雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「青い海の伝説」第13話④







韓国ドラマ「青い海の伝説」第13話④



韓国ドラマ「青い海の伝説」第13話③


★★★

 ナムドゥがリビングに顔を出すとセファがソファを動かしている。
「どうしたんだ? 模様替え?」
「ええ。眠れなくて暇つぶしにね」
「何だって? これを1人で? 重かっただろが」
「平気よ。すごく軽かったわ」
「まったく…シムチョンのパワフルには誰も真似できんよ」
 ナムドゥはその辺をはしゃぎまわるセファを見ながら感心した。
 セファは昨夜からご機嫌だった。疲れも見せず元気そのものだった。
「ジュンジェは私が好き。私が好き。私が好き。ブツクサ、ブツクサ、ブツブツブツ…ジュンジェはやっぱり私が好きなのね」
 その声はジュンジェの許にも届く。
 セファの声は昨夜よりもボリュームと張りを増している。
 クロゼットの前でスーツを選びながらジュンジェは笑顔になる。
「はっはは…大きな声だな…いい加減にしなさい。分かったってば…」
 リビングにやってくるとセファが駆け寄ってくる。
「ここの契約が切れたらどこへ引っ越すの?」
「そうだな」
 ジュンジェは視線を遠くに向ける。
「そこまではまだだが、そろそろ始めないとな。どうして?」
「体調がいいうちに家具を移したくて」 
「何だって?」
 驚いてるジュンジェにナムドゥから声がかかった。
「シムチョンを大人しくさせてくれ。うるさくてたまらん」
「別にいいじゃないか」
 ジュンジェはセファに向かって訊ねる。
「朝飯は何がいい?」
 セファは笑顔で答える。
「コメ! パスタ―!」 
「朝から麺はいいよ」とナムドゥ。
「今、切らしてるよ」
「私が買って来る」とセファ。
 
 セファはリヤカーに段ボールをいっぱい積んで売りに出向いた。
 その帰り、セファはゴミ袋を重たそうに運ぶ妊婦を見かけて駆け寄った。ゴミ袋を横からつかみ取るとダストボックスに投げ入れてやった。
「ありがとうございます」
 妊婦さんは嬉しそうにセファを見送った。
 さらに帰宅途中、狭い道路を走ってきた救急車が止まってる車のせいで立ち往生すると、その車を邪魔にならない場所へ移動してやったりもした。 

★★★


 食事の準備の進む中、セファはなかなか戻ってこない。ナムドゥはいら立ちを見せる。
「パスタ―作ると言って買いに出かけたが、いったいどこまで買いにいったんだ。電話してみろ」
 
(ジュンジェは私が好き。ジュンジェは私が好き。…好き、…好き、好き好き好き…)

 セファの声が聞こえて、ジュンジェの顔はほころぶ。
「帰ってきたみたいだぞ」
「なぜ、分かるんだ?」とナムドゥ。
 すると、ドアが開いてセファが入ってくる。
「ただいま」
 テオは目をぱちくりさせる。
(どうなってるんだ?)
「何だ。テレパシーでも使ってるのか?」とナムドゥ。
 ジュンジェは小さくつぶやく。
「可愛いやつ…」

 ジュンジェがパスタを作り、食事が始まる。
「アン・ジンジュの件では大損したから、新しい仕事を考えてる…」 
 ふと横を見てナムドゥはぎょっとする。
 セファが睨みつけているからだ。
 ナムドゥは慌てて手を振った。
「いや、違う。誤解するな。悪者を懲らしめる仕事だ」
「…」
「振り込め詐欺の犯人を狙う」
 セファはジュンジェを見る。
 そうなの? の表情をする。
 ジュンジェは咳払いをひとつした。
「やらない、と言ったろ」
「やらない?」とナムドゥ。
「ああ」
 そんなジュンジェにセファは顔をほころばせる。
(やっぱり私が好きなのね)
 ジュンジェはセファに笑顔を返す。
「食べよう」
 2人のアイコンタクトにナムドゥの表情は固まった。

 食後、ナムドゥはジュンジェをプールサイドに呼びつけた。
「何だよ」
「そこに座れ」
「何の話だよ」
 ジュンジェは木の椅子に腰をおろした。ナムドゥも続いて腰をおろす。
「俺とは話すのも嫌になったか?」
 ジュンジェはナムドゥを見た。
「すねてるのか?」
「…」
「マ・デヨンの件でホン刑事と会うんだ」
「へえー、刑事ともお友達になったってわけか。だったら自首してやったらどうだ」
「それより、言いたいのは何だ」
「お前がシムチョンを大事にしてるのは分かる。しかし、知り合ってまだ3か月だろ。俺とは10年だぞ」
「一緒にするなよ」
 ジュンジェは反論した。
「なら、俺との10年は何だと思ってる?」
 ナムドゥの突っ込みにジュンジェは身体を起こした。
「あいつとの約束を守りたいんだよ」
「母親が見つかるまで俺と働く約束じゃないか。その約束を守らないでどうする? 今までお前を世話してきたのは俺だぞ」
 ジュンジェは目を落とし、顔を上げた。
「しかし、今はうちに住んでるじゃないか」
「そう言うよな。暖かくなったら出て行くよ。俺の部屋の暖房も直してくれないし、お前の薄情さには呆れる思いだよ」
 ナムドゥのぐちにジュンジェは立ち上がる。行こうとする。
 引き止めようとするナムドゥの手をはじく。
「いいから座れ」
 ジュンジェは椅子に戻る。
「この言葉を? ”糟糠の妻は堂より下さず”苦労を共にした妻は捨てるなって意味だ」
 ジュンジェは言う。
「兄貴は俺の妻なのか?」
「そうじゃないが、苦労は共にしただろ」
 ジュンジェは顔をしかめる。
「一つだけ聞きたい」
 プールを指さした。
「俺とシムチョンが溺れたら先に助けるのはどっちだ?」
 ジュンジェはにやりとする。ナムドゥを見上げる。
「兄貴だ」
「本当か?」
 ナムドゥの声は震えている。
「ああ」ジュンジェは横を向く。「シムチョンが兄貴を抱き上げる前に
な」
「ごまかすな。俺はともかく、韓国は世界一ネットが速いと言って日本から連れてきたテオは?」
「嘘じゃなく速いのは本当だ」
「テオを誘ったのはお前だぞ。その責任は?」
 がなり立ててるところに携帯が鳴った。
「ああ、ホン刑事。…どこですか? すぐ行きますよ」
 ナムドゥを置いてジュンジェはそそくさプールを出ていく。
 俺の話にまじめに取り合わなかった―ジュンジェを見送ったナムドゥはその場にうずくまった。






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