![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/d0/f17a9e5c28f62f62d8b3e55f562245aa.jpg)
チョルスはアンナが留守の時に家に戻った。即席麺を作って甥っ子らと一緒に食べる。
麺をすすりながらチョルスは甥っ子らに訊ねた。
「おばさんはどうした?」
「知らない」
ジュンソクが答えた。
「”もうみんなと仲良くできない”って言ってた」
「”もう話しかけるな”って」
とユンソク。
「それで?」
「”叔父さんは悪い人だ”って」
とグンソク。
チョルスは唖然とした。
甥っ子らまで言いくるめようとするとは…今回ばかりは徹底してるな、と思った。
しかし、こっちだって手をこまねくわけにはいかない。言うことは言っておかないとこっちが不利になる。
「みんな、俺を信じるだろ?」
三人はチョルスを見た。
黙って答えようとしない。
チョルスはアンナから受けた仕打ちを思い出し毅然として言った。
「お前たちも悪いことだけはするなよ」
「・・・」
「人を騙しちゃダメだぞ」
「・・・」
「なっ」
チョルスは愛想笑いし、ジュンソクの頭を撫でた。
チョルスは甥っ子らをジロリと見た。
――こいつら、俺の言うことを信じてないみたいだな・・・さては、アンナをここに連れてきた魂胆を読み取った…? まさか?。
この時、チョルスの携帯が鳴った。
「はい、キム巡査・・・えっ? サンシルが警察署に?」
チョルスは車でアンナを捜しに出た。
「ナ・サンシル・・・なぜ俺はいつもお前を捜してるんだ?」
チョルスは息をついた。緊張を緩めた。
アンナは目星をつけたバス停の待合所に座っていた。
彼女は肩を落として長椅子に腰をおろしていた。外の景色は何も目に止まらず、ただ、自分の心の闇を見つめているようだった。
チョルスはそんなアンナのそばにそろそろと近づいていった。
アンナは顔を上げた。わずかながら目に力が戻ってくる。
そばに立ったチョルスと目が合った。アンナは目元をコートの裾でぬぐった。
「私を捜しに来たの?」
「…」
「誰も捜さないのに…どうしてあんたは私を捜すの?」
「目につくからだ。知らないフリなんかできないよ」
チョルスは待合所の中に踏み込んだ。
アンナはチョルスを見上げた。
「私は捨てられたのよ。家族は誰も私を捜さない」
「家族は捨てたりなどできないさ。きっと、何か事情があるんだよ」
「私は一生、本当の自分もわからず死んでゆくのね」
「そんなことない。少しずつ思い出してきてるし、そのうち記憶はまとまってみんな思い出せるよ」
チョルスはアンナを励ました。
「私には行く当ても記憶もないし、捜す人もいない。頼れるものなんか何もない」
「俺がいるだろ」
チョルスは強調した。
アンナはチョルスを見上げた。
「でも・・・厄介かける口実がないわ」
「口実ならあるさ」チョルスは答えた。「俺に復讐しろよ」
「・・・」
「天下のサンシルを騙してこき使って…数え上げればキリがないくらいだ。その償いをさせろ」
アンナはチョルスをじっと見上げている。
「今は俺の顔しか思い出せないなら…俺に頼ってくれてもいいんじゃないか」
「…」
「お前が負担に思うならこうしよう…行くあてが見つかるまで俺がその手を離さない」
「…」
「帰ろう」
チョルスは手を差し出した。
アンナはためらいつつもそろそろとチョルスの手を握った。
script type="text/javascript" src="//translate.google.com/translate_a/element.js?2db9cb=googleTranslateElementInit"></script> google-site-verification: google3493cdb