韓国ドラマ「青い海の伝説」第13話⑪
韓国ドラマ「青い海の伝説」第13話⑩
★★★
部下は書類を見て説明した。
「この人は不定期ではありますが、2009年からヤツをもっとも多く診察していた医師です」
ホン・ドンピョのもとでマ・デヨンのデーターは着実に増えていた。
「チン・ギョンウォンか…」
医師はジュンジェに訊ねた。
「それで…君は夢の結末を見たいのか?」
「彼が僕に何を伝えたいのか…真意を知るためには結末を見ないといけないのでは?」
「ふむ。しかし、それは深刻なトラウマになる可能性もある」
「…」
「それでもいいのか?」
しばし思案に沈み、ジュンジェは小さく頷く。
「はい」
医師はジュンジェの診療を開始した。
ソヒの話もあり、薬をもらうためマ・デヨンは心療内科(チン・ギョンウォン)の医院を訪れた。
医師の診療でジュンジェは少しずつ心の奥深くおりていった。
「…(頼んだぞ。忘れるな…)」
前世の都事(ジュンジェ)は友人宅を訪れていた。
友人は言った。
「そんな頼みごとをするなんて…まるで今生の別れだ」
「…今日は何日だ?」
彼は傍らの医員に訊ねた。医員は答える。
「12月11日です」
シアから届いた資料にジュンジェは目を通していた。
―12月11日、数え年にして27歳という若さで…死去。
「そう決まっているなら…」ジュンジェの意識の底に出てきた都事は小さく笑みを浮かべる。「私の宿命であろう」
黙っている友人に向けて彼は続けた。
「私たちの再会も決まっている。またよき友になれる」
そして彼は白装束で流刑の地に向かった。
彼を流刑地へと送り届ける官吏は前世のホン・ドンピョだった。
「まもなく出港します」
「そなたでよかった」
前世のホン・ドンピョは時の法に忠実な官吏だった。
「恩義を感じたのは昔のこと、私は責務を果たします」
都事は黙って彼の肩に手を置いた。
彼も船上で運命を共にするひとりだったのか…?
ジュンジェは魘された。
暗い海の空にたくさんの風灯が上がっている。
運命の12月11日―流刑地に向かう海でどんな出来事があったというのか…。
★★★
流刑地に向かうあの男を助けるために人魚はここへ必ずやってくる…!
無数に飛ばした風灯を見上げ、かがり火を焚き人魚を生け捕るための支度にかかる部下たちの作業を見守りながら、領主のヤン氏はほくそ笑んだ。
(これであの男への復讐を遂げながら人魚を捕獲できる。。あとは人魚の流す涙で宝の山を築き、都の貴族や役人たちも意のままに操れる。一石三鳥というものだ…ふっふふふふふ)
風灯の明かりに照らされる海に向かって人魚が泳いで来る。
「(セファ…来てはいけない。来ては…)」
深く降りた心と夢の交差する世界でジュンジェは魘された。
「(来ては…来てはいけない…)
しかし、彼(タムリョン=ジュンジェ)の必死の思いは彼女に届かない。聞こえない。
ただ、彼に会いたい一心でセファは風灯の海へと向かう。
夢に魘され、心の格闘を続けるジュンジェをチン・ギョンウォンは静かに見守っている。
マ・デヨンは自分のかかる医院のドアノブに手袋をした手をかける。
白装束のタムリョンを乗せた船は穏やかな海を進む。彼は上空を見やった。出ていた円い月は雲間に隠れる。
ふと、船の遠ざかる逆方向に海を照らす風灯が見えた。数えきれないほどの数だった。
タムリョンの表情は強張った。胸騒ぎを覚えて立ち上がる。
自分が出発した後を狙って、あの風灯の下には領主たちの船がセファを捕獲しようとしているのでは…?
かがり火を焚いてヤン氏らは人魚が現れるのを船上からじっと待ち構えた。
都事に会うため、人魚は必ずやって来る…!
ヤン氏の読みは当たっていた。やがて風灯に照らされる海面にうごめくものを感じて目をこらした。
人魚だ!
どよめく配下たちをヤン氏が制す。
船の下に現れたのは人魚に間違いなかった。ヤン氏は配下に合図を送る。
「今だ、やれ!」
船上からさっと網が打たれる。
空に浮かぶおびただしい風灯を見ているうち、タムリョンに胸騒ぎが走った。ふと思い起こした。自分が乗船を命じられた時、かがり火を持ち港の磯伝いを進んでいく一団がいたことを…。
タムリョンは船の指揮を執る官吏に声をかけた。
「引き返せ!」
「何を言っておられます?」
管理をじっと見てタムリョンは言った。
「引き返してくれ。自分にはやることが残っている」
「できませぬ」
法に忠実な官吏は答えた。
「私の愛する者の命がかかっている」
「恐れながら、それはできませぬ」
「私も承服できぬ」
タムリョンは信念で言った。
タムリョンは官吏の腰の剣を抜いた。首元に突き付けた。
官吏の部下はタムリョンに剣を向けた。
二人はしばし睨み合った。
「私の用がすめばすべて従うと約束する」
「…」
「頼む」
「…」
「あの者を救えねば―生きる意味はないのだ」
タムリョンの言葉に打たれ、官吏は部下たちに剣を下ろすよう命じた。
部下は書類を見て説明した。
「この人は不定期ではありますが、2009年からヤツをもっとも多く診察していた医師です」
ホン・ドンピョのもとでマ・デヨンのデーターは着実に増えていた。
「チン・ギョンウォンか…」
医師はジュンジェに訊ねた。
「それで…君は夢の結末を見たいのか?」
「彼が僕に何を伝えたいのか…真意を知るためには結末を見ないといけないのでは?」
「ふむ。しかし、それは深刻なトラウマになる可能性もある」
「…」
「それでもいいのか?」
しばし思案に沈み、ジュンジェは小さく頷く。
「はい」
医師はジュンジェの診療を開始した。
ソヒの話もあり、薬をもらうためマ・デヨンは心療内科(チン・ギョンウォン)の医院を訪れた。
医師の診療でジュンジェは少しずつ心の奥深くおりていった。
「…(頼んだぞ。忘れるな…)」
前世の都事(ジュンジェ)は友人宅を訪れていた。
友人は言った。
「そんな頼みごとをするなんて…まるで今生の別れだ」
「…今日は何日だ?」
彼は傍らの医員に訊ねた。医員は答える。
「12月11日です」
シアから届いた資料にジュンジェは目を通していた。
―12月11日、数え年にして27歳という若さで…死去。
「そう決まっているなら…」ジュンジェの意識の底に出てきた都事は小さく笑みを浮かべる。「私の宿命であろう」
黙っている友人に向けて彼は続けた。
「私たちの再会も決まっている。またよき友になれる」
そして彼は白装束で流刑の地に向かった。
彼を流刑地へと送り届ける官吏は前世のホン・ドンピョだった。
「まもなく出港します」
「そなたでよかった」
前世のホン・ドンピョは時の法に忠実な官吏だった。
「恩義を感じたのは昔のこと、私は責務を果たします」
都事は黙って彼の肩に手を置いた。
彼も船上で運命を共にするひとりだったのか…?
ジュンジェは魘された。
暗い海の空にたくさんの風灯が上がっている。
運命の12月11日―流刑地に向かう海でどんな出来事があったというのか…。
★★★
流刑地に向かうあの男を助けるために人魚はここへ必ずやってくる…!
無数に飛ばした風灯を見上げ、かがり火を焚き人魚を生け捕るための支度にかかる部下たちの作業を見守りながら、領主のヤン氏はほくそ笑んだ。
(これであの男への復讐を遂げながら人魚を捕獲できる。。あとは人魚の流す涙で宝の山を築き、都の貴族や役人たちも意のままに操れる。一石三鳥というものだ…ふっふふふふふ)
風灯の明かりに照らされる海に向かって人魚が泳いで来る。
「(セファ…来てはいけない。来ては…)」
深く降りた心と夢の交差する世界でジュンジェは魘された。
「(来ては…来てはいけない…)
しかし、彼(タムリョン=ジュンジェ)の必死の思いは彼女に届かない。聞こえない。
ただ、彼に会いたい一心でセファは風灯の海へと向かう。
夢に魘され、心の格闘を続けるジュンジェをチン・ギョンウォンは静かに見守っている。
マ・デヨンは自分のかかる医院のドアノブに手袋をした手をかける。
白装束のタムリョンを乗せた船は穏やかな海を進む。彼は上空を見やった。出ていた円い月は雲間に隠れる。
ふと、船の遠ざかる逆方向に海を照らす風灯が見えた。数えきれないほどの数だった。
タムリョンの表情は強張った。胸騒ぎを覚えて立ち上がる。
自分が出発した後を狙って、あの風灯の下には領主たちの船がセファを捕獲しようとしているのでは…?
かがり火を焚いてヤン氏らは人魚が現れるのを船上からじっと待ち構えた。
都事に会うため、人魚は必ずやって来る…!
ヤン氏の読みは当たっていた。やがて風灯に照らされる海面にうごめくものを感じて目をこらした。
人魚だ!
どよめく配下たちをヤン氏が制す。
船の下に現れたのは人魚に間違いなかった。ヤン氏は配下に合図を送る。
「今だ、やれ!」
船上からさっと網が打たれる。
空に浮かぶおびただしい風灯を見ているうち、タムリョンに胸騒ぎが走った。ふと思い起こした。自分が乗船を命じられた時、かがり火を持ち港の磯伝いを進んでいく一団がいたことを…。
タムリョンは船の指揮を執る官吏に声をかけた。
「引き返せ!」
「何を言っておられます?」
管理をじっと見てタムリョンは言った。
「引き返してくれ。自分にはやることが残っている」
「できませぬ」
法に忠実な官吏は答えた。
「私の愛する者の命がかかっている」
「恐れながら、それはできませぬ」
「私も承服できぬ」
タムリョンは信念で言った。
タムリョンは官吏の腰の剣を抜いた。首元に突き付けた。
官吏の部下はタムリョンに剣を向けた。
二人はしばし睨み合った。
「私の用がすめばすべて従うと約束する」
「…」
「頼む」
「…」
「あの者を救えねば―生きる意味はないのだ」
タムリョンの言葉に打たれ、官吏は部下たちに剣を下ろすよう命じた。