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ジュンソクらはアンナの分の菓子を残して帰りを待っていた。
アンナのもとに駆け寄った。
「これ、おばさんの分だよ」
お盆にのった菓子を差し出す。アンナは菓子をつまんでしげしげ眺めた。
「変な形だわ」
「兄ちゃんが作ったんだ」とユンソク。
「でもつぶしちゃった」とグンソク。
「おばさんへのプレゼントだよ」とジュンソク。
アンナは菓子をもう一度見た。
「形は変だけどおいしそうね」
菓子を口にもっていく。菓子はアンナの口中で乾いた音を立てる。
三人はアンナの嬉しそうな表情を待っている。
「お玉は隠した?」
三人は口を揃える。
「うん」
「おじさんは知らないよ」とユンソク。
「帰ってるの?」
アンナは家中に入ってくる。
チョルスは居間で何かやっている。
声をかけるとチョルスは振り返って答えた。
「すきま風が入らないように修理したんだ。もう大丈夫だ」
それを聞いてアンナは気分をよくする。その時、目に飛び込んだものがある。
「あら?」
アンナは自分の寝床に歩いていった。電気毛布のスイッチをつかんで訊ねた。
「これ、どうしたの?」
「それか…お前のアイデアを生かして熱線を埋め込んだ」
「ほんとに? じゃあ、ソファーが暖かくなるの?」
「そうだ。座って試してみろ」
アンナは座ってみた。感激した。お尻から暖かさが伝わってくる。
「本当だわ。あたたかい。チャン・チョルス、すごくいい」
アンナに誉められると自分も素直になれる。チョルスは得意げに言った。
「俺は南海の<冒険野郎だ>だ」
「何、それ?」
「何でもやれる人ってことさ。暖かくて気持ちいいだろ」
正直に嬉しさを伝えようとするアンナだが、急に気持ちが暗くなる。ここを出て行こうとしてる自分が顔を覗かせたのだ。心に決めたこと。だけど、その決心が緩むのを覚えていた。
アンナからリアクションがないのでチョルスは顔をあげた。
「どうした? 嬉しくないのか?」
「そうじゃなくて、温かすぎて―居心地が良過ぎて、ここから離れたくなくなるわ」
チョルスは笑った。
「毎日、くっついてればいい」
「…」
アンナはソファーにゆっくり身を横たえた。
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