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藤井棋聖　VS　塚田九段戦から

将棋

2020-08-02 13:29:34

藤井棋聖　VS　塚田九段戦から

★　第70回NHK杯将棋トーナメント　1回戦第16局

　8月2日は1回戦第16局、藤井棋聖対塚田九段戦が行われた。
　先手番を持った藤井棋聖は塚田九段を矢倉戦に誘導した。持ち時間の短い将棋なので、流れ弾に当たりやすい角換わり戦や横歩取りの戦いを慎重に避けたと見られる。
　また矢倉の戦いで最近はよい成果を出しても来ている。
　8割強の高い勝率を誇る藤井棋聖だが、NHK杯戦では連続して登場しながらまだこれといった実績を出していない。どれも１～2回戦で姿を消している。
　タイトルを所有する今年はもっと上まで勝ち進みたいところ。

　序盤は双方が相手の出方を窺いながら駒組みを進めた。先手番の藤井棋聖は角交換から角銀交換の積極的な攻めを展開した。
　藤井棋聖に玉の防御ラインを弱体化された後手は、受けてばかりではじり貧になると判断、9筋から反撃に出た。９五歩の突き捨てから8五に桂馬を打ち、桂馬交換後、再び8五に桂馬を打って香子を取って９七に先手玉を誘いだした時は、優劣のはっきりしない将棋に見えた。
　後手が攻めるなら1筋からと谷川九段も解説していた。金っ気がないので１五香と走って攻めても即詰みまでは行かない。なので９七同玉までは進む、と。逆に金っ気を一枚でも手にすると玉は危険にさらされるので同玉の順を選べないわけだった。
　つまり後手は先手の攻めを受けるばかりでは勝ち目が乏しくなると読み、手持ちの角2枚を頼りにぎりぎりの戦いを藤井棋聖に挑んだわけだった。
　結果は後手の攻めが途絶えた瞬間を狙い、１二角打ちから局面を一気に優勢につなげてしまった。
　後手は再度の６九角打ちから飛車を入手、王手銀取りの３八飛車と打って粘りの戦いを策すが、3六の銀を角でなく飛車に取らせたのが、先の先を見据えた攻防だった。
　３六の銀を防ぐ４七歩打ちには解説の谷川九段も驚いていた。
「自陣に詰みがないと見たのでしょうね」
　それもあったが取った飛車を3八に打たせたい狙いもあったようだ。王手銀取りをかけられた時、６八に間駒し、３六の銀を取られた時、３七香打ちが後手にとって激痛だった。竜に逃げられても３四と走った手が１二に打った角と連携し、後手玉包囲網がほぼ完成である。
　３四に香が走った後、藤井棋聖は後手玉を鮮やかにに寄せ切ってしまった。最後は一見無用と思われた７一のと金まで働いてくる見事さだった。
　塚田九段のそのと金にちらと触れている場面もあったような気が…。
　藤井棋聖のジェットエンジンは今日は終盤の戦いで見ることが出来た。