韓国映画「ビューティ-・インサイド」から⑥
「時々来てます。…ほのぼのした気持ちになれるから」
イスは感心した表情になる。
店にはいろんな色、いろんな繊維でできた指輪や腕輪の装飾品、身の回り品がぎっしり、ぶら下がっていたり入れ物に収まっていたりした。
イスは指輪を指にはめて「かわいい」とつぶやく。ふと見るとウジンの右手指にはすでにひとつはまっている。イスは自分もひとつ買うことにする。
今日のデートも終わりに近づいた時、ウジンを見てイスは気づいた。
「ウジンさん…何日も寝てない人みたい…今にも倒れそうですよ」
「…」
「昨日は眠れなかった?」
「僕は大丈夫だけど…」
ウジンは踏ん張った表情で答える。
「本当に大丈夫?」
「大丈夫だよ」
そう答えてから、すぐ打診する。
「明日の予定は?」
「明日は…、母の命日だから早く帰らないといけないの」
それを聞かされて誘うわけにいかず、この日はバスで帰るイスに手を振った。
しかし、バスが走り出してからウジンは慌ててバスを追いかける。運転手がそれに気づき、バスは止まる。
ウジンが乗り込んできてイスは驚く。
イスの前に立ってウジンは言った。
「明日、朝ご飯を一緒に」
イスは優しい笑みでウジンの誘いを受け入れる。
ウジンはイスを家まで送って手を振った。しばらく歩いて振り返る。イスは手を振ったそのままの姿勢で見送り続けてくれている。
ウジンはイスのそばまで歩き戻った。
自分の口をイスの唇に押しつけた。
ウジンは電車に乗った。眠気を追い払うため携帯を取り出す。ゲームで時間をつぶしだす。ゲームに飽きると何度も欠伸がでた。吊り革を握っている乗客はいなくなり、座っている乗客もどんどん減ってまばらになった。
イスは姉と一緒に顔パックし、明かりを落として寝床に入った。
「寝た?」
姉が訊ねる。
「まだ…どうしたの? 何? 」
姉はちょっと身体を起こし、脇の方から何か取り出す。
顔を背けたまま、握った物をイスに差し出す。
「妹だから特別にあげる」
イスが手にしたのは黒っぽいビニール袋だ。
「何、これ?」
イスは文字を読んだり、裏返したりする。
「フェミドーム」
「えつ?」
「フェミドーム。女のコンドームよ。あんたも子供ね」
少し間があって「イヤダーっ! そんなんじゃないって~」と言いながら掛布団の中に袋を押し込む。
姉はイスの所作を笑う。
「ちゃっかりしまってるじゃない」
袋を慌てて押し返すイス。
「違うってば…!」
「あっははは、隠してもダメよ~…今は愛につつまれてふわふわ浮いてる気分でしょ」
イスは姉の話に耳を傾けだす。
「でも、いざ寝てみたら━」
姉は演技を入れ相手を見るしぐさで、
「”もう終わりですか?”」
イスは両手で笑い声を消す仕草。
「ってことになるのよ」
イスは両手の中から笑い声を押し出す。
「あっはははは! まさか~、」
「そのまさかが現実になるのよ」
笑い話はいつしかまじめなやりとりになった。
やがて、姉を見て目をつぶり、うっとりした表情でイスは言う。
「すごく不思議…前から知ってる人みたいに、気分が楽なの」
イスを見てた姉は目をつぶったまま反応しない。
「寝た?」
「…」
「いい人だと思うの…」
そう言って自分の手など眺めていたイスもいつしか眠りに落ちた。
イスの家族のふだんの夜が進行する中、ウジンはひとり、別人にならないための睡魔との格闘が続いていた。
イスは感心した表情になる。
店にはいろんな色、いろんな繊維でできた指輪や腕輪の装飾品、身の回り品がぎっしり、ぶら下がっていたり入れ物に収まっていたりした。
イスは指輪を指にはめて「かわいい」とつぶやく。ふと見るとウジンの右手指にはすでにひとつはまっている。イスは自分もひとつ買うことにする。
今日のデートも終わりに近づいた時、ウジンを見てイスは気づいた。
「ウジンさん…何日も寝てない人みたい…今にも倒れそうですよ」
「…」
「昨日は眠れなかった?」
「僕は大丈夫だけど…」
ウジンは踏ん張った表情で答える。
「本当に大丈夫?」
「大丈夫だよ」
そう答えてから、すぐ打診する。
「明日の予定は?」
「明日は…、母の命日だから早く帰らないといけないの」
それを聞かされて誘うわけにいかず、この日はバスで帰るイスに手を振った。
しかし、バスが走り出してからウジンは慌ててバスを追いかける。運転手がそれに気づき、バスは止まる。
ウジンが乗り込んできてイスは驚く。
イスの前に立ってウジンは言った。
「明日、朝ご飯を一緒に」
イスは優しい笑みでウジンの誘いを受け入れる。
ウジンはイスを家まで送って手を振った。しばらく歩いて振り返る。イスは手を振ったそのままの姿勢で見送り続けてくれている。
ウジンはイスのそばまで歩き戻った。
自分の口をイスの唇に押しつけた。
ウジンは電車に乗った。眠気を追い払うため携帯を取り出す。ゲームで時間をつぶしだす。ゲームに飽きると何度も欠伸がでた。吊り革を握っている乗客はいなくなり、座っている乗客もどんどん減ってまばらになった。
イスは姉と一緒に顔パックし、明かりを落として寝床に入った。
「寝た?」
姉が訊ねる。
「まだ…どうしたの? 何? 」
姉はちょっと身体を起こし、脇の方から何か取り出す。
顔を背けたまま、握った物をイスに差し出す。
「妹だから特別にあげる」
イスが手にしたのは黒っぽいビニール袋だ。
「何、これ?」
イスは文字を読んだり、裏返したりする。
「フェミドーム」
「えつ?」
「フェミドーム。女のコンドームよ。あんたも子供ね」
少し間があって「イヤダーっ! そんなんじゃないって~」と言いながら掛布団の中に袋を押し込む。
姉はイスの所作を笑う。
「ちゃっかりしまってるじゃない」
袋を慌てて押し返すイス。
「違うってば…!」
「あっははは、隠してもダメよ~…今は愛につつまれてふわふわ浮いてる気分でしょ」
イスは姉の話に耳を傾けだす。
「でも、いざ寝てみたら━」
姉は演技を入れ相手を見るしぐさで、
「”もう終わりですか?”」
イスは両手で笑い声を消す仕草。
「ってことになるのよ」
イスは両手の中から笑い声を押し出す。
「あっはははは! まさか~、」
「そのまさかが現実になるのよ」
笑い話はいつしかまじめなやりとりになった。
やがて、姉を見て目をつぶり、うっとりした表情でイスは言う。
「すごく不思議…前から知ってる人みたいに、気分が楽なの」
イスを見てた姉は目をつぶったまま反応しない。
「寝た?」
「…」
「いい人だと思うの…」
そう言って自分の手など眺めていたイスもいつしか眠りに落ちた。
イスの家族のふだんの夜が進行する中、ウジンはひとり、別人にならないための睡魔との格闘が続いていた。