雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「青い海の伝説」第17話⑤






韓国ドラマ「青い海の伝説」第17話⑤



韓国ドラマ「青い海の伝説」第17話④


★★★

 セファの部屋で賑やかな音楽が聞こえてくる。
「うるさいぞ!」
 ジュンジェは大きな声で注意を促す。
 しかし返事がない。
 ジュンジェはセファの部屋に上がった。
 音楽は鳴り続けているのにセファはベッドの中にいる。
「何だ? 具合でも悪いのか?」
 急いでセファのベッドに歩み寄る。そばに行って音楽を消した。
「何してるんだ?」
 ベッドにはいったままセファは何の反応も見せない。ジュンジェは彼女の額に手を押し当てた。
 びっくりして手を取った。
「すごく冷たいぞ」
 セファはジュンジェの手を押しのける。
「行って」
「えっ?」
 セファは身体を起こした。
「出てってよ」
 二人は目を合わせた。
「勝手に心の声を聞かれたくないの。あなたにみんな聞かれてしまうと思うと考え事もできない」
「考え事って? どんな?」
「何だろうと私の勝手でしょ。自分の気持ちを一方的に聞かれるのがどんなに不快かわかる?」
「…」
「お願いだから私から離れて」
 いつもと違うセファの態度にジュンジェは何も言い返せない。
「それとも私が出て行こうか?」
「…いや、俺が出ていくよ。何か分からんが、思う存分考えたらいい」
 ジュンジェはセファを抱きしめる。
「お前、本当に大丈夫だよな?」
 セファを抱いたまま感じたことをつぶやく。
「心臓は元気みたいだけど…」
 セファは瞑りかけていた目を開ける。ジュンジェを押しのける。
「出てって」
「ああ、分かってるよ」
 ジュンジェはベッドの縁から慌てて腰を上げる。
 梯子階段の出入り口で立ち止まる。
「ああ…、家から出て行った方がいい? でも、外は寒いからリビングで寝るよ。あそこなら聞こえない」
「…」
「本当だって。もし聞こえたら正直に報告するから。俺を信用してくれ」
 セファは言った。
「分かったから出てって」
「ああ…」
 ジュンジェが出て行くと、セファは音楽をかけてベッドにもぐりこんだ。

★★★


 リビングに布団を抱えてジュンジェがやって来る。ソファで寝ているナムドゥに声かける。
「部屋に行け。俺がここで寝るから」
 ナムドゥは眠そうな目をこすって訊ねる。
「どうした?」
「追い出された」
「シムチョンに? 何かバレたのか?」
「そうじゃない。詐欺師だとバレてるんだぞ。これ以上何がある?」
 ジュンジェは自嘲気味に答える。
「確かに。もう、何もないよな。じゃあ、どうしてだ?」
「考えたいことがあるって」
「それだと…やっぱり何かバレたんだろ」
「ないって」
「いや、女がそう言った時は何かある。間違いない」
「例えば?」
「シムチョンはお前に対し、失望とか怒りを感じてる。だから、今後について考えてるんだよ。今後、お前たちに何が起こるか分からないぞ」
「そういうものか?」
「多分な」
「…」
「本当にもう隠し事はしてないのか? 他に思い当たる節はないのか?」
 ジュンジェは深く考え込んでしまった。



 車の中でカン・シネはマ・デヨンを責め立てた。
「他に覚えてることはないの? 話してみて」
「カン・ジヒョン…養護施設と…僕の知らない多くの死体…なぜか死んだ人の悲鳴が耳にまつわりついて聞こえる。どうしてなのか分からないんです」 
 カン・シネはため息をつく。マ・デヨンに何か異変が兆してるのを感じた。
「よく聞いて。何があって記憶を失ったのか分からないけど…あなたはは今もマ・デヨンよ」
 マ・デヨンはカン・シネを見た。
「マ・デヨン?」
 自覚のない名前だった。馬鹿げた名前に思えて笑った。
「マ・デヨン…どんな人でした?」
 カン・シネはすかさず答えた。
「必ず復讐する人だったわ」
「復讐?」
 突飛に思え、口から笑い声が漏れた。
「…ほんとに覚えてないの?」
 マ・デヨンは首を横に振る。
「ぜんぜん…」
「世間はあなたのことを捨てた。誰にも相手にされず、今までに幸せを感じたことなどある?」
「…」
「だからあなたは…復讐を始めたのよ」
「…」
「うまくやれてたわ」
「ほんとに僕があんなに多くの人たちを殺したんですか? 何も覚えてないのに?」
 カン・シネはマ・デヨンの手を握った。
「昔から人を殺すたびにそう言ってた。ほんとよ」
「…」
「怒りが過ぎて我を忘れてしまったのよ」
「…」
「安心して。これまで通り私が付いてるから」
 マ・デヨンは冷たい目をカン・シネに向けた。
「復讐する相手を私が教えてあげる」
 マ・デヨンは肯定とも否定ともつかない笑みを浮かべた。

 


 ジュンジェ家に朝がやってきた。
 ジュンジェはヘッドホンをつけてセファの部屋にやってきた。
「ご飯ができたぞ。一緒に食べよう」
 そう言ってセファを起こした。
「音楽のせいでお前の声は聞こえてないからな。ほんとだぞ。飯にしよう」
 セファは猫のような目をじっとジュンジェに向けている。
 ”この人、どうかしちゃったのかしら?”というような目で…。
「飯だぞ!」
 そう叫んでジュンジェは下に降りて行った。
 この時、セファはぐっと前に身を乗り出しかけた。

 
 朝食の支度を続けるジュンジェのところにテオがやってきた。
「それ僕のヘッドホンだ」
 ジュンジェは包丁の音を立てながら訊ねる。
「何だって?」
 そこへナムドゥも顔だした。
「騒々しいぞ!」
「ああ、そうだ」ジュンジェは大きな声で答える。「おばさんの味噌チゲを作ってるんだ」
「うるさいだろが」とナムドゥ。
「だから味噌チゲだって!」
 テオがムッとしてジュンジェのヘッドホンを外した。
「これは僕のだ」
「…ああ、そうだった。しばらく貸してくれ」
 笑顔になる。
「でも、外すと静かでいいな」
「…」
「ああ、もう…鼓膜が破れるかと…」
 顔をしかめ、喉に手をやった。咳き込んだ。
「しかし、どうして喉まで痛いんだ?」
「賢い頭でよく考えてみろ」
 ナムドゥはそう言って箸を握った。ミートボール見たいのを口に放り込んだ。
 ふと見るとセファの姿が目に飛び込んでくる。ジュンジェは慌ててテオの手からヘッドホンを奪い取った.両耳にかぶせた。
 自前の料理を食べて叫ぶ。
「美味しいな!」
 セファを見て笑顔を見せる。
「絶品だ!」
「…」
「ご飯食べよう!」
「…」
「さあ、おいで!」





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