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韓国ドラマ「病院船」から(連載122)

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韓国ドラマ「病院船」から(連載122)




「病院船」第11話➡私に構わないで⑨




★★★


 ヒョンは草刈り中、蜂の襲来を受けてケガした2人について、駆けつけた警備艇のスタッフたちに説明を行った。
「容体が安定したら、病院に移します」
「はい、了解です」
 説明がすんだ時、奥で父親の叫ぶ声が聞こえた。
「テウク! テウク、しっかりしろ」
 ヒョンは警備艇のスタッフに挨拶して背を返した。


★★★


「あんた、この子に何をしたんだ」
 ウンジェは正直に答える。
「喉頭浮腫でやむなく気管切開を行いました」
「俺は無事なのに、なぜ息子が?」
 アリムが遠慮がちに説明する。
「お父さんを蜂から守っていたからです」
「な、何だって?」
 傍に立つヒョンが言った。
「後は私に任せてください」
 父親はヒョンの腕を払いのける。
「離してくれ」
「…」
「おい、こらっ! なぜお前が俺を守るんだ。逃げなきゃダメじゃないか。親を守ってる場合じゃないだろ」
 父親はグスグスと泣く。
 周囲の者は黙って見てるしかない。
 父親の声が聞こえたのか、息子の手が動く。握ってこようとするその手を父親は両手で握る。
「テウク、気がついたか?」
 呼びかける父親に顔も反応を見せる。目が開き、何か話そうとする。しかし、声は出ない。
 父親はウンジェに訊ねる。
「なぜ、喋れない?」
 ウンジェは穏やかな声で説明する。
「切開した傷が治れば話せるようになります」
「ああ、もう何てことだ」
 息子はなおも声を出そうとする。
「じゃあ、筆談で」
 アリムはすかさずボールペンを握らせ、メモ用紙をあてがう。
 息子はそこに何か書きこんだ。メモ用紙は父親にわたる。


―父さん、怒って悪かった。来年、就職したら草むしりも喜んでやるよ。


 それを読んで、父親はもっと泣いた。
「バカ野郎! こんな時に草むしりなんて…」
 息子はまだ何か言いたそうにしている。父親は息子を宥めた。
「いいんだ。大丈夫だ。もうしゃべるな。すぐ治る。心配するな…」
 互いの無事を喜び合う二人を残し、ウンジェはそっとそこを脱け出て行った。
 親子の温かな情愛を目の当たりにし、何か感じるところがあったのかもしれなかった。




 ウンジェはデッキに出た。父の手術について思いを巡らす。
 父の手術は誰がやるかで手詰まり状態にある。デハン病院で上司だった外科長のキム・ドフンに依頼するのがベストなのは分かっていた。しかし、ウンジェは彼を頼れる立場ではなかった。
 友人を頼ったのはそれゆえだった。すると彼もキム・ドフンの名を挙げ、自分には無理だと断ってきた。ウンジェが自分でやろうと決めたのは、頼れる医者は友人で最後だったからだ。
 キム・スグォン院長に自分がやると申し出たのは、残されたカードは自分しかないと本気で思いつめたからである。親の手術を自分がやるというタブーもあえて承知で…。しかし、手術室を貸してくれるキム・スグォン院長に対する配慮は足りなかったかもしれない。
 しかしどうしたら父を…
 いきなり、ウンジェの脳裏を弟の言葉が走る。


―借金を返したいと…借金を姉さんに背負わせて―死ねないと言ってた。
―父さんを嫌ってるのは分かる。でも僕には父さんが気の毒で…


 ウンジェはかぶりを振った。両手で手をこする。夕暮れの風は冷たかった。


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