雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「30だけど17です」(連載157)





韓国ドラマ「30だけど17です」(連載157)




「30だけど17です」第18話(初めてのキス)⑤


☆主なキャスト&登場人物

○シン・ヘソン➡(ウ・ソリ)
○ヤン・セジョン➡(コン・ウジン)
○アン・ヒュソプ➡(ユ・チャン)
○イエ・ジウォン➡(ジェニファー(ファン・ミジョン)
○チョ・ヒョンシク➡(ハン・ドクス)
○イ・ドヒョン➡(トン・ヘボム)
○チョン・ユジン➡(カン・ヒス)
○ユン・ソヌ➡(キム・ヒョンテ)
○チョ・ユジョン(イ・リアン)
○ワン・ジウォン(リン・キム)
○アン・スギョン(チン・ヒョン)
★★★

 会場に顔を出したリン・キムも、飲み物サービスなどをしているソリの姿に気付いた。しばらく考え込むしぐさを見せた。

 せわしく動き回るソリの前にウジンが立った。
「それをソリさんが配って回る必要はないよ」
 ソリは笑った。
「私は暇だから別にかまいません」
 そう言ってテーブルで雑談する関係者のところへ駆けていく。


 楽団員も集合を終え、リン・キムがマイクを握った。
「それではこれからリハーサルを始めます」
 タクトを握っているのはシム・ミョンファンだった。彼は楽団員に向かい、タクトをかざした。
 振られて演奏が開始される。流れ出したのは「ラデツキー行進曲」だった。
 ソリは高校生の頃の自分を思い出した。ウィンフィルでこの曲を聴き、自分もバイオリンで弾いてみたことがあった…。
 しばらくその曲に耳を傾けていたソリはそのうち背を返した。
 誰もいない場所にやってきて物思いに耽ったりしていた。
 するうち、後ろに誰かの背中が触れた。軽く悲鳴をあげた瞬間、それが誰かすぐにわかった。
「ああ〜、疲れた」

★★★


 ウジンはソリに背を当てた。
「しばらくこうさせて」
「えっ?」
 ソリは戸惑う。
 2人は風に吹かれてしばし黙りあう。
 ウジンは背中越しに手を伸ばしてくる。ミニプレーヤーのイヤーホーンが握られている。
「なぜ、それを…」
 ウジンは自分の分を耳に押し込んだ。。ソリもイヤーホーンを自分の耳に押し込む。
 お飾りのイヤーホーンではなかった。癒しの音楽が心に流れ込んでくる。
 ウジンは身体の力を抜いた。ウジンの重みがソリの背中を押した。
「曲が切れたら起こして」
「えっ? ああ〜、それは…」
「少し眠るので」
 ソリは目を見開いた。行く夏のさわやかな風を感じながら、遠くの空にかかる雲を眺めた。
 やがてピクとも動かないウジンのことが気になりだす。
 ほんとに眠ってしまったのかしら…?
 そっと首を動かす。後ろを覗き込もうとしたら、ウジンはすぐ反応する。
「こっちを見ないで」
「見てないです」
「いや、見てた」
「…」
 少し時間が流れて、ソリはまたウジンの様子を窺う。
「見ないで」
 すかさずウジンは言った。
 ウジンはイヤーホーンを外した。
「見てないです」
「見てたよ」
 そう言ってウジンはソリの背から身体を離す。
「そろそろ、行かなきゃ〜ね。おかげでよく眠れた」
 ソリに目をやって立ち上がる。
「ありがとう」
 着衣を整え、ソリを残して歩き出す。
 ウジンを見送りながらソリは呟く。
「私は平気なのに…」
 
 かなり歩いてからウジンは振り返る。
「行かないの?」
「行きます、行きます」
 置いて行かれる寂しさを味わいかけたソリは慌てて走り出す。
 肩を並べて公園内のステージに戻っていった。




 レースを控え、ボートの試合会場は緊張と活気で溢れている。
「おい、プンジン高校の連中だ」
 ヘボムが言った。
「チョン・ジヌンだ」
 ドクスに言われてチャンは後ろを振り返る。
 真っ赤なトレーニングウェアを着込んだグループの先頭をチョン・ジヌンが肩で風を切って歩いて来る。
 チャンと目が合うとジヌンは足を止めた。チャンの身体を渋い目で見やって歩き出す。いったん足を止めた部員らも少し遅れてついていく。
「個人戦に集中するべきだったのに悪いことをしたな」
 ヘボムは言った。
 ドクスも同調する。
「そうだ。俺らのために無理をさせたよ」
「何を言ってるんだ」とチャン。「選手ならメダルを欲しがってとうぜんだろ」
「…」
「それに俺は天下のユ・チャンだぞ」
 頭髪を撫でつける。
 そこに部員が駆けつけた。
「コーチが呼んでる。集まってくれ」
 
 集めた部員の前でコーチは喝を入れた。
「実践だからと気負わず、練習のつもりで力を出せ。負担に思うことなく―先頭でゴールするだけでいいんだからな」
 部員の何人かは苦笑する。
「さあ、いよいよだ。やってやろうぜ」
「オ―ッ!」
 全員胸を張って呼応した。
「ファイトだ!」
「ファイト!」


 レースに向けてチャンたちは円陣を組んだ。
「成金の息子として満足して生きてきたけど、メダルを取りたい。取れないと泣く」
 ヘボムの言葉にチャンは言った。
「取りたいじゃない。取るんだ」
「そうだな―ところで、こいつはさておきドクスは静かだな」
 ドクスは答えた。
「緊張で尿意が…19年の人生でここまで切実なのは初めてだ」
「…」
「ああ、トイレに行きたい」
「ともかく落ち着け」とチャン。「今までの練習を信じて、いつもどおりやればいいんだ。OK?」
「ああ」
 チャンは顔を上げて叫んだ。
「ドント・シンク・フィール!」
 ドクスらも続いた。
「ドント・シンク・フィール!」
「テサン高、ファイト!」
「テサン高、ファイト!」


 チャンたちはボートに乗り込んだ。
 各校のボートがレーンに並んだ。


 競技開始のアナウンスが会場で流れる。
「これより、第15回ボート競技大会初日、団体戦を始めます」


 そして、スタートは切られた。





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