
アンナはチョルスに連れられて病院に向かった。
病院で医者に診てもらって帰宅した。チョルスはアンナを自分の部屋に連れて入った。
アンナをベッドに座らせてから医者から聞かされた話を説明する。
「記憶が戻ってくる時に表れる症状らしい。まだ痛むか?」
「すごく…気分が悪かった。何か…大事な記憶だった気がする」
「少しずつ思い出してくるさ。今日はゆっくり休んだらいい」
「ええ、そうする」
上着を脱ごうとする時、アンナはふと気付いた。
「私、携帯どうしたんだろう?」
「…俺が探してくるから今日はもう寝ろ」
疲れているらしく、アンナはチョルスの言葉におとなしく従った。チョルスのベッドで横になった。
アンナの気分はまだ混乱が続いているようだ。しかし、自分が立ち入れる問題でもない。そのままにしておいてやろうと明かりを消し、ドアを閉めた。
憂鬱な気分で酒を飲んでいるビリーのところにチャン・チョルスから電話が入った。アンナの携帯に対してだ。
出ようか出まいか迷った末、着信を絶ちきる。
ビリーの気持ちは複雑だった。
あの場面、自分の方が早く助けに入れた。しかし、行動を起こせなかった。
「なぜ、先に助けに入れなかった?」
ビリーはチョルスより早く助けられなかった自分を悔やんでいた。
「彼女を守らなきゃいけないのは自分なのに。確か、先に手を放したのも僕だったが」
アンナの携帯を開く。登録された写真画像を引っ張り出す。アンナの日常生活にまつわっている女や犬、子供たちが次々と出てくる。そしてチョルスが出て、アンナが出てくる。
アンナの写真を眺めているうち、ビリーの目は次第に潤みだす。ついには涙が流れ落ちる。
ビリーは笑顔のアンナに訊ねかける。
「今、幸せか? とても幸せそうに見える。僕たちは一度も幸せだったことはなかった」
すると目の前にアンナが戻ってきて座っている。今のアンナではない。昔のアンナだ。
いや姿は昔のアンナだが、心は今のアンナだ。
そのアンナが訊ねてくる。
「なぜ今になって泣いてるの?」
ビリーはアンナを見つめた。
「後悔してるんだ。君だって笑顔を見せられる人だと、もっと早く気付けなかったことを悔やんでるんだ」
「もう遅いわ。あなたは、私を捨てたのよ。私は許さない」
「全部、僕が悪いんだ。すまない。怖くて、君を取り戻しにいけない自分が憎い」
ビリーは涙ながらに答えた。涙は次から次に出てきた。
script type="text/javascript" src="//translate.google.com/translate_a/element.js?2db9cb=googleTranslateElementInit"></script> google-site-verification: google3493cdb