雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「30だけど17です」(連載59)



韓国ドラマ「30だけど17です」(連載59)




「30だけど17です」第7話(内職に励む)①


☆主なキャスト&登場人物


○シン・ヘソン➡(ウ・ソリ)
○ヤン・セジョン➡(コン・ウジン)
○アン・ヒュソプ➡(ユ・チャン)
○イエ・ジウォン➡(ジェニファー(ファン・ミジョン)
○チョ・ヒョンシク➡(ハン・ドクス)
○イ・ドヒョン➡(トン・ヘボム)
○チョン・ユジン➡(カン・ヒス)
○ユン・ソヌ➡(キム・ヒョンテ)


★★★


― 13年前と言えば忌まわしいバス事故のあった年だ。あの頃、彼女の身の上には何が起きていたのだろう…。


 食事を始めたウジンを見ながらソリも考えた。


― もし僕のせいで死んだら…!


「なぜ、あんな言葉を…?」
 
「早く正しい意味を教えてくれ」
 ドクスはまだこだわっている。
 ソリは口を押えて笑い声を立てた。
 その時、ウジンの目にトックの姿が目に入った。
 ウジンは席を外してトックのところにやってきた。
「トック、どうした? 食べないのか?」
 食堂から声がする。
「早く食べないとおかずがなくなるよ」
「ああ、今行く」
 ウジンはトックを抱き上げて答えた。
 その時、玄関先では黄色いワンピース姿の女性が立って家の様子を窺っていた。  


★★★


 夜を徹してステージセット用の図面画きに励んでいるウジンの机上に木の葉が一枚舞い落ちてきた。
 天窓からは月の姿が覗いている。
 ウジンは木の葉を手にした。しげしげと見入りながら考える。
 天窓に目をやった。
 あそこを開けるようになったからか…。
 ウジンは月の姿に見入った。
 あそこを開けるようになって何かが変わった気がする。
 再び木の葉に見入る。指でくるくる回す。自然に笑顔が浮かび出た。
 思い立って部屋を出た。階段をおりた。
 するとトックが塒から出て寂しそうにしている。
 ウジンはトックの前でしゃがんだ。両手で身体をつつんだ。
「トック、どうした? 何かあったのか?」
 トックの様子を訝しんでいるとチャンも顔を出した。
「どうしたの?」
 誰かの泣く声がする。
 2人は目を合わせた。
 その時、後ろから声がかかった。
「階段下の部屋から聞こえます」
 2人が振り向くとジェニファーが立っている。頭を頭巾にしている。
「びっくりするなあ、もう…!」
 オイオイ、とまた泣く声がする。
 ウジンたちも泣いてる主がソリなのに気づいた。
 チャンは言った。
「きっと、家族を思い出してるんだよ」
「…」
 その時、ドアの内側から何かが転がり出た。ウジンがそれを拾い上げる。
 ソリが泣きながらそれを追って出てきた。
 ウジンたちは呆然とソリを見つめる。
「目、目が…」
「目が、どうかしました?」
 ソリは目をつぶって開かない。
「目が見えないの?」
「染みるんです、目が」
「えっ!?」
 目が開けられないでソリは床を這いつくばっている。部屋から逃げ出してきたらしい。
「玉ねぎだよ」
 チャンはソリの部屋を覗き込んで悲鳴をあげる。
 皮を剥かれた玉ねぎが山と積まれていたからだ。
 ウジンたちは中に入ってきて事情を理解した。
「”中華料理 本格楼?”」とウジン。
 どうやら夜なべで玉ねぎを剥いていたらしい。 
 ソリの目を手当てしてやりながら、チャンたちは事の経緯を訊ねた。
「玉ねぎの皮むきを内職で引き受けたの?…」とウジン。
「はい。本格的なジャージャー麵を作ってる”本格楼”です」
「分かるけど、よりによって玉ねぎの皮むきを?」
「経歴がなくてもできるからです。バイオリンを直したいし、叔父もすぐ見つかりそうにないから」
 ウジンはソリの話しっかり聞いている。
「とにかく今は仕事を選んでる場合じゃないので…」


 ウジンはジェニファーを見た。
「どうして立っているんです?」
 目の上を冷やしてもらってるソリは勘違いして答える。
「座ってますけど」
「ジェニファーです」とウジン。
 ジェニファーはトックを抱いて答えた。
「玉ねぎの硫化アリル成分は、犬の貧血を引き起こすため、遠ざけるべきだと5歩さがりました」
「玉ねぎの匂いを嫌うので食べませんので大丈夫です」とウジン。
 ソリは言った。
「みなさんを起こしてしまってすみません。休んでてください」
 ソリは目の上に置かれた氷嚢を取った。しかし、痛めた目は開けられない。
「そうは見えません」とジェニファー。
 ウジンは腰を上げた。ソリを見た。
「新鮮な空気を吸うといいよ」
 そう言って何か思い出すように言った。
「僕もネギで目をやられたことあるから」
 ウジンはじろっとジェニファーを見た。
 ジェニファーはネギの束でウジンの顔を叩いたのを思い出した。
 あのことをまだ根に持ってるみたい…。
「誰にやられたの?」
 ウジンの話にチャンは怒りを表した。
 ジェニファーは言った。
「あの、明日に備えて私はこれで」
 トックを床に戻してジェニファーは皆に一礼し、いそいそ引き下がった。


 外に出てソリは目を開けられるようになった。
「どう?」
 ソリを追いかけて出てきたチャンが訊ねた。
 ソリはチャンを振り返った。
「もう、大丈夫みたい」
 ぱっちり目を開いているソリの目を覗き込んでチャンも頷く。
「本当だ」
 近くでソリの目を見てチャンは驚きを覚えた。今までに経験のない感覚だった。ごく間近で唇を見てそれはときめきに変わった。思わずソリの顏から目をそらす。 
 ごまかし笑いで言った。
「あっははは、ミスター・コンの言ったとおりだね」
 ソリは空を見上げた。
「物知りで俺とそっくりだ、あっは」
 ソリは腕を伸ばし、円い月を親指と中指の中に収めて眺めた。
 そんなソリを見てチャンは訊ねる。
「どうしたの?」
「えっ? ああ、ちょっとね〜、あ、ドント・シンク・フィルと似てます」
 チャンは叫んだ。
「ドント・シンク・フィル!」
 ソリを見た。
「これ?」 
 ソリは笑顔でまた腕を伸ばした。親指と中指の中に月を収めた。
「ママが教えてくれた弓の持ち方は…」
 その日のことをソリは思い浮かべた。
「肘をあげて〜、左目を手で隠して見てごらん…」
 ソリは言われた通りにした。
「どう? 言った通りでしょ」
 ソリは頷いてママを見た。
「ママは”月のウサギ”を取り出せた」
「ママ、そんなのインチキだよ」
「インチキじゃないよ。”できない、できない”と言ってたら〜本当にできなくなるの」
「…」
「でも、出来ると思っていたら、不思議にできちゃうようになるの。何事もね、考え方次第だから。月のウサギも取り出せたでしょ」
「いいわ」ソリは答えたものだった。「ママを信じてあげる」
 いつもの陸橋での出来事だった。
「ふ〜ん、お母さんに習ったのか…その頃、可愛かっただろうなあ」
 ソリはチャンの独り言を訊ねた。
「今、何て?」
 チャンは少し慌てた。とぼけて答えた。
「何でもないよ」
 チャンは両腕をほぐした。
「そろそろ寝ようかな。まだ寝ない?」
 ソリは笑顔で答えた。
「もう少し残ってます。先に寝てください」
 ソリの後ろ姿を目に刻んでチャンは中に消えた。



名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「韓国ドラマ「30だけど17です」」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事