チョルスは封筒を差し出した。
「わかった。きっちり倍にして返せよ」
封筒をおしつけ、あとは何も言わずアンナの前から離れた。
チョルスは会社で売り上げの計算をやった。
「ああ、もう!」
舌打ちした。
「何度やっても計算が合わないな」
ドックがチョルスのそばにきた。
「兄貴が勘定を間違えるなんて珍しいな」
「ああ、苛々する」
チョルスは目をつぶり、鼻に手をやった。
「ドック」チョルスは言った。「サンシルはほんとにひどいやつだ」
ドックを見た。
「”家を出る時に清算する”って言ってる。人間関係が清算できるか?」
ドックはちらと天井に目をやった。
「金で始まった関係なら可能かもな」
「しかし、あまりにも打算的だ」
チョルスは立ち上がった。
ほんとに腹を立ててるのか?
ドックは首をかしげた。
「二人の関係は何が何だかわからないや・・・?」
この時、ドックの携帯が鳴った。
ヒョジョンからだった。
「何だ? この女も理解に苦しむやつだな。いったい、どうしたっていうんだ?」
ドックはヒョジョンの部屋に出向いていった。
「トイレの修理から電球の交換までありがとう」
「礼なんかいいですよ。仕事ですから」
そう答えながらドックは蛍光灯をつける。
「揺れるから押さえてて」
(牛100頭だものね…)
ヒョジョンは嬉しそうにつぶやいた。
「しっかり押さえるわ」
両手でドックの腰に抱きつく。ドックはバランスを失って椅子から落ちた。そのままヒョジョンの身体にのしかかるように倒れた。
カンジャは雪が降ってくるのを待ち続けている。雪が降ってくれば自分の恋がかなうかもしれないと思っているからだ。
「雪が降らなかったらどうしたらいいかな?」
「私、ドックさんと付き合うわ」
ドックの誘惑に成功したと思っているヒョジョンはユギョンに宣言した。
「私に田舎暮らしは似合わないだろうけど…農場の奥様ならいいわ」
ヒョジョンの嬉しそうな顔を見てユギョンはエールを送った。
「よかったわね。私も応援するわ」
「そうだ、ユギョン」
ヒョジョンはコーヒーを飲むのを中断した。腰をおろした。
「彼に聞いたんだけど、チョルスさんはあの女に償うため仕方なく面倒を見てるそうよ」
「そうなの?」
ユギョンはちょっと意外そうにした。それならいけるんじゃないかという顔をしながらコーヒーを飲んだ。
アンナが散歩しているとユギョンが向こうからやってくる。めかしこんだ姿だ。
二人はお互いに気付き、反発心をたぎらせながら歩み寄った。
鉢合わせの格好で止まった。
「花束女、あいにくだけどチョルスは不在よ」
「わかってるわ。お姉さんに会いにきたのよ」
「”お姉さん”?」
「ちゃんと呼ぼうにも名前がないでしょ? 私より年上だし、お姉さんと呼ぶことにするわ」
アンナは舌打ちした。
「そうね。カンジャと同じようなものだし、そう呼んでくれてもいいわ」
「私はお姉さんに謝りにきたの。今まで誤解があって嫉妬してた。あなたと彼は特別な仲だと思ってたの」
「…」
「誤解しててごめんなさい」
皮肉と感じたアンナはユギョンを睨みつけた。
口が曲がるほど面白くない。
ユギョンの皮肉っぽい言動は続く。
「早く記憶が戻るといいのにね。そんな薬があったら買ってあげたいくらいよ。記憶が早く戻るよう頑張ってくださいね」
「花束女!」
アンナはUターンしだしたユギョンを呼び止める。
ユギョンはシラーッとした顔で振り返る。
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