韓国ドラマ 春のワルツ 感想
まずはNHKのガイドから
(テーマ)
美しい自然を背景に、純粋な愛を描くユン・ソクホ監督「四季シリーズ」。ユン監督いわく、最終章の本作では「春」だからこそ「希望」を描きたかったのだとか。心に傷を抱えた人も、愛と許しによってやがて癒されていく、そんな心の温かさが描かれている。
また、メインキャラクターにはスター性あふれる新人を登用し、「春」のフレッシュさを感じさせる。
(韓国での放送)
2006年3月~5月、全20話完結で、韓国KBSにて放送された。
(主題歌)
日本版の主題歌には、主演ソ・ドヨン(チェハ役)の歌う甘く切ない「FLOWER」が新たに録音された。この曲は、もともと韓国版では、女性歌手U-naが歌う挿入歌として登場していたが、今回は歌詞もチェハの目線で新たに書き下ろされた。もちろんU-naが歌うバージョンは、日本版でも劇中挿入歌として使用されており、こちらの歌詞はウニョン目線となっている。
(音楽)
劇中、幼いウニョンとスホの「思い出の曲」として印象的に流れるメロディ「クレメンタイン」。日本では「雪山賛歌」として独自の日本語詞がつけられているが、韓国では、漁師が島を去った娘を懐かしむ歌詞がついているのだとか。韓国版の歌詞を知る人にとっては、より一層の郷愁を誘う選曲となっている。
(ロケ地)
なにげない景色が「一枚の風景画」のごとく見えるのも、“映像の魔術師”ユン・ソクホ監督ならでは。国内約40箇所のロケ地候補から選んだというだけあって、全編に渡り、韓国の美しい風景を楽しむことができる。
さらに今回は海外ロケも敢行。自然美あふれる街として撮影されたオーストリアのウィーン、ザルツブルク、ハルシュタットの冬景色は、きたるべき「春」を際立たせている。
思わぬことに遭遇して予定調和の生き方が出来なくなり、別の人生を歩まざるを得なくなった主人公を描く話は少なくない。日常性を極力排し、ドラマチックな演出に主を置く韓国ドラマでは、この手の話はけっこう多いのではないか。
ユン・ソクホ監督の「四季シリーズ」でも、先に描かれた「冬のソナタ」がすでにその線の話だった。
ユン監督は「春」だからこそ「希望」を描きたかったのだそうな。
僕は少し異なって受けとめた。
「春」とは新たな生命が再び胎動を開始させる時期で、いろいろの声や音や匂いやあつれきが発生し、それらがまぜこぜになってさまざまの「煩わしさ」を生み出してくる。そうした視点からこのドラマを追いかけてみたのだった。
しかしそれらは春の空を乱舞する「希望」のタネであるとも言えようか。
「希望」を描きたかったのであるなら、「冬のソナタ」もそうであった気がする。だがよくよく考えれば、失明したチュンサンとユジンの愛が本物であったことはともかく、その先に待つ現実的苦労を二人がどのように克服していくのかという一抹の不安のようなものもラストで残されたのだった。冬ソナの熱烈ファンたちが、その後の二人を気にかけ、やきもきしたのはむべなるかなである。
ユン監督がヴィヴァルディの「四季」の世界を頭に思い描き、「四季シリーズ」を発想させただろうことは容易に想像できるが、監督はひょっとして「冬のソナタ」で十分に描ききれなかったものとして「希望」を取り出してきたのではあるまいか。
「冬のソナタ」では、春の気配がさっと示されただけで幕がおりた。
「冬」に続く「春」を丹念に描いていくという意味では、「春のワルツ」はキャストのフレッシュさとともに成果を大いにあげていると思う。