韓国ドラマ「青い海の伝説」第15話③
韓国ドラマ「青い海の伝説」第15話②
★★★
「それから…それからどうなったの?」
ジュンジェはその先を話せない。目を潤ませてセファを見つめた。
「何が繰り返されるの?」
「その二人は」
ジュンジェは苦い過去を封印して口を開く。
つかの間だったが幸せだった日々を思い起こして…。
―― 柿を二つ握ってタムリョンが部屋に入って来る。
「そなたの好きな柿だ」
「外は雪でしょう?」
「ああ」
タムリョンはセファの手を引く。開き戸を押し、降りしきる雪をセファに見せる。雪を一緒に眺めながら二人は幸せに浸った。
セファを見ながらジュンジェは思った。
(あの時のタムリョンは俺だった。そしてシムチョンお前もたぶん…)
ジュンジェは答えた。
「二人は…幸せにくらしたよ」
「…」
「病気もせず、怪我もせず、子宝にも恵まれてな」
ほっとした顔でセファは頷く。
「末永く幸せに暮らしたんだ」
「そうだったの」
「ああ、そうだ―俺が見た二人の結末だ」
セファは伝う涙をそっと拭う。
「なぜか涙が出ちゃう。どうしてなのかな…?」
ジュンジェはセファの手を引く。
「行くところがある」
★★★
次にジュンジェが連れて行ったのは、男と人魚がキスする場面の描きこまれた壺の展示された場所だった。
壺を見てセファはすぐにジュンジェを見た。
ジュンジェは説明する。
「男は俺たちの夢を見た」
「だけど、なぜ不安なの?」
「えっ?」
「幸せな結末なのに…」
ジュンジェは自分のした話の矛盾に気づかされた。
「ああ、それか…」
ジュンジェは頭に手をやる。
「繰り返されると問題があるの?」
「大声で話すと他の人に迷惑だ」
周囲を見回しセファは応じる。
「話を聞く人はどこに?」
周囲に人はいない。ジュンジェは咳払いを一つする。
「何が不安なのよ?」
「その時とは状況が違う」
ジュンジェは大きな声になった。
「何が?」
「お前が言っただろ。ここにいたら―死ぬかもと…」
「それはあなたが私を愛してくれたら、死んだりなどしないわ。この二人もそうだったんじゃないの?」
「僕はこいつじゃない」
「どういうこと?」
「人の気持ちというのは、じつはこの世でもっとも移ろいやすい」
「…」
「だから、大恋愛しても別れたりする」
ひとつの嘘をつくろうためにジュンジェはどんどん饒舌になってくる。
「俺が思うにお前の場合は命がかかってるし…」
「だから不安なの?」
「そうだ。不安で仕方ない」
セファは”どこか変だ”のシラーっとした表情をする。
「どうした?」
「不公平だわ。私にはあなたの心の声が聞こえない」
ジュンジェはそっぽを向く。
「聞く必要があるか? 俺は誰にだってほんとのことしか言わない」
ジュンジェは優越感で先に立って歩き出す。
「悪口も聞こえるから気をつけろよ」
セファは黙って小走りにジュンジェを追いかける。
モ・ユランは昔の手帳を取り出しナム部長の奥さんに電話をかけた。
だがその電話番号は使われていなかった。
一日も早くジュンジェの消息を知りたいモランはため息をつきながらジンジュの屋敷内に戻る。
そんなモランをじっと監視してる車があった。
セファがジュンジェのところにやってきた。
「いいことを思いついたわ。こうしましょう」
「ん?」
「あなたが不安がるのは気の毒だし、私自身それがいやなの」
「だから?」
「すこしだけ記憶を消しました」
「何だ?」
「昨日の記憶だけ消してしまえば、私の命を心配しないですむわ」
「どういうことだ?」
「力を調節すればうまくいくわ」
「…?」
「大丈夫、やれそうよ」
「だから、何が大丈夫なんだ?」
「ずっと陸にいるから力は多少衰えてるけど、やってみるわ」
「…?」
「少しでいいのよ。半日分だけ」
「さっぱりわからん。いったい何を言ってるんだ?」
行こうとするジュンジェをなだめて言う。
「いいから目をつぶってて」
「ふざけるな。そうはいかん」
「痛くはないから」
「何言ってるんだ。近寄るな」
不安がって逃げようとするジュンジェを制してセファは言う。
「本当に痛くないから。私を信じて」
セファはギュッとジュンジェの両腕を制した。大きいジュンジェはセファに壁ドン状態にされてしまった。
「おい、何をする?」
何かやられそうになり、とっさに逃れる。
「やめろって!」
逃がさない。セファはジュンジェを追いかける。
屋敷内を逃げながらジュンジェはタイムをかける。
「おい、やめろ! ちょっ、ちょっと待て」
ジュンジェは必至で逃げ回る。
鬼ごっこみたいに走り出てきた二人に、リビングでくつろいでいたナムドゥとテオは”何事だ?”の目を送る。
「ちょっと待て…やめろよチンチャーっ!」
ジュンジェは大型TVの前でとうとう押し倒されてしまう。
「何やってんだ、あいつら…新手のスキンシップか? 昨日まで大ゲンカしてたっていうのに…」
二人のじゃれ合いを眺めてるのが嫌になったテオは見えない場所に引っ込んでしまう。
「この家から早く出て行きたいよ」とナムドゥ。
セファに最後まで抵抗しベッドに落ち着いたジュンジェに、天井裏からセファが声をかける。
「やっぱりダメ?」
「閉めろ」
セファはぼやく。
「半日分だけでいいのに…」
「例えば…俺が嫌がることをして心変わりしたらどうする?」
「簡単に心変わりする男を私が好きになるとでも? 一目見てわかったわ。命がけで愛するにふさわしい男だって」
「純粋過ぎたな」
「ん?」
― 海しか知らなくて純粋過ぎたわ。あの男が一番だと思い込んでた。
「分かったんじゃなくて、ただそう思い込んでただけだろ?」
「…」
「それと男前なんて…(珍しくもないのにナルシストにもほどがあるわ)俺がナルシストだとも言ってたな、おい?」
「あら、聞こえてた? あの時は腹が立ってたの。あなたが聞こえないフリをしてたからよ」
ジュンジェは思わずセファの方を見る。どういうことなのだ(?)、と。
「じゃあ、その記憶も消しましょ」
「おい、おりて来るなって」
セファはかまわず梯子を下りて来る。
「念のため、一週間分消しましょ」
制止するのを諦めたジュンジェは言う。
「そうだ。海辺で暮らすか? それか、お前一人で南の島に行けよ。南の海は暖かくて最高だぞ。たまには俺も遊びに行くよ」
「…何もしないから一緒に寝ましょ」
「本当よ。手をつなぐだけなんだから。信じられないの?」
「ああ、信じない。まったくな」
そう言ってジュンジェは頭から布団をかぶった。
セファは腕を組んだ。
「(騙されないわね)」
「聞こえてるぞ。やっぱり嘘だったんだな」
「…」
「子供の夢を裏切る不良人魚め、童話を読んでご先祖様について勉強しろ」
セファは諦めて部屋に戻ろうとする。
後ろからジュンジェは言う。
「(一緒に寝るから)絶対に消すなよ」
セファは喜んで振り返る。
「ええ、約束するわ」
ジュンジェはベッドの片側を開けた。
「勘違いするなよ。心臓がちゃんと動いているか確かめるだけだ」
ベッドに入ってきたセファをジュンジェは抱きしめる。
「問題なさそうだ」
「あなたと一緒だから」
そうしてひと夜が過ぎた。
「それから…それからどうなったの?」
ジュンジェはその先を話せない。目を潤ませてセファを見つめた。
「何が繰り返されるの?」
「その二人は」
ジュンジェは苦い過去を封印して口を開く。
つかの間だったが幸せだった日々を思い起こして…。
―― 柿を二つ握ってタムリョンが部屋に入って来る。
「そなたの好きな柿だ」
「外は雪でしょう?」
「ああ」
タムリョンはセファの手を引く。開き戸を押し、降りしきる雪をセファに見せる。雪を一緒に眺めながら二人は幸せに浸った。
セファを見ながらジュンジェは思った。
(あの時のタムリョンは俺だった。そしてシムチョンお前もたぶん…)
ジュンジェは答えた。
「二人は…幸せにくらしたよ」
「…」
「病気もせず、怪我もせず、子宝にも恵まれてな」
ほっとした顔でセファは頷く。
「末永く幸せに暮らしたんだ」
「そうだったの」
「ああ、そうだ―俺が見た二人の結末だ」
セファは伝う涙をそっと拭う。
「なぜか涙が出ちゃう。どうしてなのかな…?」
ジュンジェはセファの手を引く。
「行くところがある」
★★★
次にジュンジェが連れて行ったのは、男と人魚がキスする場面の描きこまれた壺の展示された場所だった。
壺を見てセファはすぐにジュンジェを見た。
ジュンジェは説明する。
「男は俺たちの夢を見た」
「だけど、なぜ不安なの?」
「えっ?」
「幸せな結末なのに…」
ジュンジェは自分のした話の矛盾に気づかされた。
「ああ、それか…」
ジュンジェは頭に手をやる。
「繰り返されると問題があるの?」
「大声で話すと他の人に迷惑だ」
周囲を見回しセファは応じる。
「話を聞く人はどこに?」
周囲に人はいない。ジュンジェは咳払いを一つする。
「何が不安なのよ?」
「その時とは状況が違う」
ジュンジェは大きな声になった。
「何が?」
「お前が言っただろ。ここにいたら―死ぬかもと…」
「それはあなたが私を愛してくれたら、死んだりなどしないわ。この二人もそうだったんじゃないの?」
「僕はこいつじゃない」
「どういうこと?」
「人の気持ちというのは、じつはこの世でもっとも移ろいやすい」
「…」
「だから、大恋愛しても別れたりする」
ひとつの嘘をつくろうためにジュンジェはどんどん饒舌になってくる。
「俺が思うにお前の場合は命がかかってるし…」
「だから不安なの?」
「そうだ。不安で仕方ない」
セファは”どこか変だ”のシラーっとした表情をする。
「どうした?」
「不公平だわ。私にはあなたの心の声が聞こえない」
ジュンジェはそっぽを向く。
「聞く必要があるか? 俺は誰にだってほんとのことしか言わない」
ジュンジェは優越感で先に立って歩き出す。
「悪口も聞こえるから気をつけろよ」
セファは黙って小走りにジュンジェを追いかける。
モ・ユランは昔の手帳を取り出しナム部長の奥さんに電話をかけた。
だがその電話番号は使われていなかった。
一日も早くジュンジェの消息を知りたいモランはため息をつきながらジンジュの屋敷内に戻る。
そんなモランをじっと監視してる車があった。
セファがジュンジェのところにやってきた。
「いいことを思いついたわ。こうしましょう」
「ん?」
「あなたが不安がるのは気の毒だし、私自身それがいやなの」
「だから?」
「すこしだけ記憶を消しました」
「何だ?」
「昨日の記憶だけ消してしまえば、私の命を心配しないですむわ」
「どういうことだ?」
「力を調節すればうまくいくわ」
「…?」
「大丈夫、やれそうよ」
「だから、何が大丈夫なんだ?」
「ずっと陸にいるから力は多少衰えてるけど、やってみるわ」
「…?」
「少しでいいのよ。半日分だけ」
「さっぱりわからん。いったい何を言ってるんだ?」
行こうとするジュンジェをなだめて言う。
「いいから目をつぶってて」
「ふざけるな。そうはいかん」
「痛くはないから」
「何言ってるんだ。近寄るな」
不安がって逃げようとするジュンジェを制してセファは言う。
「本当に痛くないから。私を信じて」
セファはギュッとジュンジェの両腕を制した。大きいジュンジェはセファに壁ドン状態にされてしまった。
「おい、何をする?」
何かやられそうになり、とっさに逃れる。
「やめろって!」
逃がさない。セファはジュンジェを追いかける。
屋敷内を逃げながらジュンジェはタイムをかける。
「おい、やめろ! ちょっ、ちょっと待て」
ジュンジェは必至で逃げ回る。
鬼ごっこみたいに走り出てきた二人に、リビングでくつろいでいたナムドゥとテオは”何事だ?”の目を送る。
「ちょっと待て…やめろよチンチャーっ!」
ジュンジェは大型TVの前でとうとう押し倒されてしまう。
「何やってんだ、あいつら…新手のスキンシップか? 昨日まで大ゲンカしてたっていうのに…」
二人のじゃれ合いを眺めてるのが嫌になったテオは見えない場所に引っ込んでしまう。
「この家から早く出て行きたいよ」とナムドゥ。
セファに最後まで抵抗しベッドに落ち着いたジュンジェに、天井裏からセファが声をかける。
「やっぱりダメ?」
「閉めろ」
セファはぼやく。
「半日分だけでいいのに…」
「例えば…俺が嫌がることをして心変わりしたらどうする?」
「簡単に心変わりする男を私が好きになるとでも? 一目見てわかったわ。命がけで愛するにふさわしい男だって」
「純粋過ぎたな」
「ん?」
― 海しか知らなくて純粋過ぎたわ。あの男が一番だと思い込んでた。
「分かったんじゃなくて、ただそう思い込んでただけだろ?」
「…」
「それと男前なんて…(珍しくもないのにナルシストにもほどがあるわ)俺がナルシストだとも言ってたな、おい?」
「あら、聞こえてた? あの時は腹が立ってたの。あなたが聞こえないフリをしてたからよ」
ジュンジェは思わずセファの方を見る。どういうことなのだ(?)、と。
「じゃあ、その記憶も消しましょ」
「おい、おりて来るなって」
セファはかまわず梯子を下りて来る。
「念のため、一週間分消しましょ」
制止するのを諦めたジュンジェは言う。
「そうだ。海辺で暮らすか? それか、お前一人で南の島に行けよ。南の海は暖かくて最高だぞ。たまには俺も遊びに行くよ」
「…何もしないから一緒に寝ましょ」
「本当よ。手をつなぐだけなんだから。信じられないの?」
「ああ、信じない。まったくな」
そう言ってジュンジェは頭から布団をかぶった。
セファは腕を組んだ。
「(騙されないわね)」
「聞こえてるぞ。やっぱり嘘だったんだな」
「…」
「子供の夢を裏切る不良人魚め、童話を読んでご先祖様について勉強しろ」
セファは諦めて部屋に戻ろうとする。
後ろからジュンジェは言う。
「(一緒に寝るから)絶対に消すなよ」
セファは喜んで振り返る。
「ええ、約束するわ」
ジュンジェはベッドの片側を開けた。
「勘違いするなよ。心臓がちゃんと動いているか確かめるだけだ」
ベッドに入ってきたセファをジュンジェは抱きしめる。
「問題なさそうだ」
「あなたと一緒だから」
そうしてひと夜が過ぎた。