雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ ファンタスティック・カップル 第10話(6)



 ビリーは続けた。
「そいつが外で僕のことを言いふらしてるようだ。”妻が死んで全財産を手に入れた”などと」
 ヨングはうろたえた。知らない振りを通すしかない。
「パングか・・・名前ではないな」
 ビリーは後ろからヨングを見た。
「あだ名かな?」
 ヨングは首をブルブル振った。
「パングがどういう人間か調べてくれ。うっとうしいヤツだ」
 ビリーはヨングに言いつけて行ってしまった。
 その背に向かってヨングは小さな声でわびた。
「私がそのパングです。社長・・・すみません」

 
 チョルスは心当たりの人物に会っていた。
「本当にあの船で仕事を?」
「ええ。船主は海外に住む韓国人で・・・ああ、まったく性格の悪い人でした。金持ちだからかな・・・?」
 チョルスは封筒から写真を取り出した。
「それはこの人ですね?」


 ジュンソク、ユンソク、クンソクの三人兄弟が学校から帰ってきた。
「ただいまー!」
 一人はコンコン咳こんでいる。
 テーブルを拭いていたアンナが三人に訊ねる。
「咳がひどいね。具合悪い?」
「風邪引いたみたい。病院に連れていって」
「わかった。行くわよ」


「では、この人には見覚えがないんですか?」
 チョルスの質問に相手は写真をとりだした。
「私が働いていたのは・・・この船です」
 チョルスは船の写真を手にした。
「この船は・・・似てるけど違いますね」
「大型クルーザーは珍しいですし・・・私が調べてみますよ」
「よろしくお願いします」
 写真を返してチョルスは言った。
「兄貴、どうする?」
 ドックが訊ねる。
「失踪者センターに行ってみよう」
 二人は立ち上がった。ソウルの失踪者捜索センターの窓口に出向いた。
 知る限りのデーターと写真を添えて担当者に会った。相手の話を聞いた。
「この方の関係者が・・・積極的に捜してくれないと難しいですね」
「・・・何かあったら、ここにご連絡をお願いします」
 チョルスは名刺を渡して言った。
「身寄りのない人を保護してるんですか? でしたら、施設を紹介しましょうか?」

 結婚式の記念写真をビリーは見つめた。
「チャン・チョルス・・・」
 こいつのせいで思うようにならない。ビリーは苛立ちをぶつけた。
「アンナを捨ててくれ。そうすれば、僕が連れ戻すことが出来る。捨てろ。捨ててくれ」

 
 アンナは風邪を引いた子供たちのことをチョルスに報告する。
「注射を受けて今は寝てるわ。今日は戻らないの?」
 チョルスは失踪者捜索センターの玄関口に立っている。
「まだ用があるんだ。明日には戻るから、子供たちを頼んだぞ」
 
 電話は切れた。
 子供たちの咳は止まらない。
 アンナは子供たちに布団をかけてあげる。額に手をおいて熱を測る。大丈夫だろう、と思って自分の寝床に戻った。
 寝入りばなのところでジュンソクがアンナを起こしにきた。
「おばさん、起きて」
 アンナは目を開ける。
「どうしたの?」
「グンソクがつらいみたいだ」
 アンナは子供部屋に駆けつけた。
 子供たちの咳き込みがひどくなっている。
 アンナは焦った。
 グンソクはうなされている。そばに寄り添った。
「注射を受けて、薬も飲んだのにどうして? 泣かないで。ほら、泣かないで」
 アンナはチョルスに電話を入れた。
「熱は何度?」
「わからないよ。どうすればわかるの?」
「引き出しに体温計がある。探してみろ」
 アンナはチョルスの部屋に走りこんだ。



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