「社長」
深酒で酔っ払って寝ているビリーのところにコン室長がやってきた。
ビリーはソファーから起き上がった。
「強くもないのに飲みすぎですよ」
「コン室長」
ビリーは酔いの抜けない表情で切り出した。
「チャン・チョルスを引き離す口実を考えろ」
「えっ?」
「一週間、連絡も戻ることも不可能な場所に送るんだ」
「では、その間に奥様をアメリカへ連れていく気ですか?」
「そうだ。チャンが一緒にいる限り、アンナを連れ戻せない。二人を引き離しさえすればぜんぶチャン・チョルスのせいにできる」
「そうですね。もう顔見知りですから…怪しまれずにおびき寄せられます」
ビリーは口もとを引き締めて頷いた。
アンナは家の固定電話から自分の携帯に電話した。しかし、電話はつながらない。
――電源が入っていないため、留守番センターへ…
云々のメッセージが流されてくる。
アンナはやむなく電話を切った。
「・・・どこで落としたんだろう? もしかしてあの男の車に?」
アンナがぶつぶつ言ってるところにチョルスが顔を出した。
「あの男って誰だ?」
「偶然会った人よ」
「見知らぬ人間の車に乗っちゃいかんだろ」
「見知らぬ人ではないわ。あのホテルに行ってみようかしら」
「…そいつのところへ行ったことあるのか?」
「ええ。会う約束をしたけど、訪ねてくるかしら?」
「家にもやって来たのか?」
「そうよ。ジャージャー麺をごちそうすると約束したの」
「お前、そいつとジャージャー麺を食べる約束を?」
「だったら、”偶然会った人”じゃないだろが」
「そうかしら? 携帯見つけたら持ってくるはずだわ」
アンナはそう言って席を離れた。
「ジャージャー麺をおごるだと?」
チョルスは相手の男に疑問を覚えた。
仕事場でジャージャー麺をかき回しながらチョルスは考え込んでいる。
「食べないの?」
ドックが訊ねる。
「サンシルのヤツ、ほんと妙な女だ」
「今度は何が?」
「知らない間に友達作って、相手の家に行って食事して・・・今度はその男にジャージャー麺までおごるんだとさ」
「男?」
ドックはびっくりして言った。
「彼氏か?」
チョルスは憤懣やるかたない顔になった。
「俺の金でおごるなんて、サンシルのヤツ厚かましいにも程がある」
ジャージャー麺に手もつけずに出て行ってしまった。
ドックは首をかしげた。
「同も怪しいな…」
アンナは電話帳で相手捜しを始めた。相手が自分を訪ねてくるのはいつになるか分からないからだ。
「”ソ・ウンジュ”? …」
何も思いつかない。
違うみたいだ…。
続いてまた電話帳の細かい文字を追いかけだす。
「”ソ・ウンソン”?」
これも違う…。
そこへチョルスが帰ってきた。
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