雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「30だけど17です」(連載83)



韓国ドラマ「30だけど17です」(連載83)




「30だけど17です」第10話(取り戻したい時間)①


☆主なキャスト&登場人物


○シン・ヘソン➡(ウ・ソリ)
○ヤン・セジョン➡(コン・ウジン)
○アン・ヒュソプ➡(ユ・チャン)
○イエ・ジウォン➡(ジェニファー(ファン・ミジョン)
○チョ・ヒョンシク➡(ハン・ドクス)
○イ・ドヒョン➡(トン・ヘボム)
○チョン・ユジン➡(カン・ヒス)
○ユン・ソヌ➡(キム・ヒョンテ)
○チョ・ユジョン(イ・リアン)
○ワン・ジウォン(リン・キム)
○アン・スギョン(チン・ヒョン)


★★★ 

 ソリは途中で目を覚ました。リビングで玉ねぎの皮を剥きながら涙を流した。きっともっと泣きたい夜だったのだ。


 そんなソリの気持ちを慮ってウジンはソリの様子を見に来た。
 傍に歩み寄って涙を拭おうとするソリの手を握る。
 ソリは顔を上げる。
 2人は見つめ合った。ウジンは言った。
「その手で―拭っちゃダメだ」
「ああ、いえ…」
 ソリはウジンを見つめ返した。
「泣いてなんかいません。目が痛いだけ」
「…」
「玉ねぎが目に染みて…」
 ウジンはそっとソリの頬に手を伸ばした。


 ― 彼女と…一緒の時でした。一番怖かった瞬間も、一番心地よかった瞬間も、彼女がそばにいました。

★★★ 


 天井を見つめながらウジンはひとり思い返した。


 主治医である精神科医は訊ねた。
「混乱の理由は―2つの感情が衝突してるから? それとも」
「彼女が僕を刺激するんです」


― ぶっきらぼうだけど実はいい人なんですね。
― …。
― いい人だってことをわざと隠そうとしてるみたい。いつも目を背けてるんですね。私はおじさんの眼中にはない。
― …。
― でも、家を出ても恩返しのために私は会いに行きます。長く顔を合わすつもりですよ。


 それでも突き放して車に乗り込んだ自分を彼女の言葉は追いかけてきた。


― 私たち親しいでしょ? 私には情が湧いています。


 自分は涙をこらえながら車のハンドルを握った。アクセルを踏み込んだ。
 それでも彼女の叫び声は追いかけてきた。


― おじさん、待って! こんなに親しい仲でしょ―っ!


「僕に対する彼女の言葉や思いが―まっすぐに伝わってくるから…素直になれない僕を苦しめます」


― 僕なら見て見ぬ振りをする。僕は人との関わりを持つのが嫌なんだ。理由をいちいち説明するほど親しい仲じゃない。


「逃げようとする僕を―彼女は振り返らせようとするんです」


 ウジンは天井を見つめた。三日月を映し出す天窓を見やった。


「見て見ぬ振りして生きるのが楽なのに、このままでいいと思ってたのに…」
 
― 次は自力でこの窓を開けてください。手のこの角度を忘れてはダメですよ。


「そんな彼女のせいで心が揺れるんです。なぜか彼女のことは拒めません…」
 ウジンは身体を起こした。意を決して部屋を出た。
「彼女は絶えず、呼びかけて来るんです。”心を開け。殻を破って出てこい”と。それは間違った生き方だと思わせるんです…」
 
 ウジンは階段の踊り場で足を止めた。玉ねぎの皮を剥きながら彼女は泣いているように見えた。
 ウジンはそっとソリに歩み寄った。あふれ出る涙を拭おうとする彼女の手をつかんだ。
 2人の目は合った。
「その手で―拭っちゃダメだ」
 ソリは手を引っ込める。
「泣いてなどいません。目が痛いだけです」
「…」
「玉ねぎが目に染みて。つい…」
 涙の潤んだ顔を見られるのがいやでソリは目をそらす。
 ウジンは腰を沈めた。その顔に手を伸ばした。頬に手のひらをあてがう。軽く力を入れて振り向かせる。
 2人は再び見つめ合う。ウジンは左手の親指でソリの目元の涙を拭った。右手の親指でもそうした。
 両頬に両手をあてがったまま、ウジンはソリを見つめた。二人は黙って見つめ合った。
 ウジンはそっとソリに顔を近づける。
 その時、ウジンは「あっ」と声を出す。片膝が積み上げた玉ねぎの山を崩したのだ。
「いけない」
 玉ねぎを集めようとするウジンにソリは言った。
「私が拾います」
「いや、一緒に」
「あっ」
 玉ねぎのガスが染みてウジンは手指を目にやる。
 ソリが叫ぶ。
「こすったらダメ!」
 しかしこすった後だ。
「ほら、痛いでしょ?」
「いや、大丈夫〜、じゃなかった。目が痛い!」
 ソリは悲痛な声になる。
「玉ねぎ触った手で目を触っちゃダメなのに〜、イヤだ、私も目が!」
「早く、目を洗おう」とウジン。
 身体を起こし合った2人は思い切り頭をぶつけあった。額を押えてウジンは叫んだ。
「イタタタっ! 石頭だな」
 身体を起こしてソリは返す。
「石頭ですみません」
 2人は頭を押え、目をつぶったまま洗面所に向かおうとする。
 ウジンが言った。
「そっちじゃない。こっちだ、こっち!」
 2人は手をつないで洗面所に向かう。転んでは起き上がって洗面所に辿り着いた。
 トックは犬も食わない2人の珍騒動を呆れて眺めていた。


 顔を洗って二人は落ち着きを取り戻した。
「やっと人心地ついたわ」
「ほんとひどい目に遭った」
 2人は顔を見合わせた。屈託のない笑い声を何度も交わし合った。
「冷たい風に当たるといい」
「外は雨ですよ」
 ウジンは外の気配を窺った。
「やんだみたいだよ」
「すぐにやみましたね」
「そうだね」
 2人は外に出て雨上がりの夜空を眺めた。
 ソリは訊ねた。
「どうして一階に?」
 夜空を見つめてウジンは答えた。
「お礼を言いたくて」
「…」
「ヒスの言うとおりです。今日はありがとう」
「…」
「本心です」
 ソリは下を向いた。
「大したことでもないのに」
「…手は大丈夫?」
「ええ。…私、嘘をつきました」
「…?」
「泣いたのは玉ねぎのせいじゃないんです。監督が演奏する姿を見て―羨ましかったんです。そして悔しかった」
「…」
「”私も素敵なドレスを着て舞台に立てたはずなのに”、”何事もなければ”、って、そう考えると涙が止まらなくて」
「いったい、君に何が…」
 その時、風で木立がざわめいた。
 ソリはウジンを見つめた。ウジンの顔を見つめたまま歩み寄る。ソリの顏は間近に迫ってくる。
 顔が触れんばかりになった時、ウジンは思わず待ち人のような表情になった。思わず目をつぶった。
 ソリの視線は時計の12時の方向に向いた。右手指がウジンの頭髪から何かをつかんだ。
 それをウジンに見せた。
「髪に花びらが」
「…」
 ソリが見せたのは百日紅の花びらだった。
 勘違いしたウジンは照れくさそうに頷いた。空を見上げて言った。
「夜だから真っ暗だ」
 ソリも空を見上げた。
「星も見えない」
「…」
「でも、空気は澄んでる」
 横を見やるとソリは少し動いて背を向けている。百日紅の木を見上げている。
「大きくなったわ」
 感無量の声で呟いた。 




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