雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「病院船」から(連載14)






 韓国ドラマ「病院船」から(連載14)



「病院船」第2話➡劣悪な手術室②


★★★


 海洋警察からヒョンに折り返しの電話が入る。
 ヒョンは答えた。
「30分後では遅いんです。もっと早くこれませんか? 一刻を争うのに」
 そこへウンジェが戻ってきた。
「歯科、内科、一緒に来て」
 ウンジェはベッドの子供を抱き上げた。 
「手術をするのか」と老人。「孫は助かるんだな」
「…最善を尽くします」
 ウンジェは子供を抱いて出ていく。
 ヒョンは見知らぬ女医からいきなり指示を受けたのは不快だった。しかし、子供を助けたい思いは一緒だった。不快ながらも彼女の指示の確認でついていく。
 手術の準備はゴウンや事務長の手で進んでいた。ウンジェが子供を抱いてやってきた。手術台に寝かせた。
 ウンジェを追ってヒョンがやってきた。
「何をする気です?」
 ヒョンの話は無視し、ゴウンに訊ねる。
「手術助手の経験は?」
 ゴウンは答える。
「船に乗るまではオペナース歴15年です」
 ウンジェは手術器具を束ねた。
「よかった。消毒をお願い」
 ゴウンは受け取り、消毒にかけて戻ってくる。
「ウジン、お腹を見せて」
 ヒョンはウンジェの背後に立った。


★★★


「何をやってるんです?」
 ウンジェは振り向かずに答えた。
「手術をするのよ。それが何か?」 
「そんな装備でやる気ですか? 歯科の装備でしょ?」
「そうよ」
「できるわけないでしょ」
 子供は泣いている。
「出ましょう。話があります」
 ヒョンはウンジェの腕をつかんだ。引っ張って外に出た。


 2人だけの場所で向き合った。
「手術。僕は反対です」
 ウンジェは反論した。
「腹膜炎ならすぐ手術しないと手遅れになります」
「しかし、病院でないとあまりに危険すぎる」
「…」
「30分以内に海洋警察が来ます」
「任せるけどこれだけは言わせて。到着するまで30分。移動するのに2時間半。患者は3時間も耐えられるかしら」
「…」
「移送中に悪化したらどうするんです? 内科に何ができるのよ」
「承知の上です」
「危険だわ」
「船で手術するよりマシだ。移送すれば病院に近づける。それだけ助かる確率も高くなる。しかし」
「…」
「ここで無理して失敗したらどうするんだ。今の状況では最善の道は選べない」
「…」
「最悪を避けるしかないんだ」
 そこへゴウンがやってきた。
「先生、血圧と脈拍が急変しました」
 ウンジェはすぐ手術室に戻る。ゴウンの話に動揺した老人は眩暈を起こす。倒れてスタッフに抱えあげられる。
 ウンジェは体温計を見る。39.7度。
「まずいわね」
 ウンジェはスタッフに指示を出す。
「手術します。麻酔を」
 アリムがあわてて麻酔液の容器を割ってしまう。あったのはそれ一本だった。麻酔薬はなくなった。ウンジェらは落胆する。
「いや、ある」
 ヒョンが答えた。引き出しから小指サイズのアンプルを取り出した。
「麻酔のためのミダゾラムはこれで最後だ。つまり…」
「30分で手術を終えないと死亡する可能性がある」
「できますか?」
「先生ならどうです?」
「…」
「危険が伴う手術になるし、機械には一切頼れない。すべて手動で行うことに…できますか?」
「…」
「私と一緒に患者を救える?」
「…」
「一緒に患者を救える?」
 ウンジェは黙っているヒョンの手からアンプルを抜き取った。


  
 ウンジェがメスを握って手術は開始された。
「蘇生バッグを」
 蘇生バッグがナースからウンジェに差し出される。それをヒョンが握った。
「僕が」
「…」
「やるよ。アリムさんは2分おきに血圧のチェックを」
「はい、先生」
 ウンジェとヒョンはしばし意地の強い目をぶつけ合った。


―そのかわりミスは許さない。最後まで見届けてやる。
―やるからには人事をつくしあいましょ。
 


 老人は意識を回復させた。
「孫はどうなった?」
「心配せずに休んでいてください」
 ジェゴルは答えた。
 しかし一人の医師としてこんな場所での手術には不安を感じていた。
 








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