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韓国ドラマ「30だけど17です」(連載24)

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韓国ドラマ「30だけど17です」(連載24)


「30だけど17です」第3話(期限付き同居の始まり)④


☆主なキャスト&登場人物


○シン・ヘソン➡(ウ・ソリ)
○ヤン・セジョン➡(コン・ウジン)
○アン・ヒュソプ➡(ユ・チャン)
○イエ・ジウォン➡(ジェニファー(ファン・ミジョン)
○チョ・ヒョンシク➡(ハン・ドクス)
○チョン・ユジン➡(カン・ヒス)
○ユン・ソヌ➡(キム・ヒョンテ)


★★★

 背を返したウジンに女性は話を続ける。
「あの~、私の話、聞いてなかったのかしら」
 ウジンは振り返る。
「私の家はヘイン洞の隣のヘソ洞です」
「ヘソ洞…いい所にお住まいですね。では失礼します」
 ウジンは頭を下げた。
 ウジンのそっけなさに女性は笑った。
「冗談がお上手だこと」
 ウジンが車に乗り込んでエンジンをかけると、女性は助手席側に回った。ドアノブに手をかけようとするのを無視してウジンは走り去った。
 置き去りにされてクライアントの女性は呆れた。
「あの人~、何様のつもりなの?」
 そこに事務所に戻ったカン・ヒスが駆け寄った。
「キム監督」
「えっ、ああ」
「食事、食事は私としましょ」
「ええ」
 走り去った車の方角に目をやる女性をヒスは必死に宥めた。
「何がお好きですか?」
「ええ、私は…」
 プライドを傷つけられ、怒りと不満のくすぶる女性を強引に食事に誘い
ながらヒスはぼやいた。
「ああ、もう~、コン・ウジンの奴、いつもああなんだから…!」 

★★★

 ヴァイオリニストのリン・キム(テリン)はヴァイオリンを手にポーズを取った。
 カメラマンはパチパチ写真を撮った。

 写真撮影の後、彼女は取材に応じた。
 女性記者は質問した。
「帰国独奏会のあとの計画は?」
「それは…まだ公にできないですけど、面白い企画があります。詳細が決まったら―」
 リン・キムは声を潜めた。顔を近づけた。
「真っ先にお教えします」
 記者はくすくす笑って質問を続けた。
「来学期からはソウル音大の最年少教授ですね」
「…」
「才色兼備の実力者であるリン・キムさんに、ライバル的な存在の方はいますか?」
「はい?」
 テリンは戸惑った。厭な記憶を揺さぶられた。
 今でもすぐに脳裏の片隅をよぎる子がいる。…
 テリンは遠い記憶の世界に引きずり込まれた。
 
 
「”ヴァイオリン協演の合格者は―キム・テリンさん”」
 選ばれたのは自分だった。
 だが、自分の慕うヴァイオリニスト、シム・ミョンファン先生はウ・ソリという子に声をかけていた。協演の相手にその子を選んでいたのだ。
「君、私と協演しないか? 第2バイオリン」
「わぁ―っ、本当ですか? やります。やらせてください」
 笑顔でやりとりするその時の光景は今も目の奥に焼き付いて離れない。トラウマとなって記憶の襞に染みついている。


 リン・キムはそれらのくすぶる記憶を遮断して答えた。
「私は音楽が好きなだけで、他の人は気にしません。自分を誰かと比べたことはないです」




 ”リン・キム 帰国独演会”のポスターの張りだされた建物のそばを通り、ソリはバス停のベンチに腰をおろした。
 一日中歩き回ってクタクタだった。
 脚の筋肉を叩いたり揉んだりしてほぐす。
 通りをウジンの車が走ってきて赤信号で止まる。
 2人はそれぞれの世界に浸り、ニアミスが起こっていることに気づかない。

 顔を上げたソリはリン・キムの大きなポスターを目にするが、それが誰かにも気づかない。

 ソリの存在に気づいたのはウジンの車から顔を出している老犬のトックだけだった。
 バス停に腰をおろしているソリを見つけてトックはクンクンと悲しそうに鳴いた。
「トック、どうしたんだ?」
 トックに問いかけるウジンはバス停のベンチに腰をおろしてるソリには気付かなかった。




 ソリはリン・キムの”帰国独演会”のポスターを目にしながら、バイオリンの練習で明け暮れていた遠い日々を呼び覚まされた。
 あわてんぼうの自分を追いかけ出てきて叫ぶ者がいる。
「ソリ、ダメよ。それは練習用よ」
 叔母の懐かしい声だ。
「違うの。今日は雨が降るらしいからこれにしたの。行って来る」


「もしかして…」
 ”独演会”のポスターにいろんな記憶を触発されてソリは呟く。立ち上がる。
 信号は青に変わった。しきりに鳴くトックを宥めてウジンは車のペダルを踏んだ。
 ウジンの乗った車は滑るようにソリの視野から消えていった。


 ソリはウジンの車の走る方向に向けて走り出した。
 バイオリン、バイオリン…!
 口の中で呪文のように唱えながら、ソリが走ってやってきたのは昨日現在の住人に追い出された元の家だった。
 表玄関の扉は開いている。
「しつれいしま~す…」
 小さな声を出して、ソリは門内へと入っていく…。


 一階のリビングルームにはユ・チャンとトックがいた。
 そばから離れたトックを呼びながら、届いたピザを頬張ろうとしていたら、内玄関をあけてソリが顔を覗かせた。
「すみません」
「あれ?」とチャン。
 すぐさまトックが尻尾を振ってソリに走り寄った。
「ペン!」
 ピザをテーブルに戻してチャンは駆け寄る。
「また来たの?」
「…」
「あっ、いや、叔父さんの転居先は見つかった?」
「まだ、分かりません」
 ソリは立ち上がる。
「じつはお願いがあります。私の荷物が残ってないか確認させてください」
「残ってる? まさか…、うちの祖父が処分したはずですよ」
「でも、残ってるかも…3分でいいからお願いです。確認させてください」
 チャンは頭に手をやった。
「困ったな。ミスター・コンが怒るかも…」
 チャンは他に目をやる。
「シャワー中だよな…」
 ソリに緊張の目を向ける。
「3分だけですよ」
「はい、3分だけ」とソリ。
 その時、ウジンの声がした。
「ああ、カン代表…」
「あれ、もう出てきたのか」


 
「もっと顧客を大事にしてよ」
 ウジンの握った携帯からは、カン・ヒスの愚痴が流れ出た。

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