春のワルツ 第8話「ロードマネージャー」
まずはNHKガイドから
状況をよく理解できないまま、フィリップの告白を受け入れた形になってしまったウニョン。キスを迫るフィリップに、戸惑いを隠せない。遠くからそんな二人を見つめていたチェハは、静かにその場を立ち去った。
その足でホテルのレストランへと向かったチェハは、両親とイナ父娘との会食に臨む。ところが同じレストランに、フィリップとウニョンもやってきた。ウニョンにコンパクトを渡したいチェハ。しかしなかなかチャンスがない・・・。
ウニョンの家には、養父のトゥシクが帰ってきていた。しかしトゥシクはマルチ商法に手を染めており、店に借金の取立てがやってくる。そこにコンパクトを届けに来たチェハが来店。乱暴者たちを突き飛ばし、殴り返そうとするチェハの拳を、ウニョンはとっさに守った……。
それからというもの、ウニョンは借金返済のために奔走する。そんなウニョンの窮状を察したチェハは、フィリップを通じ、自分のロードマネージャーにならないかと持ちかけた。
●白いはちまきは病気宣言!?
夫が怪しげな商売に手をだして借金を抱え、寝込んでしまったヤンスン(ウニョンの養母)。その頭には白いはちまきが巻いてあります。頭を軽く押さえることによって頭痛を和らげるという目的以外に、「今、私は病人なの!」というアピールの意味もあるとか。韓国人スタッフいわく「デモ行進ではちまきするのと同じような意味」。だからドラマでこの「はちまき姿」が登場するのは、家族の誰かが問題をおこし、心労のあまり倒れる、といった場合が多いそうです。
以前放送した「美しき日々」でも、主人公ミンチョル(イ・ビョンホン)の祖母が、はちまき姿で寝込んでいる姿が登場します。ミンチョルの父が再婚したことを快く思わず寝込んでしまう、という設定でした。逆に深刻な病気の時にはこのはちまきは、あまり見られません。確かに、「春のワルツ」でも、手術を受けるほど重病の幼いウニョンや、入院しているチェハの母ははちまきをしていませんよね。ほかの韓国ドラマでも時々見られるこの「白はちまき姿」、見比べてみるのも面白いかも!?
キスの持つ意味合いは大きい。一方が額や頬にするキスではない。もちろん、お互い口と口の触れ合うキスを指している。
チェハとウニョンに許されるのは、お互いの口唇キス以外にはありえない。そういった純愛ドラマのセオリーを「春のワルツ」はきちんと踏襲しているようである。
第7話の終わりから第8話の冒頭にかけて発生しかけたウニョンとフィリップのキスの場面は、したがって、そうはならないとドラマを楽しむ者にはわかっている。フィリップはプレイボーイだが、根は純情な心の持ち主だから、ウニョンがやんわり拒んでその危機は消滅する。フィリップを粗暴なキャラとして似たような流れが設定されることはありえないが、仮にその場面が設定されたとすれば、フィリップの唇は血で真っ赤に染まることになっただろう。つまり、ウニョンはヒロインとしてチェハ以外の唇は受け入れてはならない存在なのである。
同じことはチェハにも言える。イナがいくらチェハにキスをせがんだとしてもチェハはその行為に及ぶことはないだろう。男であるチェハは、そのような情熱をひたすらヒロインの唇に向けて注ぐことになる。
このように口唇キスを純潔化し、主人公にまつわる唇と唇の間に一途な価値体系を横たわらせたのが純愛ドラマの一大特徴と言えそうである(キスが日常的に習慣化した国にこんな発想はないだろうが)。
さて、今回もウニョンとフィリップのコンビがすがすがしい風を吹き流した。
一年で言えば五月の薫風、競馬の日本ダービーでいえば向こう正面流しと言ったところか。さらに長距離便旅客機で言えば、高度8000メートルに達し、目的地に向け順調な飛行が見られだしたといったところ。
ここらへんは入り口からも出口からも離れた場所。この世界特有の空気や景色、イメージを押し広げたりするところである。ウニョンとフィリップが舞台回しをやって、なかなか効果的である。
一方、チェハとイナの関係はどこかギクシャクした感が否めない。原因はチェハにある。ウニョンのことがずっと気になっていて、心ここにあらずの状態が続いているからである。イナはそんなチェハの心をつかみかねている。ウニョンのせいかとも思ったりするが、そうではないと自分に言い聞かせ、彼女のことは考えないよう努めているようである。
チェハはウニョンへのおわびで買ったコンパクトを何とか彼女に渡したいと思っているが、自分の不手際や、ウニョンのそばにフィリップがいたりして、なかなかその機会を得られないでいた。
ある日、決心して彼女の店に赴くと、そこではひと騒動が持ち上がっていた。ウニョンの養父がマルチ商法の品を買い込み、その代金の取立てに遭っていたのだ。代金の取立てにやってきた連中は、器量のいいウニョンを見つけると借金の形に彼女を連れて行こうとする。
チェハはそこに割って入り、ウニョンを連れて行こうとする乱暴者を突き飛ばした。しかし乱暴者は引き下がらない。チェハが彼らとの乱闘に入ろうとするのを、ウニョンは必死でチェハの拳を押さえた。ピアノを弾く大事な手だったからだ(工芸アーチストのウニョンにはピアニストの手の大事さがよくわかっている)。ウニョンは同時に「お金は私が払います」と叫んでいた。
それから、ウニョンは金の工面に走り回る。しかし、これといった担保もない彼女にそれが出来るわけもない。フィリップはウニョンについてまわり、徒労の様子を目に刻む。そのさなか、義弟が問題を起こす。友人に借金しようとしたのはいいが断わられ、殴って怪我をさせてしまった。逆に慰謝料を請求される始末となった。
途方に暮れたウニョンはついにチェハを頼ることを決心する。義母を安心させ、出向いていったまではよかった。だが、チェハの前に立つとそれが切り出せない。出前の器の回収などといってごまかすが、チェハにどうやらその気持ちは届いたようであった。
チェハはイナに「ロードマネージャー」の受け入れを要望し、了解を取り付ける。自分が声をかけても素直に応じてくれないだろう、と考えたチェハは、フィリップを通じウニョンに雇用の話を持ちかけさせる。フィリップはイナを説得し、ウニョンの採用を決めた。ウニョンにとってそれは願ったり叶ったりだった。
雇用契約の成立で、その夜、ウニョンとフィリップは祝杯を挙げる。フィリップをホテルまで送ってきたウニョンは、あまりの気分よさと脱ぎ残していった靴のことを思い出し、タクシーを行かせる。ホテルの庭内に踏み込み、脱ぎ残しの靴を探し始める。するとその姿をチェハがたまたま見かけ、雨も降り出してくる。
雨はどんどん強くなる。
「ああ、ほんとにどこにあるのよ・・・」
靴を探しあぐねているウニョンに傘を差しかけたのはチェハだった。気分のいいウニョンの表情は屈託がない。チェハに対しても素直である。
「ここで、何してるの?」
「おっー・・・あなたこそここで何してるの」
「ひょっとして、お酒飲んでる」
「ああ、お酒臭いですか」
「フィリップと飲んだ・・・」
「ええ、どうしてわかったの。彼が私を助けてくれたの」
「何を探しているの」
「靴なの。ああ、ほんと、どこいったんだろう・・・」
「買ってあげるから、あげるから僕が!」
「だから、あなたはだめなんです。私のはきなれたあの靴はお金では買えないんです」
「わかった、わかった。だから、中へ入ろう」
そうこう二人でやりとりし、靴をさがしているうち、靴は見つかる。喜ぶウニョン。チェハも嬉しそう。
ウニョンとすっかり打ち解けたチェハはそこで思い出し、コンパクトを差し出す。自分の失くしたものが出てきて喜ぶウニョンだが、それは同じ色同じ種類のチェハが買ったコンパクトだった。
その様子をずっとチェハの義母も見ていて、何か気にかかりだしたようなのだが・・・。
ウニョンの手に戻ったコンパクトは、やがて、イナの心に波紋を呼ぶことになる。