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韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(42)
当人がいいところに就職がきまり、スンジャの家は活気が出ている。ジョムスンも嬉しそうである。
しかし、事情を抱えているから、この明るさがいつまで続くか分からない。
ジョンシムはピルトを相手に、シワンを振った女の愚痴や悪口をならべている。
その後、二人はシワンの見舞いで出かけていった。
フィソンを負ぶい、家に向かうクムスンはいつになく疲れを覚える。しかし、クムスンは元気を出した。歌を歌って歩きだした。
雨が降ってきて、歌に雨の歌詞が混じった頃、見覚えのある連中がスンジャの家に向かってるのにクムスンは気付いた。
クムスンはハッと思い出した。急いでスンジャの家に駆け戻った。
すると思った通り、スンジャの家は借金の取立人がやってきて修羅場だった。
柄の悪い取立人は、一週間のうちに300万ウォンを返せないなら借金のカタにクマを連れていく、と脅し、スンジャやジョムスンを突き飛ばして引き揚げていった。
この出来事でスンジャの家はもとの暗い雰囲気に戻ってしまった。
クムスンは必死に家族たちを慰めようとする。
ジョムスンは、何か対策を練ろうと切り出すが、家を探し当てられたスンジャのショックは大きい。
「誰かは倒れても花畑。誰かは崖っぷち。運のいい人は転んでも金を拾い、運の悪い人は後ろに倒れても鼻が折れるのよ。ダメなものはダメね。どうあがいてもダメなものはダメなのよ」
「お母さん・・・」心配するクマ。
「やっと職も見つかってよくなると思ったら・・・」
すっかり弱気のスンジャに戻っている。
「叔母さん」とクムスン。「気持ちは分かりますけど、何もしないわけには・・・あの人たちはクマのことも本気のようだった」
ジョムスンも頷いた。
「そうよ。私も同じ考えだわ。あいつらならやりかねない。ヤクザなんだから。戯言じゃなかったわ」
「何のこと? クマに何をすると?」
「とにかく・・・お金を準備しないと」とクムスン。
「私たちがどうやってそんな大金を・・・?」
「ほら、しっかりして」とジョムスン。「だからって無気力になっていられない。しっかりするんだ」
「お母さん・・・」
不安におびえるクマ。
「そうですね」
気を取り直すスンジャ。
「気を抜いたらダメだわ。私がしっかりしなきゃ」
「お母さん、私はどうなるの?」
クムスンがクマの膝に手を置いた。
「クマ、心配しないで。どうにかなるわよ。みんなで力を合わせればどうにかなるわ。ダメなら婚家に頼むから」
「そうそう、心配しないで。母さんがいるでしょ。母さんがいるから心配ない」
ジョムスンはクマを抱き寄せた。
「おばあちゃんがついてるから大丈夫。何があってもおばあちゃんが守ってやるから大丈夫」
「そう、大丈夫よ」とクムスン。「私は美容室に前借を頼んでみます」
「それじゃ私も、入ったばかりだけど食堂や他のところから全部かき集めて・・・集めて・・・」
「とにかく、できるだけやってみましょう。それでもダメならお義兄様の銀行に借り入れを頼んでみる」
「そうね。そうしてみましょう」
ジェヒはウンジュの待っている部屋へやってきた。
「どうした? スイッチも点けないで」
「そんなに暗くないわ」
「ショックか? お前らしくないな」
「・・・」
「子供は叩かれながら育つんだ」
ウンジュはジェヒをにらみつける。
「ごめん。”気にするな”という意味だったんだ」
「気になるわよ。パパに殴られたのは初めてじゃないけど、あなたと院長の前で」
「出よう。何がしたい? どうしたら元通りの姿に戻るのかな」
ウンジュはジェヒを見た。
「行こう。今日は――俺が気晴らしに付き合うから」
「ジェヒさん」
「何だ?」
「抱きしめて」
ジェヒは無反応になった。そんな関係には進みたくない。
ウンジュの方がジェヒの胸に身体を預けてくる。腰から腕を回し、頬を胸に当てた。
ジェヒは複雑な思いでウンジュの肩を抱いた。
「変だわ」とウンジュ。「今までは平気だったのに・・・涙もでなかったのに・・・あなたの手が背中に触れたら涙がでちゃったわ」
「ウンジュ。ハリネズミってさ。寒くて寄り添うとお互いの針に刺され、離れていると寒さに耐えられない。だから、適当な距離を見つけて暮らす。お前の家族も似ていると思ったんだ」
「・・・」
「ハリネズミに生まれたのなら、1日も早くその距離を見つけなきゃ。家族だから離れることはできないんだ」
「・・・」
「そうだろう」
ウンジュはかすかに頷いた。
パソコンのモニタ画面を見つめながら、ソンランはちっとも仕事がはかどらない。
シワンの言葉が脳裏を領して離れないからだった。
――俺はお前を愛して苦しいが、お前は俺が面倒なようだ。
――義兄は病気なんです。1人だけ病気になったのよ。
ソンランは仕事を切り上げた。
「病室でお酒を?」
シワンの病室ではクムスンのことが話題になっている。
「父さんと母さんが祝ってくれないから祝ってほしいと」
「本当に厚かましいんだから。だからって病人にお酒を注がせて」
ジョンシムと違ってピルトは感心している。
「さすがはクムスンだ。だからお前と一緒に暮らせるんだよ。並みの心臓じゃお前に合わせられないさ」
シワンやテワンたちは笑い出す。ジョンシムもつられて笑った。
この時、病室のドアが鳴った。
顔を出したのはソンランだった。
シワンは意外そうにし、ジョンシムの表情は緩むが、テワンはソンランを見ようとしない。
「誰だ?」とピルトはジョンシムに訊ねた。
「あの・・・雑誌に出てた彼女よ」
「ああ、あの人か・・・」
ピルトは振り返る。
「初めまして、ハ・ソンランです」
「ああ、そうですか。私はシワンの父です」
「食事中だったので」とジョンシム。「テワン、片付けて」
「いえ、お気になされずに。私が食事中にお邪魔してしまいました」
「いいのよ、終わったから。どうぞ」
ソンランは花を差し出した。受け取った花をジョンシムはシワンに見せる。
「どうしたんだ?」とシワン。
「入院したって聞いて。急性腸炎だって?」
「よくなったよ。もう大丈夫だ。花をありがとう」
「そこに座ってちょうだい」とジョンシム。
「いや、いいよ」とシワン。
ソンランの気持ちを察して促す。
「少し、出よう」
二人が出て行った後、ジョンシムらは憶測をめぐらした。
ジョンシムは希望的観測で「まだ続いてるのよ」と言った。「あなたはどう思った?」
「”バカ女”に”豚に真珠”などと誰が言ってた?」
「それはそうだけど・・・気になるわ」
二人は廊下を歩きながら話した。
「忙しい中を見舞ってもらって」
「・・・昨晩知ったの。病気だなんて」
苦笑いするシワン。
「退院はいつ?」
「病院は明後日というけど、明日、退院するつもりだ」
「そう」
「今まで悪かった。思ったよりショックで、そのせいで愚かで稚拙なマネをしたよ。すまなかった」
「・・・」
「忘れてくれ。俺の悪意に満ちた言葉を。本心じゃなかったんだ」
「大したことは言わなかった」
「なら幸いだけど、見舞ってくれてありがとう」
「・・・」
「仕事頑張って、飯もしっかり食べて・・・君ならうまくいく」
「・・・」
「もう行ってくれ」
シワンはボタンを押しエレベーターを呼んだ。
ソンランはシワンの決意を感じた。自分の感情だけが取り残されるような寂しさを覚えた。
エレベーターに乗り込んだソンランにシワンは言った。
「気をつけて」
閉まっていくドアの開放ボタンに手を伸ばしながらも、ソンランはそのボタンを押せなかった。ドアが閉まってから彼女は後悔に苛まれた。
シワンもまたその前からしばらくは動けなかった。振り切ったつもりでも、彼女に会ったらくすぶりが残っているのを感じるからだった。
ヨンオクはオ・ミジャの家を訪問していた。
「もらい物です
が、質のいいワインのはずです」
「贈り物なら召し上がればいいのに」
「以前は夫が飲みましたが、私が再発してからは・・・ウンジュから院長がワインがお好きと聞いて」
「はい。少しですけど・・・家政婦さん、お茶は?」
「私ならけっこうです」
「あら、そうでした。ごめんなさい。家政婦さん、いらないわ」
「先日は驚かれましたよね」
「そんなこと・・・」
「せっかくお招きしたのに見苦しいところをお見せして」
「人間ですもの。みんな事情もいろいろよ。私より、ウンジュが動揺したのでは? 彼女は大丈夫でした? 2日間、休暇を取るといって会っていませんが」
「はい。休暇だったとは知りませんでした」
「美容室のお客さんを見てると」オ・ミジャは切り出した。「外見は派手で心配事もなさそうなんに、一皮剥いてみるとその中は真っ黒で、腐って膿んでいる人が多いの」
ヨンオクは困惑の表情になる。
ミジャは構わずに話を続ける。
「そんな人たちの特徴は・・・外見に気を遣い、ムダなお金をかけていて・・・」
突然、話をやめ、弁解を始める。
「決してウンジュのお母・・・決してヨンオクさんのことではないの」
ヨンオクは目を伏せた。
ノ家の朝食が始まっている。
「あの後、何か言ってた?」とジョンシム。
「何を?」とテワン。
「例の女性が来たじゃない」
「母さん、昨日も違うと言っただろ。気にするなよ。興味を持たなくていい」
「何なのよ。シワンの気持ちも聞かないで」
「俺と同じだって言っただろ」
クムスンは家族のやりとりが耳に入らない。1人心配事に沈んでいた。
私たちがどうやってそんな大金を・・・
美容室に出勤したクムスンは院長がやってくるのを待った。しかし、出勤しない。
クムスンはウンジュに訊ねた。
「院長はまだですか?」
「院長は今日は休みよ。何か?」
「あの・・・副院長」
「話でもあるの?」
「すみませんけど、前借をしたいんです」
「前借?」
「可能なら6ヵ月分をお願いできれば・・・ダメなら3か月分・・・」
ウンジュは呆れた笑いを浮かべる。
「クムスンさん。考えが甘すぎるわ」
「・・・」
「入ってまだ1ヶ月で、何を信じて貸すの? 半年経って、お互いの信頼ができたらの話よ」
「絶対に持ち逃げなんてしません」
「言ってから逃げる人がいる? 苛々させるわね」
「どうしても必要なんです。念書が必要なら書きます」
「ダメよ。半年以上務めて3か月分だけ可能です。もう行って」
「・・・この通りです。どうか」
「ナ・クムスンさん。何でも食い下がればいいと思ってるの?」
クムスンの交渉は失敗した。
もしや、叔母さんがと思って、ジョムスンに電話をしてみる。そっちも連絡がないという。
ヘミに携帯を返してもらったクムスンは院長の家を訪ねることにした。
近くまで行って探しあぐねていると、ローラーボードに乗ってジェヒが現れた。
「白菜、こんなところでどうした?」
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