雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「青い海の伝説」第18話⑥










韓国ドラマ「青い海の伝説」第18話⑥




韓国ドラマ「青い海の伝説」第18話⑤




★★★
 ホ・イルジュン宅に警察車両が列をなしてやってくる。各課の捜査員が次々と入っていく。
 先頭に立って捜査令状を握っていたのはホン刑事だった。
「徹底的に調べろ!」
 2階からカン・ソヒがゆっくり降りて来る。
 ホン刑事が声をかけた。
「喪服姿はちと気が早いのでは?」
 ソヒは下りて来てホン刑事の前に立った。
「じきに葬儀ですから」
「解剖されるかもしれない時に…大丈夫ですか?」
 カン・ソヒは平然と笑う。
「大した自信だ」
「何とでもおっしゃってください。私の話なんてどうせ信じないでしょ?」
 行こうとするソヒにホン刑事は言った。
「もしかして、カン・ジヒョンさんをご存じで?」
 一瞬、ソヒは身を固くする。動揺する。
 しかし、次の瞬間には冷静さを取り戻す。
「私に何か聞きたいなら、今後は弁護士を通してください」
「ああ、弁護士ですか…弁護が必要な状況なんですね。無理もない。双子の妹の名前だ」
「…」
 ホン刑事はポケットから何か取り出す。
「古い写真が出てきました」
 カン・ソヒに向けてかざす。
「二人はそっくりですよね」
 写真の裏側を見る。
「一卵性?」
 ソヒはとぼける。
「何の話かわからないわ」
「妹さんは現在どちらにお住まいで?」
 ソヒはホン刑事を睨み返す。黙って背を返す。
「それともあなたが…ご本人かな?」
 ソヒは一瞬足を止めたが、答えずに行ってしまった。
 間違いないようだ…ホン刑事は笑みを浮かべた。


★★★


 ホン刑事は捜索を続ける同僚たちのところへやってくる。
「証拠は出たか?」
 制帽を被ったひとりが浮かない顔で答える。
「今はまだ…先輩の思い違いでは?」
「そんなことはない」
 ホン刑事は辺りに目をやる。
 カメラのシャッターが切られ続けている。
「この家のどこかに必ず何かがあるはずだ」




 ジンジュは夫のドンシクに言う。
「ネクタイは…」
 夫が目を寄こすと首を振る。
「何でもない…」
 腕を組んで考え込む。夫を見ないで言う。
「今日は黒よ」
「どうして?」
 ドンシクの首には紅のネクタイが巻かれようとしている。
「ホ会長が…亡くなったの」
「何だって? どうして?」
「知らないわ。私も今聞いた。何がどうなってるのかしら? 急にこんなことになったりして…」
 ジンジュはドンシクを見た。
「私たち、これからどうなる?」
「相続人はカン・ソヒとその息子だろ?」
「そうよ」
 ドンシクはポカーンとした顔をする。
「そう聞いていたけど結局は、実の息子に相続させると思ってたわ」
「そうだ。俺もそう思ってたよ」
「でもホ会長が亡くなっちゃったから、どうにもできないんじゃないかしら?」
「では俺たちは、付く側を間違えたのか?」
「間違えたわ。カン・ソヒを敵に回したのよ。ああ、もうおしまいだわ」
 ジンジュは目をつぶり肩を落とした。
「今からでも寝返れば…?
「何ですって? 二度も寝返ってどうするの? いくら何でも私のプライドが許さないわ」
「じゃあ、どうするんだ?」
「知らないわ。あなたが考えてみてよ」




 カン・ソヒが喪主となってホ・イルジュンの葬儀が行われた。
 多大の業績を残した故人を偲んで大勢の関係者が弔いに顔を出す。モ・ユランの姿もあった。ジンジュもモ・ユランに従っていた。
 カン・ソヒはモ・ユランを呼び止める。
「何しに来たの?」
 モ・ユランはカン・ソヒの目を見て答えた。
「決まってるでしょ。あんたを困らせに来たのよ」
 ジンジュはカン・ソヒをチラ見してモ・ユランに従う。
 モ・ユランは花を一本手向けてイルジュンを偲ぶ。


(イルジュンさん。あなたを恨んでたけど、こんな最期は悲し過ぎるわ。私が見える? よく見て。これでお別れよ)


 イルジュンの弔いを終えたモ・ユランのところへカン・ソヒがやってくる。
 ソヒはユランを一瞥して横に並ぶ。
「親が親なら子も子ね。音信不通だったあんたの息子もあの人が死んだ途端、騒ぎ出した」
「…」
「お金のためでしょ? あんたが現れたのも…」
 横から覗き込むようにユランを睨みつける。
「おこぼれ目当てよね?」
 ユランはソヒに向き直る。
「少しは恵んであげようと思ってたけど、あんたたち相手にそんな気遣いは無用ね」
 張り手がいきなりソヒの頬を見舞った。ソヒは顔をしかめ頬を押さえた。
「あんた! 何するのよ!」
「おこぼれ目当てはそっちでしょ」
「…」
「十分、恵んでもらって満足すればいいものを…今度は家を乗っ取ろうなんて、あんたは泥棒よ」
「泥棒ですって?」
 張り手を飛ばそうとしたソヒの手を誰かがすかさず握り取った。
 セファだった。



「何するの!」
「あなたが叩ける立場?」とセファ。「
「誰よあんたは? 口出ししないで」
「言葉を慎みなさい」とユラン。
「あんたの知り合い?」
「…」
「どうりで…」
 ソヒは握られた手を振りほどこうとする。しかし、振りほどけない。
「ちょっと離しなさいよ」
 いくらもがいても手は離れない。
「何なのよ、もう!」
「確かめたいことがあるの」
 セファは手洗いの壁にカン・ソヒを押し付けた。
「確かめたいって何を…」
 セファはソヒの手をつかんだまま彼女の記憶の中へ滑り込んだ。


 ―次々にソヒの疑わしい場面や行動が巻き戻されていく。その世界ではマ・デヨンも登場した。…


 カン・ソヒのすべての記憶を読み取ってセファは彼女の手を離した。
この時、カン・ソヒは放心状態になっている。
「ジヒョンさん、どうしたの?」とユラン。
「…私に何をしたの?」とカン・ソヒ。
 セファは答えた。
「できることをしないであげたの」
「…」
「あなたには何も忘れさせない。いつまでも覚えておきなさい」
「…」
「これほど罪を重ねてきたのに何も得られなかったことも一緒にね」
 セファはユランを見た。
「行きましょ」







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