雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ ファンタスティック・カップル 第12話(15)




 アンナはチョルスに連れられて病院に向かった。
 病院で医者に診てもらって帰宅した。チョルスはアンナを自分の部屋に連れて入った。
 アンナをベッドに座らせてから医者から聞かされた話を説明する。
「記憶が戻ってくる時に表れる症状らしい。まだ痛むか?」
「すごく…気分が悪かった。何か…大事な記憶だった気がする」
「少しずつ思い出してくるさ。今日はゆっくり休んだらいい」
「ええ、そうする」
 上着を脱ごうとする時、アンナはふと気付いた。
「私、携帯どうしたんだろう?」
「…俺が探してくるから今日はもう寝ろ」
 疲れているらしく、アンナはチョルスの言葉におとなしく従った。チョルスのベッドで横になった。
 アンナの気分はまだ混乱が続いているようだ。しかし、自分が立ち入れる問題でもない。そのままにしておいてやろうと明かりを消し、ドアを閉めた。


 憂鬱な気分で酒を飲んでいるビリーのところにチャン・チョルスから電話が入った。アンナの携帯に対してだ。
 出ようか出まいか迷った末、着信を絶ちきる。
 ビリーの気持ちは複雑だった。
 あの場面、自分の方が早く助けに入れた。しかし、行動を起こせなかった。
「なぜ、先に助けに入れなかった?」
 ビリーはチョルスより早く助けられなかった自分を悔やんでいた。
「彼女を守らなきゃいけないのは自分なのに。確か、先に手を放したのも僕だったが」 
 アンナの携帯を開く。登録された写真画像を引っ張り出す。アンナの日常生活にまつわっている女や犬、子供たちが次々と出てくる。そしてチョルスが出て、アンナが出てくる。
 アンナの写真を眺めているうち、ビリーの目は次第に潤みだす。ついには涙が流れ落ちる。
 ビリーは笑顔のアンナに訊ねかける。
「今、幸せか? とても幸せそうに見える。僕たちは一度も幸せだったことはなかった」

 すると目の前にアンナが戻ってきて座っている。今のアンナではない。昔のアンナだ。
 いや姿は昔のアンナだが、心は今のアンナだ。
 そのアンナが訊ねてくる。
「なぜ今になって泣いてるの?」
 ビリーはアンナを見つめた。
「後悔してるんだ。君だって笑顔を見せられる人だと、もっと早く気付けなかったことを悔やんでるんだ」
「もう遅いわ。あなたは、私を捨てたのよ。私は許さない」
「全部、僕が悪いんだ。すまない。怖くて、君を取り戻しにいけない自分が憎い」
 ビリーは涙ながらに答えた。涙は次から次に出てきた。



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