韓国ドラマ「青い海の伝説」第14話⑨
韓国ドラマ「青い海の伝説」第14話⓼
★★★
ホン・ドンピョ待つ間、ジュンジェはテオから送られてきた画像のチェックにかかかる。
「写ってるこのおばさんは誰だ?」
一緒の女性が誰なのかは分からない。画像を拡大するうち、見覚えがあるように思えて目を凝らす。しかし、誰かと判別するまではいかない。
「いろいろと友達が多いんだな」
ため息をついているとホン・ドンピョが書類を握って戻った。一枚をテーブルに置いた。
「マ・デヨンの診療記録だ」
「…」
「カン・ジヒョンという女を知ってるか?」
「カン・ジヒョン…? 覚えないな」
ドンピョはため息をつく。
「奴と関係のある女だが見つからない。住所は不明で住民票もない」「…」
「二人の間には子供がいたようだ」
「だとしたら…その女か子供が逃走を助けてるのかも…」
「うむ、あり得るな。その資料もらえるか?」
「…」
「ナムドゥ兄貴なら警察より早く見つける」
ホン・ドンピョは顔を真っ赤にした。手にした書類を丸めジュンジェの頭を叩く振りを見せる。
「まったく、詐欺師に指図されるとは…」
ジュンジェは含み笑いした。ドンピョを見上げた。流罪の護送でやってきた過去の役人(武官)が目の前のドンピョだった。ジュンジェはもう一度含み笑いした。
「ホン刑事は思ってた以上にいい人だ。今も(昔)も…」
ドンピョは腕に触れたジュンジェの手を思い切り振り払った。
「やめろ! なれなれしいぞ!」
ドンピョの舌打ちを聴きながらジュンジェは渡された書類に見入った。
「チン・ギョンウォン…?」
ドンピョは訊ねる。
「知ってるのか?」
「…」
「マ・デヨンをもっとも多く診察した医師だ」
資料では”精神科医”となっている。
★★★
二人はチン・ギョンウォンの許を訪れた。マ・デヨンについて訊ねた。
チン・ギョンウォンは頷いた。
「何度か治療した。彼は自分の暴力性を抑えられず苦しんでいた」
「最近、来ましたか?」
しばらく考えてチン医師は否定した。
その表情は重い。
自分の患者に対する配慮なのか。それともマ・デヨンに先回りされ、脅迫を受けたからなのか。
ジュンジェの目はソファの縁に置いた彼の右手に注がれた。人差し指が細かく動いていたからだった。
買い物をすませた後、モ・ユランは住み込みで働いている家にセファを連れてきた。
「ここがチャ・シアの家ですか?」
「そうよ」
セファはびっくりした。
いつかジュンジェたちと大金持ちに扮してやってきて、途中で逃げ出した家だったからだ。
家に逃げ帰った後、ジュンジェとナムドゥは、下調べ云々で激しく言い争っていた。
「…だから慌ててたのね」
セファはぶつぶつ呟いた。
「何が?」
モ・ユランが聞いてきた。
「何でもないわ」
セファは握ってきた買い物袋を渡した。
「またね、バイバイ」
「バイバイ」
セファの後をつけてきたテオはその家を携帯カメラで撮った。
そこにチャ・シアが立ちはだかった。
「シアさん…いや、誤解だ」
「何が、誤解だって?」
「今、シアさんの考えてることが違うんだ」
セファが遠ざかっていく。
テオは追いかけようとする。
「待ちなさいよ」
シアが引き留める。
「思ってたより深刻ね。なぜ、うちの写真を撮ってるの?」
「…」
「そんなに私が好き?」
「まいったな」
「こっちのセリフよ。自分の事だけで精一杯なんだから」
「…」
「あなたが入り込む隙はないの」
「なくていいんだけどな…ぶつぶつ」
セファは姿が見えない。テオは慌てて追いかけだす。
見送りながらシアはつぶやく。
「少し言い過ぎたかしら…叶わぬ恋って残酷だわね…」
ジュンジェ宅の階段を歩きあがるセファに電話が入った。
携帯に出るとチヒョンからだった。
ふと見上げるとすぐ上手にチヒョンの姿がある。
チヒョンは階段を下りてきた。
「持ちますよ」
めぼしい情報を得られずジュンジェとドンピョはチン医師の医院を出ようとする。
先に行かせてドンピョは言った。
「車で待っててくれ。先生と別件で話がある」
「さっさとすませろよ」
「…寒いから暖房をつけといて」
「わかった」と答えてからドンピョは振り返る。「俺の勝手だ」
ジュンジェの勘は当たっていた。ホン刑事が一緒だったからチン医師は話すのをためらったのだ。
自分とマ・デヨンは患者としても過去の経緯からも、双方の世界がつながってくるはずだった。
「昨日、訪ねてきた」
チン医師は口を開いた。
「何をしに?」
「…暴力性を抑える薬をよこせと」
「タムリョンとセファを殺した男です。今も俺たちを狙っている」
「彼も昨日、前世を見た」
「…」
「こう言ってた…(俺じゃなかった。あいつは俺じゃ)」
「えっ! 自分ではないと?」
「…」
「じゃあ、誰が?」
「訊ねたが答えなかった」
「…」
「話しただろ。運命は簡単には変えられない。今からでも彼女を元いた場所へ帰せ」
ジュンジェはチン医師を見た。
「マ・デヨンはまた来ますか?」
「薬を渡す約束をした。近いうちに来る」
「来たら教えてもらえますか?」
「いいですよ」
その時、携帯が鳴った。
テオからだった。
― 悪い。シムチョンさんを見失った。
ジュンジェはドンピョの車を急がせた。
ホン・ドンピョ待つ間、ジュンジェはテオから送られてきた画像のチェックにかかかる。
「写ってるこのおばさんは誰だ?」
一緒の女性が誰なのかは分からない。画像を拡大するうち、見覚えがあるように思えて目を凝らす。しかし、誰かと判別するまではいかない。
「いろいろと友達が多いんだな」
ため息をついているとホン・ドンピョが書類を握って戻った。一枚をテーブルに置いた。
「マ・デヨンの診療記録だ」
「…」
「カン・ジヒョンという女を知ってるか?」
「カン・ジヒョン…? 覚えないな」
ドンピョはため息をつく。
「奴と関係のある女だが見つからない。住所は不明で住民票もない」「…」
「二人の間には子供がいたようだ」
「だとしたら…その女か子供が逃走を助けてるのかも…」
「うむ、あり得るな。その資料もらえるか?」
「…」
「ナムドゥ兄貴なら警察より早く見つける」
ホン・ドンピョは顔を真っ赤にした。手にした書類を丸めジュンジェの頭を叩く振りを見せる。
「まったく、詐欺師に指図されるとは…」
ジュンジェは含み笑いした。ドンピョを見上げた。流罪の護送でやってきた過去の役人(武官)が目の前のドンピョだった。ジュンジェはもう一度含み笑いした。
「ホン刑事は思ってた以上にいい人だ。今も(昔)も…」
ドンピョは腕に触れたジュンジェの手を思い切り振り払った。
「やめろ! なれなれしいぞ!」
ドンピョの舌打ちを聴きながらジュンジェは渡された書類に見入った。
「チン・ギョンウォン…?」
ドンピョは訊ねる。
「知ってるのか?」
「…」
「マ・デヨンをもっとも多く診察した医師だ」
資料では”精神科医”となっている。
★★★
二人はチン・ギョンウォンの許を訪れた。マ・デヨンについて訊ねた。
チン・ギョンウォンは頷いた。
「何度か治療した。彼は自分の暴力性を抑えられず苦しんでいた」
「最近、来ましたか?」
しばらく考えてチン医師は否定した。
その表情は重い。
自分の患者に対する配慮なのか。それともマ・デヨンに先回りされ、脅迫を受けたからなのか。
ジュンジェの目はソファの縁に置いた彼の右手に注がれた。人差し指が細かく動いていたからだった。
買い物をすませた後、モ・ユランは住み込みで働いている家にセファを連れてきた。
「ここがチャ・シアの家ですか?」
「そうよ」
セファはびっくりした。
いつかジュンジェたちと大金持ちに扮してやってきて、途中で逃げ出した家だったからだ。
家に逃げ帰った後、ジュンジェとナムドゥは、下調べ云々で激しく言い争っていた。
「…だから慌ててたのね」
セファはぶつぶつ呟いた。
「何が?」
モ・ユランが聞いてきた。
「何でもないわ」
セファは握ってきた買い物袋を渡した。
「またね、バイバイ」
「バイバイ」
セファの後をつけてきたテオはその家を携帯カメラで撮った。
そこにチャ・シアが立ちはだかった。
「シアさん…いや、誤解だ」
「何が、誤解だって?」
「今、シアさんの考えてることが違うんだ」
セファが遠ざかっていく。
テオは追いかけようとする。
「待ちなさいよ」
シアが引き留める。
「思ってたより深刻ね。なぜ、うちの写真を撮ってるの?」
「…」
「そんなに私が好き?」
「まいったな」
「こっちのセリフよ。自分の事だけで精一杯なんだから」
「…」
「あなたが入り込む隙はないの」
「なくていいんだけどな…ぶつぶつ」
セファは姿が見えない。テオは慌てて追いかけだす。
見送りながらシアはつぶやく。
「少し言い過ぎたかしら…叶わぬ恋って残酷だわね…」
ジュンジェ宅の階段を歩きあがるセファに電話が入った。
携帯に出るとチヒョンからだった。
ふと見上げるとすぐ上手にチヒョンの姿がある。
チヒョンは階段を下りてきた。
「持ちますよ」
めぼしい情報を得られずジュンジェとドンピョはチン医師の医院を出ようとする。
先に行かせてドンピョは言った。
「車で待っててくれ。先生と別件で話がある」
「さっさとすませろよ」
「…寒いから暖房をつけといて」
「わかった」と答えてからドンピョは振り返る。「俺の勝手だ」
ジュンジェの勘は当たっていた。ホン刑事が一緒だったからチン医師は話すのをためらったのだ。
自分とマ・デヨンは患者としても過去の経緯からも、双方の世界がつながってくるはずだった。
「昨日、訪ねてきた」
チン医師は口を開いた。
「何をしに?」
「…暴力性を抑える薬をよこせと」
「タムリョンとセファを殺した男です。今も俺たちを狙っている」
「彼も昨日、前世を見た」
「…」
「こう言ってた…(俺じゃなかった。あいつは俺じゃ)」
「えっ! 自分ではないと?」
「…」
「じゃあ、誰が?」
「訊ねたが答えなかった」
「…」
「話しただろ。運命は簡単には変えられない。今からでも彼女を元いた場所へ帰せ」
ジュンジェはチン医師を見た。
「マ・デヨンはまた来ますか?」
「薬を渡す約束をした。近いうちに来る」
「来たら教えてもらえますか?」
「いいですよ」
その時、携帯が鳴った。
テオからだった。
― 悪い。シムチョンさんを見失った。
ジュンジェはドンピョの車を急がせた。