春のワルツ 第16話「異母兄弟」
まずはNHKガイドから
イナのオフィスでチェハの少年時代の写真を見てしまったウニョンは、スホにそっくりなその容姿にひどく動揺する。さらに、街でスホの父チョンテを見かけ、驚愕する。そんな折、営業を再開したウニョンの養母ヤンスンの食堂に、チョンテが現れ、食堂は大騒ぎになってしまう。ウニョンにスホの消息を問いつめられたチョンテは、「海外に出張中だ」とウソをつく。
チェハは、カングからの助けを求める電話で警察に出向く。そして、そこにいたカングの父が、自分の実父チョンテだと知り、がく然とする。しかし、チョンテはチェハが自分の息子スホであることに気づかない。
一方、友人の記者ヒジンからチョンテの写真を手に入れたイナ。ひとり考え込んでいるところに、チェハの携帯が鳴り、思わず電話に出てしまう。電話の相手がチョンテと知りイナは・・・。
●お手ごろ価格の地下と屋上
イナとチェハのキスを目撃し、いたたまれずにその場を去ったウニョン。そんなウニョンをチェハが追いかけ、彼女の家の前までやってきます。ウニョンの部屋の玄関が、道路より一段下がったところにあることに気づきましたか?これは、都市部の住宅によく見られる「半地下」の住居。一般的に通常の階の部屋よりも家賃が安く、懐事情の厳しい人たちの強い味方です。
もうひとつ庶民的な住居として知られているのが「オッタッパン(屋根部屋)」。これは屋上に作られた部屋で、夏には日差しの影響を直接受けるのでサウナ状態に。決して住み心地がいいとはいえないかもしれませんが、こちらも家賃が安いということで、学生や若い人がよく住むタイプの部屋です。「美しき日々」で、チェ・ジウ扮するヨンスが、親友のナレや妹分のセナと暮らしていたのも、そのような屋根部屋でした。ひょんなことから同居することになった若い男女を描いた「屋根部屋のネコ」というタイトルの韓国ドラマもありました。
そんな庶民的な「屋根部屋」にまつわる面白いエピソードがあります。2002年の大統領選の時、ノ・ムヒョン氏(現・大統領)のライバルであった、イ・フェチャン候補が、テレビの討論番組に出演した際、「オッタッパン(屋根部屋)」の意味を知らないことが露呈。そのせいで若い層のひんしゅくを買ってしまい、庶民派のノ・ムヒョンに敗れた、と言われています。「オッタッパン」は、80年代ごろから使われるようになった言葉で、国語辞典には載っていない新語。でも、大統領選の結果を左右してしまうほど、韓国の庶民には定着しているのです。
イナの保管していた写真を偶然見てしまったウニョン。そこには自分の知っている男子とそっくりの子が写っていた。写真を盗み見したことをイナにとがめられたウニョンはイナの部屋を飛び出していく。
彼女を動揺させたのはどんな写真なのか確かめ見たチェハはあわててウニョンを追いかける。そのチェハにウニョンは次々と質問を浴びせる。目の前にいるのはイ・スホではないか、とふと思ったからだ。チェハは動揺するが、イナが、違う、と助け舟を出す。
ウニョンの話からチェハは、わざと写真を見るようにしたのではないか、とイナに問いただす。見せるつもりなら直接見せている、とイナは冷ややかに弁解する。
頭の中が混乱しだしたウニョンはフィリップを呼び出し、チェハさんと初めて会ったのはいつ、ピアノは上手だった、チェハさんはいくつからピアノを、カナダへはいつ行ったの、と次々に訊ねる。
フィリップはそんな彼女の気持ちがつかめない。
二人して店を出た時、ウニョンは偶然、スホの父親を見かける。スホの父親まで目の前に現れた、何か変だ、と思い始めたウニョンは仕事が手につかなくなる。
チェハの周辺に出没しだしたスホの父チョンテは、ウニョンの養母ヤンスンの食堂にも客として姿を現す。
ウニョン母子の人生を狂わせたチョンテを許せないヤンスンは、店から追い出そうとするが恥知らずな人なつっこさで彼はそこに居座ろうとする。
店で悶着が続いているところへウニョンが帰ってくる。彼はウニョンに対しても恥知らずな人なつっこさを見せる。厚顔無恥で自分本位で罪意識や良心の欠如している彼のようなキャラは、韓国ドラマではしばしば登場する。デフォルメされているとは思うが、よくいるタイプの人間なのであろうか。このドラマでも不快な味付けだが全般にわたって効果をあげている。
息子に追い出されたチョンテをウニョンは追いかけて出る。ウニョンは彼にスホの消息を訊ねる。見栄と嘘で生きているチョンテは、海外に出張中だ、スホは立派にやっている、と嘘をつく。
チェハは、父親を助けてくれ、とカングに助けを請われ、警察にかけつける。ウニョンに大口をたたいた後のチョンテの情けない場面である。隣の客の酒をくすねて飲み、賠償の話になっていたのだ。チェハはその男が自分の父親だと知って驚く。昔の生活を今も続けていると知って情けなくなる。ピアノを夢中で弾くのはチェハの逃げ場のようだ。彼はそうすることで過去のいやな記憶を追い払ってきた。それが同時に今日の彼の名声を築き上げる原動力にもなったようである。
青山島に出向き、イナの友人がチョンテの情報を持ちかえってくる。チョンテの写真を見て、どこかで見た顔だ、とイナは首をかしげる。
チェハはカングの姿に自分の過去を見、自分の部屋に連れてくる。自分と同じ境遇をたどっているカングを思わず抱きしめる。
イナはチェハを訪ねてきた少年を見て再び首をかしげる。部屋に戻ると電話がかかってくる。その電話に出てはじめてイナの頭の中で電話の男と写真の男が重なる。
カングはいますか、迎えにいきたい、との申し出を受けた時、イナには一計がひらめいた。
それはチェハやウニョンなどとの一同食事の場にチョンテを来させることだった。イナの狙い通り、なごやかな会食の場はチョンテの登場で混乱する。
イナの取る手段は、チェハを自分のものとしたいためだろうが、次第にチェハへの当てこすりや復讐みたいなところも出てきた。チェハがあのチェハでないことを知って、心境に変化が萌していることは確かなようだ。
イナの友人は、彼に執着するのはもうやめた方がいいのでは、とアドバイスするが、彼は絶対わたさない、とイナは宣言する。
どうやら、チェハとウニョンをつないでいる絆の強さ、に彼女は嫉妬しているようである。
そういえば、本物のチェハが死んだと知って、彼女はひと晩泣き明かしたのだった。
チェハはチョンテに金をわたし、ソウルから姿を消してくれ、と頼む。追加でカングを学校へやってくれ、とも。これでもチェハが息子だと気付かない父親のチョンテ。どうせ金がつきればまた、ソウルへ、チェハのそばへ舞い戻って騒動を広げるのであろうが・・・。
ミーティングの場で、イナはチェハとの結婚を宣言する。チェハの両親に手をまわし、最後の強硬手段に出たのだ。
チェハはイナを追いかけて出た。
「愛のない結婚をして幸せになれるのか。何を考えてる」
「私はあなたがユン・ジェハであればそれでいい」
ウニョンが追いかけてきたのを見て、イナはチェハを見た。
「自分が誰か教えてあげる」
そう言うなりチェハに濃厚なキスをする。
いたたまれなくなってウニョンは目を背けるようにして走り出す。
フィリップはチェハを責める。
チェハはウニョンの後を追う。
泣きじゃくっているウニョンを探し当てたのはフィリップだった。フィリップはもはやウニョンの幸せを願う兄のような心境にあるようである。
フィリップはウニョンをヤンスンの店まで送っていく。するとそこへチョンテ親子が現れる。ウニョンを追ってきたチェハがそれを見かける。チェハはチョンテを連れ出して、どうしてウニョンのところへ戻ってきた、と責める。チェハの態度をいぶかるチョンテに、チェハはとうとう自分はイ・スホだ、と告白する。
チェハの言葉を後ろで聞いていたウニョンは呆然とするだけだった。
このドラマ、奇を衒わず、ずっと正攻法で押し通しているところがいい。真正面から話を進めていきながら、退屈な感じがしないのは、やはり、手腕というべきなのだろう。
クライマックスに向けてのこれからの数話、さらに注目して楽しみたい。