雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「30だけど17です」(連載138)



韓国ドラマ「30だけど17です」(連載138)




「30だけど17です」第16話(深まる思い)④


☆主なキャスト&登場人物

○シン・ヘソン➡(ウ・ソリ)
○ヤン・セジョン➡(コン・ウジン)
○アン・ヒュソプ➡(ユ・チャン)
○イエ・ジウォン➡(ジェニファー(ファン・ミジョン)
○チョ・ヒョンシク➡(ハン・ドクス)
○イ・ドヒョン➡(トン・ヘボム)
○チョン・ユジン➡(カン・ヒス)
○ユン・ソヌ➡(キム・ヒョンテ)
○チョ・ユジョン(イ・リアン)
○ワン・ジウォン(リン・キム)
○アン・スギョン(チン・ヒョン)
★★★

 シートを握ってウジンはご機嫌な顔で歩き出す。
「いい天気だな」
 しかし、ソリはその場にとどまっている。
「私のことを恋人だなんて恥ずかしいわ…」
 小犬を連れた2人を見かけてウジンは声をかけた。
「可愛いですね。撫でてもいいですか?」
「いいですよ」
「何歳ですか?」
「5歳です」
 他人とやりとりするウジンをソリは観察の目で眺めた。
「この子は5歳なのか…」
 ウジンはソリを振り返った。
「来て見て―うちのトックにそっくりだよ」
 しかし、ウジンを1人の男性として見ていたソリは動けなかった。
 小犬連れの女性たちが立ち去るとウジンはソリのところに戻ってきた。
「見たでしょ? トックにうり二つだった」
 1人の女としてソリはウジンに笑みを返した。しかし今の気持ちを伝える言葉は返せない。ただ、ウジンを見つめ返すだけだった。
「どうしたの? 見つめすぎだよ」
「可愛くて(素敵だから)」
「誰が?」
 続いて口だけ動かす。
「(僕が?)」
 ソリはこっくり頷いた。
「おじさんが心を開いてくれた気がします」
「…君のおかげだ」

★★★


「そうだな。まず水だ」
 ウジンはペットボトルを握った。キャップを取ってソリに渡した。
「ありがとう」
 ペットボトルを手にしたソリは再びウジンを見やった
「でも、なぜあの子の顏が浮かんだのかしら?」
 ソリの視線を受けてウジンは気持ちよさそうに漢江の夜景に見入った。
「やっぱりここは素敵な場所だな」
「…」
 
 チャンたちはストロー付きの飲み物を握って帰宅した。
 先に入ってきたチャンが訊ねる。
「コーチの結婚式は1時だっけ?」
「そうだ。でもスーツがないんだ」
 ドクスは言った。
「父親に借りればいい」
 後ろから入ってきたヘボムが答えた。
 3人の前にジェニファーが顔を出す。
「その飲み物は筋肉増強の妨げとなる―」
 3人はジェニファーに向き直る。
「生クリームたっぷりのお飲み物の代わりに、生搾りのオレンジジュースをどうぞ」
 手にしたお盆を差し出す。
「えっ?」
「それとチェンジしましょう」
 チャンたちの前にぐいとお盆を突き出す。
「ほら、早く!」
「ああ〜、そうですね」とドクス。
 ストロー付きの飲み物をお盆におき、ジュースのグラスを握らされた3人は渋々ジュースを飲んだ。


 着替えをすませた後、食事の声がかかった。
「ああ、腹ペコだ」
 3人は食堂にやってきた。
 テーブルには豪華なごちそうが並んでいる。
「美味しそうだ」
 3人は着席するなり、箸を握り、好きな物か食事を始めようとする。 
 しかし、ジェニファーからストップがかかった。
 ビクッとしてチャンたちは手を止める。
 ジェニファーは3人の前に掲示板を引っ張ってきて板をくるりと回転させた。
 ドクスたちはそれを見て目を白黒させる。
「献立表〜?」
 ジェニファーは両手をお腹の前で重ねた。仰々しく説明を始めた。
「ボート競技には持久力が必要であり、炭水化物60%、脂肪25%、タンパク質15%が最適です。徹底した栄養管理と接種で、ペラペラペラ〜」
「…」
「メダルを必ず獲得するため、この献立表に従ってください」
 説明がすむと、ジェニファーはすぐさま引き下がった。
「難しくて分からなかった」
 ヘボムが言った。
「何の話を聞かされたんだ?」
「最後に”美味しく食べて”と言った」
 とチャン。
「ともかく食べよう。残すなということさ」
 ヘボムと目を交わし、食事を始めようとするとドクスが訊ねた。
「ジェニファーはいったい何者なんだ?」
 3人は顔を見合わせ、ジェニファーの方を見やった。
 ジェニファーは静かにお茶を立てて飲んでいた。


 ウジンとソリは楽しい会話をしながらゆっくり家に近づいている。
 そのうち、上空からポツポツと冷たいものが落ちて来だした。
「雨だわ」
 ソリは空を見上げた。
「シートがある」
 ウジンはシートをとりだして広げる。またたくうちに雨は強くなる。
「おじさん、あそこ」
 2人は駆けだした。雨宿りで公園の建物の下に駆け込んだ。
 腰をおろして雨が止むのを待った。

「通り雨だから、すぐやむさ」とウジン。
 ウジンの言葉にソリは思い出す。この公園でひとり、なきじゃくりながら怖い夜を過ごしたことを―あの時もやっぱりこんな風に雨が降っていた。
「人生、何が起きるかわからない」
 ソリは呟いた。
 ウジンはソリを見た。
「急にどうしたの?」 
 ソリは遠くを見つめて答えた。
「あの家に叔父さんを訪ねた日の夜―ここに来て雨宿りしたんです」
「…」
「1人だったから、すごく怖かった。ここでまた雨宿りするとは夢にも思いませんでした」
「…」
「ましてや、おじさんと一緒だなんて」
 ソリはウジンを見た。すぐに目を戻し、手のひらを雨の下に伸ばす。
「雨はやんだわ」
 ウジンはその手を握った。
「まだ降ってる」
 2人の手はたちまち雨に濡れそぼった。
 手を握られてソリは緊張した。
「やみそうなんだけど…」
「でも」ウジンは言った。「もう少しここにいよう」
 ウジンの手を握り返してソリは小さく頷いた。
 ウジンはソリを見つめながら、心療医に答えた言葉を思い出していた。 
  
― 今は彼女を応援しながら、待つことにします。


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