雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「30だけど17です」(連載202)





韓国ドラマ「30だけど17です」(連載202)




「30だけど17です」第23話(新たな旅立ち)⑧


☆主なキャスト&登場人物

○シン・ヘソン➡(ウ・ソリ)
○ヤン・セジョン➡(コン・ウジン)
○アン・ヒュソプ➡(ユ・チャン)
○イエ・ジウォン➡(ジェニファー(ファン・ミジョン)
○チョ・ヒョンシク➡(ハン・ドクス)
○イ・ドヒョン➡(トン・ヘボム)
○チョン・ユジン➡(カン・ヒス)
○ユン・ソヌ➡(キム・ヒョンテ)
○チョ・ユジョン(イ・リアン)
○ワン・ジウォン(リン・キム)
○アン・スギョン(チン・ヒョン)

★★★


 ユ・チャンはボート部への勧誘を受けた監督の訪問を受けた。
「まだ決めていません」チャンは答えた。「今月中に御返事します」
 監督は頷く。
「いい返事を期待してるよ」
 監督が去った後、ボート部の連中がチャンのそばにやってきた。
 ドクスやヘボムもそこにいる。
「ソンム市役所の監督だったな」
「勧誘受けたのか?」
「羨ましいわ」
 そこに後ろで声がした。
「何してるんだ」
 やって来たのはコーチだった。部員らを叱咤する。
「気を抜かずに練習を始めろ」 
 部員らはさっと散り、その場で準備運動を始める。
 コーチはチャンの傍らに立った。
「何だか深刻そうだな」
「プロ入りすべきかどうかで迷ってます」
「…体育大学にせよ、プロにせよ、どっちが悪いということじゃない。好きな方を選べ」
「…」
「どれどれ」
 コーチは繁々とチャンを見た。
「さすが、俺の教え子だ。成長したな」
 チャンの肩を叩いて部員らの指導に入った。
 チャンはため息交じりに空を見やった。


 ソリはキム・ヒョンテと会った。
 2人は並んで病院の庭先を歩いた。
「そうでないことを願ってたのに」
 ヒョンテは足を止めた。ソリを見た。
「きっと天国に召されたよ」
 知らないフリを通すヒョンテにソリは黙って頷く。
 歩き出したヒョンテは思い直して足を止める。
「それから…ごめん」
「…」
「嘘をついて」
 ソリは首を横に振る。
「いいの。― 私のためだったのは分かってる。ありがとう」
「みんな去って―、君には僕しかいないと思ってたんだ。目覚めたら、当然、僕のそばにいてくれるものと」
「…」
「だから、君に再会した時は、正直言って恨めしかった」
 
『― なぜ僕より先に、彼らに出会ったのか。なぜ僕より、彼らの方が気楽なのか ― それが悲しかった』


 ソリはヒョンテを見た。
「でも今は彼らに…いや、君の家族たちに感謝してる」
「…」
「君があの家に行かず、彼らに出会ってなければ、君の行方を知ることも出来なかった」
「…」
「正直、まだ未練はある」
「…」
「”もしも、あの時”と―何度、後悔したか分からない」
 ヒョンテはソリを見つめ、その目を横にそらした。
「でも、もう終わりにするよ」
「…」
「生き方は変わったが、医者の仕事は好きだ」
 ソリの表情から笑みが浮いた。
 ヒョンテはソリを見た。
「覚えてる? 僕は歌手になると言ってたよな。こうだ」
 左腕を振り上げた。
 ソリはすかさずリアクションを取る。ヒョンテにフリを合わせる。
「ヒップホップ精神―イェーイ!」
 呼吸を合わせ、心から笑顔を交わし合った。
 
「会議はここまでにしよう」
 代表のヒスは言った。
 あらためてウジンを見た。
「音楽療法の音楽会の件はどうなってるの?」
 戸惑いを見せつつ、ウジンは答えた。
「テーマを決めるために、今日、下見に行くよ」
「そうだ」
 チン・ヒョンが切り出した。
「事務所ホームページ用に、ソリさんのプロフィールを教えて」
「プロフィールですか?」
 ソリは頬から首元に手を滑らした。
「載せるほどのものはなくて…」
「いいんです。簡単な学歴とうちでの作業経験を…」
「何言ってるの」
 ヒスが横から言った。
「実力者なんだから、載せなくていいわよ」
 ウジンはすかさず頷く。
「クラシックの知識は誰にも負けてないんだから」
 ウジンは席を立った。
「ソリさんも一緒に行こう」
 ソリは二つ返事で立ち上がった。




 ウジンは自分の心療医の許を訪ねた。この話は心療医から持ち掛けられ、自身の経験に即し膨らませて来ていたテーマだった。
「会議の内容を参考にテーマを決めます」
「よろしく頼む」
 心療医は短く頷いた。
「ところで…、以前から自慢していたのは、この女性かい?」
 ソリは戸惑って訊ねる。
「自慢ですか?」
 心療医は淡々と説明した。
「いつもの空が一緒だと青く見えて」
 ウジンは鼻に手をやりうつむいてしまう。
「特別な物でなくても一緒に食べると美味しいとか…」
 ソリは嬉しそうにウジンを眺めやる。
「せ、先生、患者との会話はシークレットな部分です。みだりに漏らしてはいけません」
「どうかな…、もはや、治療が不要な人を患者とは言えないだろ。いったい、どこにそんな患者がいるんだ?」
 ソリはウジンを愉快そうに見やっている。
 そんなソリを見やり、ウジンは笑顔になった。
 今の自分にはあの頃の自分しかいないのを感じ取っていた。ソリの姿を追っていた頃の自分しか…。


「明るい笑顔だ…」
 ソリの映像を動画で楽しんでいるうち、ウジンは何やら思い当たるものを感じた。
「この感じ、どこかで見たな…」
 書物を開いて眺めまわしているうち、とある言葉に辿り着く。
「”時に人は音楽に癒され、音楽に感動を覚える””音楽療法士に必要なのは音楽に対する愛だ”」
 ウジンはソリの言っていた言葉を思い出した。


― 音楽を楽しんでる時間が、私には大きな癒しになりました。どんな形でも、音楽に触れていられるなら、それだけで幸せなんです。




 ウジンはその書物をソリに差し出した。
「これを読んで見て。君の探してた答えが見つかるかも」
 ソリは笑みを返した。傍らから同じ書物を取り出した。
「今日、音楽療法を見学したら、音楽祭のことや公園のおばあさんを―思い出したの」
「…」
「音楽には人を癒す力があると知って図書館で借りて来たのよ」
 ウジンは真剣な目をソリに向けた。
「勉強してみたら?」
 ソリの表情は沈んだ。
「音楽療法士になるには、たくさんの壁があるの」
「…」
「まず、大学院の卒業資格がいる。私は高卒認定試験から始めて、7〜8年はかかるのよ」
「7〜8年も?」
 ウジンは頭に手をやった。ソリの代わりにため息をついた。
「それは大変だな」
 ソリは決意を漲らせた。
「でも何か方法がないか調べてみるわ」




 その頃、ソリとの友情を深めたリン・キムはソリに誘いのメールを送ってよこした。
「ベルリンで音楽を再開してみてはどう?」


 迷っているソリにチン・ヒョンは言った。
「幻の留学を実現させるいい機会じゃありませんか」


 ウジンは言った。
「重要なのは君がどうしたいかだ」






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