後ろから羽交い絞めする。
「俺の家がタダで手に入ったと喜んでたんじゃないのか? 正直に答えてみろ」
「クッ、クッ、苦しい。やめてくれ。放してくれ」
 腕を放した瞬間、ナムドゥはドアから部屋に飛び込んだ。
 ジュンジェは舌打ちする。
「ああ、禄でもない奴だ。勝手に人の家に住み込みやがって!」
 ナムドゥに続いてジュンジェも我が家に入っていく。
 先に入ったナムドゥは言う。
「まあ、くつろいでくれ」
「当然だろう。俺の家だからな」
 部屋にはデオの姿もある。
 デオを見て訊ねる。
「お前がここの鍵をあけたのか?」
 ナムドゥが答える。
「デオの手にかかれば楽勝だよ」
「…」
「韓国内でこいつがどうにもならないなんて家はどこにもないさ。ところで食事は?」
「ほほう、食事の心配か? そんなのいいからとっとっと出て行け」
「そう言うなよ。俺は行く当てがないんだ。俺たちの家はとっくにバレてる。どこに行けというんだ」
 ナムドゥは話の矛先を変えた。
「おい、明洞キャピタルの奥様は怖いぞ。とことん俺たちを追いつめる気でいる」
 また奴らか…ジュンジェは顔をゆがめた。頭に手をやった。
 デオは音楽に聴き入り、こちらに関心を示さない。
「そんなことより例の話をしよう。ちょっと来い」
「何を言ってる?」
「いいから早く来い、って」
 ナムドゥに手を引かれて行く時、ジュンジェはデオに叫んだ。
「早く出て行けよ」







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