雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ ファンタスティック・カップル 第13話(12)





 ジュンソクらはアンナの分の菓子を残して帰りを待っていた。
 アンナのもとに駆け寄った。
「これ、おばさんの分だよ」
 お盆にのった菓子を差し出す。アンナは菓子をつまんでしげしげ眺めた。
「変な形だわ」
「兄ちゃんが作ったんだ」とユンソク。
「でもつぶしちゃった」とグンソク。
「おばさんへのプレゼントだよ」とジュンソク。
 アンナは菓子をもう一度見た。
「形は変だけどおいしそうね」
 菓子を口にもっていく。菓子はアンナの口中で乾いた音を立てる。
 三人はアンナの嬉しそうな表情を待っている。
「お玉は隠した?」
 三人は口を揃える。
「うん」
「おじさんは知らないよ」とユンソク。
「帰ってるの?」
 アンナは家中に入ってくる。
 チョルスは居間で何かやっている。
 声をかけるとチョルスは振り返って答えた。
「すきま風が入らないように修理したんだ。もう大丈夫だ」
 それを聞いてアンナは気分をよくする。その時、目に飛び込んだものがある。
「あら?」
 アンナは自分の寝床に歩いていった。電気毛布のスイッチをつかんで訊ねた。
「これ、どうしたの?」
「それか…お前のアイデアを生かして熱線を埋め込んだ」
「ほんとに? じゃあ、ソファーが暖かくなるの?」
「そうだ。座って試してみろ」
 アンナは座ってみた。感激した。お尻から暖かさが伝わってくる。
「本当だわ。あたたかい。チャン・チョルス、すごくいい」
 アンナに誉められると自分も素直になれる。チョルスは得意げに言った。
「俺は南海の<冒険野郎だ>だ」
「何、それ?」
「何でもやれる人ってことさ。暖かくて気持ちいいだろ」
 正直に嬉しさを伝えようとするアンナだが、急に気持ちが暗くなる。ここを出て行こうとしてる自分が顔を覗かせたのだ。心に決めたこと。だけど、その決心が緩むのを覚えていた。
 アンナからリアクションがないのでチョルスは顔をあげた。
「どうした? 嬉しくないのか?」
「そうじゃなくて、温かすぎて―居心地が良過ぎて、ここから離れたくなくなるわ」
 チョルスは笑った。
「毎日、くっついてればいい」
「…」
 アンナはソファーにゆっくり身を横たえた。



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