韓国映画「ビューティ-・インサイド」から②
「外見より内面が大事。そう思うけどチャンスは第一印象で決まるもの。これでいいんだ」
くじけそうになる気持ちを励ましながら、ウジンはホン・イスの勤める家具店に向かった。
店に入ると「何をお探しですか?」と女子店員が声をかけてきた。
しかしその店員には見向かず、ウジンはホン・イスを探した。
彼女のガイドに従いオーダーメイドのイスを買った。製品を梱包してもらう間に支払いをすませた。案内を務めてくれたホン・イスに片側を持ってもらい製品を車に積み込んだ。
そこでホン・イスは訊ねた。
「ほんとに展示品でいいのですか? 二日後には入荷しますが」
後でトラブルがあったりもするのだろう。
「これと決めてきたので大丈夫です」
「ではまたお越しください」
お客と店員の関係はそこで終わりだった。
しかしここが正念場、ウジンは店内に戻ろうとする彼女を呼び止める。振り返った彼女に質問する。
「これとさっき薦めてくれた椅子とどっちがいい?」
「…?」
「木製がいいかそれともスチールがいいかだけど…」
困惑している彼女にウジンは畳みかける。
「ステーキ? それともお寿司?」
「…えっ?」
ホン・イスから白い歯がこぼれる。真顔で返ってきた答えは”お寿司”だった。答えてからホン・イスは苦笑を見せた。
「よかった。行きましょう。僕もお寿司が好物です」
「残念です」ホン・イスは店員の立場で答える。「在庫整理で———在庫整理で時間がなくて…」と末尾を濁らせる。お客の感情を刺激させないためなのだろう…。
ウジンはぶつぶつつぶやく。(今日でないといけないんだけど…)
「…」
今日しかない。ここで引きさがれない。ここで引いたらホン・イスとはこれっきりだ。それにここで引いたら、ずっとここどまりになってしまう。彼女から目を背けるわけにいかない。
「夕方だし、お腹も空いてると思うんだけど…」
「お気持ちだけありがたくいただきます。楽しいお食事を」
背を返した彼女をウジンは諦めない。彼女を追いかけようとする。
「ま、待ってください」
ホン・イスは振り返る。困惑気な顔になる。ウジンは彼女のそばに立った。
ウジンは自分をすごく惨めに思いながらも、腹に収めていた言葉を素直にぶつけることができた。
「誘い方を…何度も考えてやってきたんです」
「…」
「一緒に食事がしたくて」
ホン・イスは身振りを入れて訊ねる。
「どうして今日なんですか?」
ウジンはなおも説得を続けた。
ホン・イスはウジンの情熱に負けて誘いに乗った。
ホン・イスにとって店の客と店員の立場から誘われたデートだった。だが、寿司をお土産で買ってよその場所で食べると知ってイスの気持ちは揺らいだ。彼に好感を覚えたからこそ誘いに乗った。しかし、当の食堂でなく別の場所に出向いて食事するのには抵抗を感じた。そこがどこかわからないのも不安だった。煩わしいというより、最初からこんな誘いに乗る軽い女と見られるのは嫌だった。
「やっぱり私、もう行かなくちゃ…」
車を降りようとするイスにウジンは切り出す。
「住民番号→○○○○○○—○○○○〇〇〇」
ウジンのいきなりの宣言にイスはびっくりする。
「携帯番号→○○○—○○○○—○○○○→ソウル市××××」
「…」
「…です」