韓国ドラマ「ただひとつの愛」第4話(エピソード14)
〇主な登場人物
イ・ヨンソ(シン・ヘソン)
キム・ダン(エル)
チ・ガンウ(イ・ドンゴン)
クム・ニナ(キム・ボミ)
チョン・ユミ(ウ・ヒジン)
フ(キム・イングォン)
チェ・ヨンジャ(ト・ジウォン)
クム・ルナ(キル・ウネ)
パク・グァンイル(イ・ファリョン)
キ・ジュンス(イ・ジェヨン)
他
第4話(エピソード14)
外にダンの姿はない。この雨で部屋に戻ったのかもしれない。
ヨンソは重い身体をステッキで支えてダンの部屋に向かった。
ヨンソに羽を見られたら自分の正体がバレてしまう。
ダンは落ち葉の掃き掃除を中断して屋内に駆け込んだ。誰にも見られないため、自分の部屋に逃げ込んだ。
羽を乾かすにはどうしたらいいのか。早く乾かさないととんでもないことになりそうだ。
ドアをロックして見られないようにしても、いつまでもこの姿でいられない。
部屋の中でダンはただただうろたえる。
「どうすりゃいいんだ…このままじゃまずいぞ。何とかしなきゃ〜」
ダンは天を見上げた。正体発覚のピンチを訴えた。
「神様、緊急事態です。この身体は不良品です。ご加護をお願いします。一刻も早くお恵みを!」
その時、廊下で硬い音がした。
背中を冷たいものが走り、ダンは緊張した。
「これは?」
耳をすます。
硬い音が一定のリズムで近づいてくる。
ヨンソのステッキだ。
ダンの気持ちは動転した。
「今の自分は逃げられない。どうすれば…」
見られてはおしまいだ。どこかに隠れるしかない。
洋服ダンス〜この中はどうだ? 無理そうだ。他には…ベッド下は〜?
うろたえているうちにもヨンソのステッキはどんどん近づいて来る。
逃げ場に窮したダンはベッド上で毛布をひっかぶる。包み込もうとする。
しかしこれでは無理だ。彼女の前にこの身をさらすしかないのか…?
部屋の前でステッキの音は鳴り止んだ。
もう、ダメだ。
ダンは小さく悲鳴を漏らした。
「ナムサン…!」
ベッドから飛び出る。
部屋の前に立ったヨンソはドアノブを握った。
逃れる術を失ったダンは床に座り込んでいた。
「ダメだ、入って来ないで」
ダンはただそれだけを念じていた。
ヨンソが確かめたいのはダンが部屋にいるかどうかだった。
落ち葉集めをほっぽり出して逃げたかもしれないとも思っていたからだった。
立派の御託を並べる人間にはそういう一面を持つ者もいる。ヨンソはそういう輩もたくさん見ていた。ダンもそうかもしれない。
他の者なら逃げ出そうと何しようと捨て置いていただろう。
しかし、ダンの場合は別だった。
そうでないのを願いつつ、逃げ出さずに部屋にいるのを確かめたい思いでやってきたのだ。
ヨンソがドアを開けようとしたその時、ガラスかなんかが割れる音がした。
その音の激しさにドアノブを握ったヨンソの手は緩んだ。そのままドアノブから手は離れてしまった。
あいつは窓を破って逃げた?
まさか…!?
ヨンソは確かめずにはいられなかった。階段を歩いて降りてまで何かの異変を確かめに出向いた。
窓は割れて嵐のような風が吹き込んでいた。辺りは木の根と泥とガラスの破片が飛び散らかっている。
泥をかぶった灌木の根がここを割って飛び込んで来たのだ。
木の根と泥、ガラスの破片の散らかった現状にヨンソはふいに恐怖を刺激された。
何者かがこんな日にこれを投げ込んだ?
視力を失った時の忌まわしい記憶がヨンソの目の奥で浮かび上がった。
目を襲ったガラスの破片の記憶は生々しく脳裏に刻み込まれている。
あれも偶然の事故とは思えないでいるヨンソだった。
ヨンソはその場で蹲り、動けなくなった。
口を震わせ、身動きもならずに怯えた。