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宴会の席を抜け出したアンナは道端にしゃがみ込んだ。自分の脳内をめぐった幻覚や幻聴のあまりの生々しさに困惑した。
「みんな行ってしまった。みんな私を嫌ってる。私だけをおいて…私だけひとり取り残された」
アンナは不安と怯えで身を震わせた。顔色は暗く沈んだ。
そこに声がかかった。顔を上げるとそばにチョルスが立っている。
チョルスはしゃがんでアンナの顔を覗き込んだ。
「また具合が悪くなったのか?」
「…」
「大丈夫か?」
「みんな私を嫌ってた…」
「何か思い出したか?」
アンナは落胆した。自分の昔を嘆いた。
「思い出した記憶はすべて最悪よ。気に入らないわ。私の人生は、ほんと最悪だったのね」
「サンシラーッ。まだ全部の記憶じゃないだろう。悪い記憶を先に思い出しただけさ。残りはきっとみんないい記憶さ」
「いい記憶がなくても?」
「おい」チョルスは言った。「いい記憶か~、たとえば豪華なクルーザーで海に出たりしたことは思い出したか?」
アンナは首を振る。
「いいえ」
「お前の可愛がってた一千万ウォンの猫…そのことは?」
「いいえ」
「ほらみろ。いい記憶はまだまだ思い出してないだけさ。これからどんどん思い出してくるに決まってるじゃないか」
チョルスは笑顔でアンナを励ます。慰める。
「そうよね」
アンナは顔を輝かせた。パッと元気を回復した。
「考えてみたら今も人には好かれてないし・・・好かれなくても別に関係ないわ」
気分転換してアンナは威勢よく立ち上がる。
何があってもくじけない。自分もそうだが、ここがアンナのいいところだ。
チョルスもにっこりして立ち上がる。
「だけど、困ったな。今はみんな、お前が好きだ」
「えっ?」
「お前に歌わせろってみんな大騒ぎだ。早く戻ろう」
チョルスはアンナの手を取って歩き出す。
アンナは引っ張って行かれながら抵抗する。
「い、イヤよ、絶対歌わないから!」
チョルスの手を振り切って逃げようとする。しかし。チョルスはまたアンナの腕を取った。
「友達のために一曲歌え」
「友達じゃない、イヤよ」
「仲がいいじゃないか」
「よくないよ」
「カンジャの友達じゃないか」
アンナは結局力ずくで中に引っ張って行かれる。
そして宴会は終わった。チョルスはアンナたちは五人仲良く家路に着いた。
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