韓国映画「ビューティ-・インサイド」から⑱
考え込んでいるイスに声がかかる。
「また薬なの?」
「あっ、いいえ」
イスが最も信頼をおく上司だった。
「イスさん、話がある。ちょっと私の部屋に来て」
他に誰もいない部屋で本部長は切り出した。
「あなた、この頃変よ。具合でも悪いの?」
「胃を悪くしたみたいです。消化不良気味で、気分もよくない時がある。寝不足が続いてるんです」
「…どうして寝不足なの?」
「男の問題? 図星でしょ?」
イスは返事に窮する。
本部長は小さく息をつく。
「あのね…あなたがいろんな男に関心を持ち、手を出して━ 毎日、相手を買えてるって噂になってる。
「…」
「社長にも聞かれたわ。もちろん、”そうじゃない”と答えてはおいた。あなたのプライベートに踏み込みたくはないけど、噂は後を絶たない」
イスは苦笑する。
「あんなに元気だったイスが、毎日、薬飲んでるし、心配にもなるわ。悩んでない?」
しかしウジンとの込み入った事情を打ち明けるわけにいかない。イスは否定するしかなかった。
「本当に何もありません。何かあったら話します」
イスの悩みは深まった。自分ひとりで抱え込んでいるより、誰かには話を聞いてもらわねばならない
イスは診療科にかかった。
「気を楽にして話してみてください」
「なんて言ったらいいのか、どこから話せばいいのか…好きな人がいるんですが、他人には話せない悩みなんです。彼は、朝起きるたびに姿が変わってしまいます。全然、違う人になってしまうんです。…妙な話ですよね? 自分がこんな話をするのも不思議な気がしています」
「…」
「…先生のお話を録音してもいいですか? 最近よく忘れてしまうので」
「そうしてください」
診療科にかかりながら、イスはウジンと会い続けた。彼への愛情は変わらなかった。ただ、彼と会っても外へは出かけず、家中で過ごす時間が多くなった。
二人はワインを飲みながらお互いの心を向け合った。
ウジンの手をとってイスは話しかける。
「こうして一緒にいられてうれしい。余計なこと考えないし…。つらかったけど、今日のこの日がずっと続いていてほしい。あなたも今のまま、私も今のままで」
「イスよ」
「うん?」
「俺たち、結婚しようか?」
ウジンのプロポーズにイスは酔った目を返す。
にわかには答えられなかった。結婚しても朝がやってくる限り、二人の悩みは消えないのだった。
ウジンは口にした言葉を引っ込める。
「冗談だよ。つい口にしちゃった。いいワインだ」
ウジンはおかわりをイスのワイングラスにそそぐ。
そんなウジンをイスは黙って見つめ返した。
「また薬なの?」
「あっ、いいえ」
イスが最も信頼をおく上司だった。
「イスさん、話がある。ちょっと私の部屋に来て」
他に誰もいない部屋で本部長は切り出した。
「あなた、この頃変よ。具合でも悪いの?」
「胃を悪くしたみたいです。消化不良気味で、気分もよくない時がある。寝不足が続いてるんです」
「…どうして寝不足なの?」
「男の問題? 図星でしょ?」
イスは返事に窮する。
本部長は小さく息をつく。
「あのね…あなたがいろんな男に関心を持ち、手を出して━ 毎日、相手を買えてるって噂になってる。
「…」
「社長にも聞かれたわ。もちろん、”そうじゃない”と答えてはおいた。あなたのプライベートに踏み込みたくはないけど、噂は後を絶たない」
イスは苦笑する。
「あんなに元気だったイスが、毎日、薬飲んでるし、心配にもなるわ。悩んでない?」
しかしウジンとの込み入った事情を打ち明けるわけにいかない。イスは否定するしかなかった。
「本当に何もありません。何かあったら話します」
イスの悩みは深まった。自分ひとりで抱え込んでいるより、誰かには話を聞いてもらわねばならない
イスは診療科にかかった。
「気を楽にして話してみてください」
「なんて言ったらいいのか、どこから話せばいいのか…好きな人がいるんですが、他人には話せない悩みなんです。彼は、朝起きるたびに姿が変わってしまいます。全然、違う人になってしまうんです。…妙な話ですよね? 自分がこんな話をするのも不思議な気がしています」
「…」
「…先生のお話を録音してもいいですか? 最近よく忘れてしまうので」
「そうしてください」
診療科にかかりながら、イスはウジンと会い続けた。彼への愛情は変わらなかった。ただ、彼と会っても外へは出かけず、家中で過ごす時間が多くなった。
二人はワインを飲みながらお互いの心を向け合った。
ウジンの手をとってイスは話しかける。
「こうして一緒にいられてうれしい。余計なこと考えないし…。つらかったけど、今日のこの日がずっと続いていてほしい。あなたも今のまま、私も今のままで」
「イスよ」
「うん?」
「俺たち、結婚しようか?」
ウジンのプロポーズにイスは酔った目を返す。
にわかには答えられなかった。結婚しても朝がやってくる限り、二人の悩みは消えないのだった。
ウジンは口にした言葉を引っ込める。
「冗談だよ。つい口にしちゃった。いいワインだ」
ウジンはおかわりをイスのワイングラスにそそぐ。
そんなウジンをイスは黙って見つめ返した。